2024/02/17


香港でも一際目を引く戯曲中心。その建築は中国の伝統的なランタンからインスパイアされたそう。今年で5周年目を迎え、コロナ後初めて、点心を食べながら戯曲が楽しめる茶館劇場「粤.樂.茶韻」(Cantonese Opera and Tea)の上演が始まるということで初日に訪れてみました。

コロナ中にご紹介したコラム
わたしのキラリ香港生活 第6回 心躍る広東オペラ体験〜戯曲中心〜もありますのでこちらも併せてどうぞ!

さて、90分間の茶館パフォーマンスでは広東オペラを全く知らない人でも、国籍を問わずに楽しむことができるようにデザインされています。劇場の上の部分に英語の字幕が出され、両脇に広東語での字幕も出ます。そのほかの言語についてはあらかじめ予習して行くことでかなり楽しめます。残念ながら英語の字幕はかなり上の方にあるため、舞台と字幕両方を視界に入れるのは厳しいです。英語字幕を読みたい方は、なるべく後ろの席、もしくは2階席で鑑賞されることをおすすめします。

 

席につきますと、横に小さなテーブルがあって、制服を着たスタッフが、蓋付きのお弁当箱のような箱に入った点心と、大きなやかんにプーアール茶をいっぱい入れて一人ずつ配膳してくれます。これが老舗の劇場に来たという雰囲気を盛り上げてくれます。お茶は、客が着席してから入れてくれるので、温かいお茶を飲むことができます。

客席にはツーリストとおぼしき西洋人もちらほら。ほとんどが香港の地元の方のようでしたが、皆さん、点心を食べながら観劇できる環境にウキウキしている様子。記念撮影する姿も多く見られました。点心は優しい味でびっくりするほどおいしかったです。左からさっぱりしたエビの点心、甘さ控えめの赤いデーツのレイヤー餅、サクサクで濃厚なポーク叉焼パフ。これらは全て料金に含まれます。

演目は、音楽と、歌と、広東オペラの3構成になっています。

今回わたしが持った最初の印象としては、とにかく演奏をしているミュージシャンや、演者が若い!の一言に尽きます。戯曲とえば、伝統芸能でそもそも重鎮揃いで結成されているのかと思いきや、本当に若い面々で、聞くと「茶館新星劇団」という劇場専属の芸術家たちとのこと。生き生きと演奏する様子は、若い世代の力によって伝統芸能を継承していくという香港らしい意気込みさえ感じられ、胸に込み上げるものがありました。

キャストやミュージシャンの顔ぶれはこちら

ウェブで演目を英語と広東語で調べることができます。こちらから確認ください。

紹介される演目は全て、戯曲の中でも有名なものばかり。これまでもオペラだけでなく、映画やテレビドラマや舞台なども製作されています。とは言え、やっぱりなかなか理解するのが難しそうで、敷居が高いと思われる方もいらっしゃると思います。そうなんです、実はわたしもそう思っていた一人です。実際、馴染みのない独特の歌唱法に、全く何を言ってるいるかわからない上に、伝説的なお話や激しい曲調。ちょっと尻込みしちゃいますよね。

でもわからないなりにも、彼らの素晴らしい演技や音楽、その場の雰囲気には心奪われるものがあります。隣に座った年配の方の、俳優たちの指や手の動きを一緒に合わせて真似しながら口ずさんでいる様子を横目で見ると、わたしが思っている以上に広東オペラは、香港の人々の生活と密着しているのだと思いました。目をキラキラ輝かせながら舞台を観ている様子に舞台以上に香港の風土を味わう良い機会になったのは確かです。

また、飽きさせないテンポの良さと独特の動きや目線の運び、煌びやかで美しすぎる衣装に目が行きがちですが、勉強したところ、広東オペラは、実は、小道具よりも舞台美術や象徴主義に頼ったミニマルな「美学」というのが存在します。パフォーマンスは簡素化された舞台で行われ、感情や性格の特徴を伝えるために誇張された表情で表現し、加えて「歌、演技、朗読、武術」という京劇の基本的な4つの技を使いこなす演者によって物語りが進行します。

今回初めて観て、わたしなりにわかった、面白く鑑賞するコツは、

▶︎行く前にストーリーラインを勉強して行く。言葉がわからなくても楽しさが3倍になります。これは、バレエやオペラ鑑賞に行くのと同じで、大体の展開がわかるとお話について行きやすくなります。広東オペラのストーリーは伝説などをもとにしているため、少々難解なものもありますので、単純に舞台を楽しむぐらいの気軽さでも良いかもしれません。

