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2025/07/05

香港の映画やドラマを観ていると、頻繁にあるのがこんなこと。「この俳優さん、Mirror主演のドラマでバーのマスターだった人! その後、イーダンの学校の先生役して、Mirrorの映画では悪玉、AKの舞台では子ウサギ役だった~」。Mirrorがきっかけで香港のエンタテーメントに触れるようになってから5年ほど。まだまだ脳内データベースは小さいですが、それでも同じ俳優さんが引っ張りだこで、あっちもこっちも、多くの作品に出演していることが分かってきました。ちなみに上記の例は、全く異なる役柄を見事に演じ分ける名優、アラン・ヨン(楊偉倫(ヨン・ワイルンとも))。

(左)映画「四十四にして死屍死す」(原題:死屍死時四十四)舞台あいさつでのアラン・ヨン、(右)舞台劇「SUCK樂園」では青いウサギの着ぐるみで登場(右下)Ⓒhunghom_linda_qedan

考えてみれば、香港の人口は約750万人。ザックリ言えば東京都の人口の半分ほど。さらにその中で芸能界で生き延びる才能ある人材というとかなり限定されるのでしょう。同じ顔を繰り返し見かけるのもさもありなん、でしょう。

そんな中、興味深い取り組みがありました。今年5月~6月にかけて放映されたTVドラマ『光明大押』です。このドラマは往年の名優ジェー・クワンホウ(謝君豪)が主演、そして初プロデュースした作品で、Mirrorのイーダン・ルイ(呂爵安)も出演ということでも注目されました。配役の多くが2024年秋冬に放映されたオーディション番組『選角』によって選出された新進気鋭の俳優たちという点でも大きな話題となりました。

ベテランの演劇人の厳しい審査を潜り抜けて合格した新人俳優たちが、注目度の高いドラマでデビューを飾ったのです。

このドラマの記者会見には主演のジェー・クワンホウやイーダン・ルイと並んで新人たちも出席。俳優としてはまだ日が浅いとはいえ、香港アカデミー賞新人賞でダブルノミネート歴を持つイーダンの立ち位置は「先輩」。初めての記者会見で緊張気味の新人たちに、さりげなくエールを送るイーダンの姿を眺めて、いつの間にか彼も後輩の面倒をみる側になったんだなーと時間の経過をしんみり感じました。彼自身オーディション番組出身ということもあり、デビュー当時の自分を重ねていたのかもしれません。

香港が誇る名優、ジェー・クワンホウ(謝君豪・前列左)と、イーダン・ルイ(呂爵安・前列右)。共演は映画「過時・過節」に続いて2回目。Ⓒhunghom_linda_qedan

TVドラマとオーディション番組を直結させた取り組みは注目を集めましたが、最近は往年のヒットメーカー、レオ・クー(古巨基)も自らオーディションを企画するなど、才能発掘に乗り出しています。Miror を輩出したオーディション番組「全民造星」も今年、シリーズ6の制作が発表されました。香港のエンターテインメントを活性化する努力は続けられています。

レオ・クー(古巨基)主催のオーディションは才能に合わせて3タイプあり。彼のインスタから気軽に申し込めるのも魅力。Courtesy of Leo Ku

こんな取り組みのほか、香港外からも新たな才能が入って来ています。「この女優さん、以前はジェレミー(李駿傑)のMVに出演してた! ロッマン(楊樂文)アンソン・コン(江生※)のドラマにも出てたし、そして今度はイーダンとも共演してる」となんとも羨ましいポジションにいるのがフィッシュ・リュウ(廖子妤)。クールビューティーな彼女はマレーシア出身ですが、2012年から香港を活動の中心に据えています。最新出演映画はマレーシアの作品だったのですが「マレーシアなまりの広東語は話せなくなった」と語るほど香港になじんでいます。そして大ヒット映画「毒舌弁護人~正義への戦い」にフィッシュと共に出演していたアダム・パク(栢天男)も香港映画、ドラマ、広告などでおなじみのイケメン俳優ですが、彼はオーストラリア出身。世界中で話されている広東語、海外の芸能の才能を香港に呼び込む強みもあるとは驚きです。

(左)クールな役が多いフィッシュ・リュウ(廖子妤)。意外にも気さくにファンサービスをしてくれます。(右)アダム・パク(栢天男)もお茶の間でおなじみの顔。オーストラリア出身と聞いて驚く香港人も多し。Ⓒhunghom_linda_qedan

香港エンタメ界、実は受け手側、新しいオーディエンスの獲得を図る試みも行われています。その最たるものが「スクールツアー」と呼ばれるイベント。これは旬の人気アーティスト(主にポップスター)が中学校を訪問して、体育館などでライブ演奏をするというもの。学生たちが無料でアーティストのライブを体験できるこのスクールツアーは2000年代ごろに始まったと言われ、ストレスが多い学生たちの息抜き、生きた音楽教育を提供するというのがその意義と言われています。

(YouTube動画:スクールツアー例1:https://www.youtube.com/shorts/Hwrv8YsAu-w

Mirrorももちろん精力的にスクールツアーに出演しています。いつもチケット獲得に四苦八苦するわたしたちファンから見れば無料で、至近距離で彼らを観られるなんてまるで夢のよう……。うらやましい……。いやいや、わたしたち固定ファンだけにMirrorの魅力がとどまっていてはもったいない。韓国や英語圏、外国の文化に魅力を感じがちの若者たちが、Mirrorを始め、地元香港の音楽に触れて、ファンになってくれますように。

(YouTube動画:スクールツアー例2:https://www.youtube.com/shorts/IPfsDAZHBEk

もう少し間接的な貢献をしているのが、主に大企業が行う「アニュアル・ディナー」。従業員に対するねぎらいや、モチベーションを目的とした企業イベントですが、こちらでも著名なアーティストが招へいされ、パフォーマンスを見せるのがお決まりです。今年は某大型ファストフードチェーンのアニュアル・ディナーにMirrorのメンバーが登場、会場を大いに沸かせました。しかし、翌日の新聞には一部のMirrorファンが「自分はファンクラブの有料会員にも関わらず、あんなに至近距離でコンサートを観られたことはない」と不満を漏らしたという記事が掲載されました。

アニュアル・ディナーに参加する大企業のスタッフには、Mirrorの曲を聞いたことのない人たち……香港の音楽に触れたことすらない外国人スタッフも含まれます。そんな人たちがアニュアル・ディナーをきっかけに、Mirrorに親しみを持ち、香港の音楽を好きになってくれたらいいなと思うのです。

香港のエンタメ界で活躍する新人が、そして香港のエンタメを愛するオーディエンスがこれからも増え続けますように。Long Live 香港エンタメの世界!

 


紅磡リンダ(ほんはむ りんだ)
20年にわたる英国生活、広告代理店勤務、編集者稼業に終止符を打ち、2019年に香港に移住。
移住とともに人生初めてアイドルに目覚め、Mirror 沼に沈没。沼から鏡(ミラー)越しに見える、新しい香港を発見する毎日を送る。現在、大学院生として香港の歴史(特に映画の歴史)を学んでいるが、そのきっかけがMirrorだったことは、教授には内緒。

Instagram 紅磡リンダ【星版】hunghom_linda_qedan


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