2023/06/01

香港を代表するボーイズバンド、我らがMirrorが海外進出に向けて初の英語の曲「Rumours」をリリースしてから早2カ月。じりじりと海外での活動も増えてきました。日本でもMirrorの大型ビルボードが渋谷に登場、その後メンバー数名が日本が誇るYouTubeの人気コンテンツ「The First Take」2度出演、見事な歌声と麗しい姿が功を奏し、日本のメディアでもMirror の記事が散見されるように。さらに5月にはMirror初となる海外公演をマレーシアで成功させました。今後ますます活発になりそうな海外の活動を見越し、遠征費用の積み立てに精を出す今日この頃です。

4月初旬、渋谷ヒカリエ付近に登場した大型ビルボード。©IG: hakumai2023

それにしても、果たしてMirrorは海外でどう受けとめられるのでしょうか。そんなことを考えているうちに、香港人はアイドルに完璧さよりも、彼らの持つストーリーに惹かれていることに気づきました。

まず、幼少期から養成所に所属、10代で芸能界にデビューがスタンダードな日本や韓国のアイドルと異なり、Mirrorメンバーはオーディション番組出身。しかも番組放映時点ですでにアイドルとしてはトウの立った19歳から30歳。各メンバーの人生は番組でさらけ出され、デビュー後も垂れ流し状態。年齢層も、情報コントロールの厳しさも他国のアイドルと大きく異なります。

例えば人気ナンバーワン、はにかんだ笑顔がキュートなKeung To(姜濤)。彼のデビュー前の人生は「おデブさん」。彼自身が公表してますが、少年時代の肥満っぷりは相当なもの。当時はその容姿が災いして熾烈ないじめに遭い、心を閉ざしたこともあったとか。それでもアイドルになりたいと、必死の思いでダンスや歌を練習し、ダイエットを成功させた結果が今の彼。「醜いアヒルの子」の実写版と言えるでしょう。

新曲「Dummy」 をリリースしたばかりのKT。リリース後わずか14時間で再生数100万回という記録を達成。 ©IG: shoppromise

Mirror副隊長を務めるAK(※)はアイドルの本場韓国でデビューのチャンスを掴むも、事務所の事情で契約解除の憂き目に遭い、失意のうち香港に戻ったという過去を持っています。

すらりとした高身長と伸びのある歌声を持ち、さらにダンスも得意・・・そんなJeremy(李駿傑)は複雑な家庭環境で育ち、幼くして両親と別居、ティーンエイジャーにして一人暮らしを強いられていました。昨年度末のソロ曲での新人賞受賞も、3年という長い忍耐期間を耐えた後に得たものでした。

強靭な意思で初心を叶えたJeremy。これは新人賞受賞の瞬間。 ©IG: Jeremylee_tied

「The First Take」で勇ましくリードをとるメインボーカルのJer(柳應廷)。実はデビューのオーディション番組では「ルックスがイマイチ」と序盤にアッサリ退場を強いられました。後に歌の実力が買われMirrorに入隊を果たしたものの、ルックスを磨き、苦手なダンスを猛練習せよとの指令が。今の彼の成功は血のにじむ切磋琢磨の結果なのです。

歌の実力に加えて、ダンスもメキメキ上達中のJer。努力家です。 ©IG: angie.hather

個人的ライフヒストリーだけではありません。Mirrorはグループとしても苦難の連続でした。2018年のデビュー直後には香港で民主化運動のデモが激化。集合禁止令がとられるとバンド活動は縮小を強いられました。さらにその後、コロナ禍で2年半に渡る活動制約の憂き目にあったのです。苦境はここで終わりません。ようやくコンサート開催が可能になった2022年7月、Mirrorのコンサート中に大型スクリーンが舞台に落下、複数のダンサーが重傷を負うという大事故が降りかかったのです。メンバーは今も完全には事故のトラウマから回復していないと語っています。

Mirrorの海外進出。ここに辿りつくまでにはこんな背景があったのです。

逆境に立ち向かい、躍進を続けるMirror。一方、香港人の価値観の核と言われているのは「獅子山精神」。ライオンロックのふもとに住む労働者階級たちが苦難にも負けず、連帯と忍耐をもって成功を追い求める姿を表現したフレーズです。

獅子山は70年代に流行したTVドラマの舞台。 貧しくも逞しく生きる庶民の姿を描いて大ヒットしました。 香港人魂とも言える「獅子山精神」はこのドラマが由来だとか。

こうしてみると、数々の不運を乗り越えながらも前進するMirrorはまさに獅子山精神の体現者。香港人が夢中になるのも無理はないと言えるでしょう。

香港の外に進出するということは、こういった背景に不案内な市場、あるいはエンタテーメントに精神性や意義を求めない可能性がある市場に飛び込むということ。海外市場への食い込みはMirrorにとって大きな、大きな試金石となることでしょう。

頑張れ、Mirror!


紅磡リンダ(ほんはむ りんだ)
夫の転勤に伴い20年にわたる英国生活、広告代理店勤務、編集者稼業に終止符を打ち、2019年に香港に移住。
香港の状況が落ち着き、次ステップを模索し始めた折にMirror 沼に沈没。沼から鏡(ミラー)越しに見える、新しい香港を発見する毎日を送る。

Instagram 紅磡リンダ【星版】qedan_qedan


 

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