2022/11/20

先日、ニュースで、日本の17歳が「国際子ども平和賞」を受賞したという、明るい話題を目にしました。現在の日本社会に対する問題提起と、自身の今後の展望について、実に力強い声で発信する彼女のスピーチを聞いていると、若干17歳にして成熟した思考を持った彼女を、「子ども」と表現することに違和感を覚えた程です。
将来の夢を語れない若者が増えている中、彼女のように具体的なビジョンを持ち、行動に移せるエネルギーは、複雑な社会を生き抜く逞しさそのものです。17歳という年齢は、社会生活や人生経験と言う意味では、年数にすると短いのかもしれません。しかし、言うなれば、彼女は今、大人と子どもの移行期間に居て、故にその境界を行ったり来たりできる、生涯の中で何とも柔軟で貴重な時期を過ごしているのだろうと感じました。

日本を含め、多くの国では、社会規範上、「大人」と「子ども」を年齢で区別しています。では、「心」はどうでしょうか。今、大人として存在している全ての人は、かつての子どもであったことを考えると、一人の人間の中に「大人の心」と「子どもの心」が存在していると考えるのが自然ではないでしょうか。

しかし、なぜか我々は、大人になった今、子ども時代が無かったかのように「子どもの心」を忘れがちです。だからこそ、子どもの心が理解できずに、彼らの純粋で圧倒的なまでの怒りや自制できない感情を向けられた時、右往左往するのではないでしょうか。

自分自身を振り返った時、わたしは子どもの頃、1分1秒でも早く、大人になりたいと思っていました。子どもで居ることが不便でならなかったのです。その一方で、「あんな大人になりたくない」という気持ちも強くありました。ばれる嘘をつく大人、出来ない約束をする大人、見て見ぬふりをする大人……。肩が当たったと言っては喧嘩を始め、座席の前に老人が来ると寝たふりをする、みんな分かっているはずなのに、「汚い」と思っていました。

 

今、あの頃なりたかった「大人」の歳をとうに超えて思うことは、大人は日々、何かと戦っているということ――混沌とする社会情勢、経済的に不確定で不安定な未来、権威的な上司、山積みになる仕事、時間に追われる中での家事・育児。そうやって必死に生きることで何かを守ろうとしているということ。

大人になるということは、一般的には成長の喜びと可能性の広がりを意味する一方で、社会的責任を担い、親からの精神的、物理的な自立も意味します。その過程においては、目にしたくない現実や人間関係の困難さに直面することもあるでしょう。子どもの心のまま、純粋なだけでは生きて通れない、痛みをともなうものであることが今なら理解できます。

だからこそ、今、「大人」として生きる自分は敏感でありたいと思うのです。子どもと接するとき、大勢の人混みの中、時間に追われる時、わたしの中の「子どもの心」を引っ張り出してきて、大人の自分を俯瞰して観るのです。「恥ずかしくない、カッコいい大人になれているかい?」と、子ども時代のわたしに問いかけてみます。

今、あの頃なりたかった「大人」の歳になって思うこと――私は「あんな大人」ではなく、「わたしという大人」になれているだろうか、と。
痛みを経験してもなお、わたしが通ってきた子ども時代に、いつでも帰ることのできる、「わたし」という「大人」。大人であることを、心地良いと感じられる「大人」で居たいのです。

皆さんは、子どもの頃、どんな大人になりたかったでしょうか。今、その自分に近付けているでしょうか。今一度、鏡の中の自分の顔に問いかけた時、そこに答えがあるのかも知れません。

日々、生活する中で、時々、ふと、子ども時代が想起される瞬間があります。良かったこと、悪かったこと、立ち止まってそれらが今の自分の形成にどのように影響を与えているか吟味することは、なかなかに難しいことです。カウンセリングに訪れる方がよくおっしゃるのは、「今まで、ゆっくりと自分と向き合う時間が無かった」という言葉。大人の心で居ることが窮屈に感じる時、子どもの心に戻ることが難しい時、はたまた、自分の中の「子どもの心」が大人の社会に適応できない時、カウンセリングは、安心した環境で、自由に大人の心と子どもの心の行き来を体験できる場所となることでしょう。「大人の心」と「子どもの心」がバランス良く同居し、断絶せずに自由に交流できる状態は、きっとあなたの生きやすさに繋がることと思います。

 

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河合 まり絵

臨床心理士。日本ではスクールカウンセラーとして、不登校児童や別室登校児童、発達に偏りのある児童への心理的サポートや、精神科クリニックで、パニック障害、PTSD、うつ病、摂食障害などの個別カウンセリングを実施。リワーク外来では、精神疾患などで休職中の患者に対し集団療法を、また、復職後の企業内フォローアップ・カウンセリングを実施。刑務所内では、グループ矯正教育をするなど、教育、医療、産業、司法の分野で臨床経験を積む。香港に移住してからは、3児の子育てに追われるも、縁あって精神科クリニックに復職。

 

OT & P Healthcare/ Mind WorX Clinic
MindWorXはOT and P Healthcareが運営する精神科専門のクリニックです。
中環駅(セントラル)から徒歩2分の場所に位置しており、簡単な日本語を話せる医師と、日本人の臨床心理士が在籍しておりますので、薬の処方と共にカウンセリングを並行して受けることが可能です。投薬はしたくないけれど、カウンセリングを受けたいという方もご相談下さい。

以下のようなことでお困りの方は、是非、一度、ご相談下さい。
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・不安や心配な気持ちがいつも頭を離れない
・過度に食べ過ぎてしまう、または、食欲がない
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Mind WorX Clinic
OT&P – Internationally Accredited Medical Clinics in Hong Kong (otandp.com)
6/F Century Square, 1 D’Aguilar Street, Central, HK
中環徳己立街1號世紀廣場6樓
Tel: +852 2468 3577
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