▶︎広東オペラは、歌舞伎の香港バージョンだと思うと少し身近な気分になります。歌舞伎のように独特な言い回しがあります。広東オペラの場合は、セリフの最後の語尾を抑揚をつけて「こぶし」を回して長く伸ばす傾向にあります。例えば「そんなことはやめておくんなましいいいい〜いいぃぃいいい〜〜いい」みたいな感じです。これがわかると少し面白くなります。

▶︎広東オペラには、すり足での歩き方や回るような動きの所作や、決めポーズがあり、どこで観客が盛り上がるかを観察すると楽しくなります。

▶︎広東オペラの化粧は、ともすれば宝塚歌劇団の俳優さんのようでもあり、だんだんかっこよく、凛々しく、美しく、愛らしく、見えてきます。アイドルのように贔屓の俳優さんを見つけると楽しくなるでしょう。

▶︎日本の場合は、喜怒哀楽で音楽が激しくなったり静かになったりしますが、比較的、喜怒哀楽関係なく、ドラマチックな部分に関しては、シンバルがバンバン鳴り響き、感情を爆発させて強調するようです。なので長尺ものを見た後は、しばらく頭の中でシンバルがぐるぐる回っていました。でもよく考えると、この演目に関わらず、この耳につんざくシンバル音は、なんだか厄を落としてもらっているような気にさえなり、終了後は爽快感さえ感じました。

▶︎また前述しましたが、字幕を読むなら後部座席をおすすめします。

あくまでも初心者の見解です。

さて、初日の広東オペラ・パフォーマンス部分の抜粋のラインナップは次のようなものでした。

Courtesy of West Kowloon Cultural District Authority

柳毅傳之花好月圓 “A Perfect Union” from The Strange Encounters of Liu Yi

広東オペラ『柳毅傳書』は、劇作家の譚慶荘と作曲家の陳冠清が唐代の小説『柳毅傳』を脚色したもです。1950年の初演以来、その感動的な筋書きと登場人物のユニークな歌唱スタイルで愛される不朽の名作です。

恋愛ストーリーでは、夫にひどい仕打ちを受けた龍王の娘のために、学者柳毅が逃れる手助けをします。そうこうするうちに2人は恋に落ち、結婚することになります。舞台での抜粋は、二人の結婚式の夜を描いたシーン。普通の漁師の娘に変装した龍王の姫が、柳毅の愛を試します。

Courtesy of West Kowloon Cultural District Authority

雙蛇鬥 “A Duel of Immortal Snakes” from The Legend of the White Snake

400年前から語り継がれる中国で最も有名な民話として挙げられるのが白蛇伝で、広東オペラや映画などでも度々演じられます。お話は人間の女性に化けた白蛇が、人間の男性に恋をし結婚までしますが、高僧に退治され塔に鎮められるというお話です。ただし、当初は色気を使って男性をたぶらかした戒めのようなお話だったのが、現在では悲恋物語として扱われています。

今回の抜粋は、若手劇作家リー・ティンフォンが『白蛇伝説』の人気部分を新たに脚色したものです。追放された恋人を探しに天界を出た白蛇の白鈴は、緑の蛇の精霊に出会います。彼女が天界を出るのを阻む彼の誘いを断った後、戦いが起こり、緑の蛇は倒されます。その後、女の姿になった彼は、白蛇の家臣として旅に同行することを誓います。

この90分の間に、広東オペラで使われる楽器の紹介や、演奏、広東オペラ歌手、広東オペラのパフォーマンスで、一通り広東オペラとはなんぞやが、初心者でもわかる構成となっています。驚くことに日本の琵琶や笙のような楽器もあってとても身近に感じられました。

演目のラインナップは日にちによってロテーションで変更されますので、スケジュールを見てチケットを取ると、一度行ったことがあったとしても違う演目を楽しむことができます。点心を食べながら、広東オペラを鑑賞するのは、とっても特別感があって、また違う演目でも観たくなります。現在鑑賞できるのは毎週金曜から日曜までの3日間のみです。演目スケジュールはこちらから確認ください

パフォーマンスが終わったら出口がお茶屋さんへ繋がっています。(上写真)

上から見下ろすと、ブロマイドのように掲げられた大きな垂れ幕が見えます。(下写真)

よく見ると、先ほど舞台で見た俳優さんもいて、親近感が湧きちょっとドキドキしました。

 

次のページではその他のプログラムの簡単な物語と抜粋シーンのご紹介です。行かれる前に、内容を把握してから舞台を鑑賞すると、より楽しめますのでご利用くださいね。

 

1ー


茶館劇場「粵・樂・茶韻」

公演日:毎週金曜〜日曜
戲曲中心茶館劇場 Tea House Theatre, Xiqu Centre

チケット代:HK$330 | HK$288(コンセッション、学割)
英語の字幕がつきます。(日本語の解説はありません)
チケットと詳細: wk.org.hk/39WcTsG
チケット代にお茶と点心が含まれます。

 

Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。

Translate »