2023/11/29

第6回のあらすじ

父親の墓参りのため認知症の母親と1泊旅行をしたら、母親が宿泊先で転倒し大腿骨骨折。緊急手術が必要になり旅先の病院で入院、手術となった。術後1か月半後、リハビリ病院へ転院。おかげで退院後は杖もなく歩けるようになった。


一回忌を迎えて

先日父の一周忌を迎え、お墓参りに行ってきました。思えば突然の余命宣告から始まり、在宅介護、旅立ち、お墓探し、遺産の手続きとアッという間の一年でした。年金や不動産、銀行や投資などの遺産相続の手続きは一通り済みました。父の死後も振り込まれていたアメリカの年金も無事返金することもでき一安心。叔母の家に長い年月居候していた、父からのプレゼントである七段飾りのお雛様も寄付先がみつかりました。あと残るはデジタル遺産でしょうか。まだ何かこの先サプライズが出てくるかもしれません。

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認知症のこと

日本での認知症患者数は2025年には700万人を超え、65歳以上の高齢者の5人にひとりが認知症になると予測されています(『専門医が教える認知症』より)。母が認知症だと知ったとき、わたしはなかなかそれが受け入れられずにいました。あんなにアクティブで人生を謳歌していた母が、朝ごはんを食べたかどうかも覚えていないなんてありえないと。でも母の行動を見ていると、なんて穏やかで、マインドフルネスなんだろうということに気づきました。ちょっと前のことは覚えていないので、まさに今ここに集中して、落ち着いた心でまわりを観察して楽しんでいます。年老いていく親のありのままを受け入れ、今できることをその時その時大切にし、変化に適応していくのが大事なのだと思います。

要介護3の母は現在週6でデイサービスを利用しています。ひとりで家にいる時に転倒したら危ないので、ケアマネさんには介護施設の入居を勧められましたが、本人は断固拒否。昼間はいろんな人と交流して楽しく過ごしているようですが、やはり夜は父と一緒に暮らした家に戻ってきて、なつかしい写真や思い出のある品々に囲まれるのが落ち着くようです。ケアマネさんに相談し、家で転倒した時にボタンを押すと警備会社からかけつけてくれるシステムの導入や部屋に設置する監視カメラなどIT機器活用でリモート介護ができるよう検討中です。介護についての情報収集のために「LYXIS(リクシス)」が主催する全国ビジネスケアラー会議にオンラインで参加したり、「生きいきリハ倶楽部」にLINE登録してリハビリ退院後のサポート案内をチェックしたりしています。ほかにも郵便局のみまもりサービスやシニア弁当宅配業者のみまもりサービスなど、日本の高齢者向けのサービスはとても充実しています。

 

認知症、在宅医療のおすすめの本

『専門医が教える認知症』       朝田隆著 幻冬舎

『在宅医療のリアル』         上田聡 幻冬舎

 

わたしの終活

この機会に身の回りの整理をし、遺言を取り出し、終活ファイルを作ってみました。

・本籍地をアクセスのいいところに転籍。子どもが結婚した時に世帯主になり、孫が日本国籍を取得できるための説明書き

・日本のパスポートの申請書の下書き

・個人投資の受取人名義を夫から子どもたち(息子50%、娘50%)に変更

・銀行口座、デジタル通貨の暗証番号

・日本にある不動産は法務局の提出物など面倒なので、還暦前には売却予定

・延命治療、葬式、墓不要

・上唇の永久脱毛(高齢でムダ毛のお手入れができないことを考慮)

まだまだありそうですが、とりあえずこれで明日何か起こっても大丈夫そう。夫や子どもと重くなりがちな死について会話ができ、夫との死生観の違いが確認できてよかったです。

 

生き方と逝き方

みなさんはこれからどのように生きて、最終的にはどのように逝きたいですか? なかなか考える機会がないと思いますが、じっくりと考えてみるともしかしたら、自分の中に秘めているパッション(情熱/生きがい)に気づくかもしれません。

「終末期について考える」とは「どう死ぬか」ではなく「最期までどう生きるか」です。

父の好きだった言葉で、墓石にも刻まれている「たったひとつの命だから、、、」。

この後、あなただったら何を入れますか。

 

 

 

去年の今頃、突然の余命宣告と死後の手続きに直面し、香港から親の介護と遺産相続がどれだけ大変なのかを経験しました。心の準備ができていたらもしかしたら心の負担が少なかったのかもしれないと感じ、香港在住のみなさんにも経験を共有させていただきました。少しでも誰かの役に立てればと思い書き始めたコラムですが、毎回書くときにその時々の感情に向き合い、受け入れ、手放すという作業を繰り返したことが、わたしに必要だったグリーフ(悲嘆)ケアになりました。このような場を提供してくださったホンコン・レイの関係者皆様に感謝しております。お付き合いいただいた読者の方々もありがとうございました。

 


りんみゆき
カノッサ病院日本人通訳/グリーフケアアドバイザー2級/メディカルアロマインストラクター

香港を含め30年以上の海外生活体験と語学力を生かし、香港では医療通訳としてカノッサ病院で活動する傍ら同病院の日本語ケアラインサービスという無料のお悩み相談窓口もチームの1人として担当している。趣味はマラソン。著書に「海外のいろんなマラソン走ってみた!」(2019年5月、彩図社)がある。

どんな小さなことでも1人で悩まずにご相談ください。
無料日本語ケアラインサービス
電話:2825-5849 (月9:00-13:00、水13:00-16:00、土10:00-12:00)
カノッサ病院への日本語によるお問い合わせ
https://www.canossahospital.org.hk/ja/

IG:canossahospitalhk_jp

 

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3 件の意見

  • 匿名 より:

    ご丁寧なコメントをいただきありがとうございます。
    ご家族のみなさんと人生の価値観などを共有されるきっかけ作りになれましたら
    とても光栄です。
    最後まで読んでいただき、ありがとうございました。(りんみゆき)

  • 匿名 より:

    コラムをお読みになりご感想までいただきまして本当にありがとうございます。お嬢様ご家族が香港にいらっしゃるのですね。このコラムをきっかけに読者の皆様が、これからのことをご家族で話し合い、お互いの気持ちを確かめる機会をもってくださったら嬉しく思います。(編集部より)

  • 黒石洋子 より:

     香港から親の介護、読ませていただきました。
    日本で87歳の父、83歳の母が息子の家族と二世帯住宅で生活しています。
    夫婦で助け合いながら仕事をし、スロ-テンポで自分のことは自分でできる日々を過ごしています。
    香港在住の娘家族は、家族の様子や楽しいイベントの報告などラインで知らせ両親を喜ばせてくれます。

     今は元気でも、この歳になると介護や別れは待ったなしと実感しました。
    最愛の息子や娘たちが困らないように、心がけようとたいへん参考になりました。
    ありがとうございました。

     

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