2025/04/09
はっきり言いましょう! 今年度始まって以来、一押しの展示会(VR体験)です。「香港にいながらにして、これを体験しないなんてありえません」と声を大にして言います。これまでのVRを使った展示会とはスケールも、物語も、リアリティーも段違いに凄すぎて、本当に1874年のパリで、印象派画家たちと過ごしたような気がします。終わった後は「もっといたかったのに」と思ったほど。しばらく旅行から帰ってきたような高揚感が続きました。
と、ここまで読んで興味を持ってくださった方、本当にありがとうございます。ぜひぜひこの記事を読んだら予約をしてくださいね!
『Tonight with the Impressionists, Paris 1874 – An Immersive Expedition in Virtual Reality』「パリ1874年今宵、印象派画家と」は、世界トップレベルのVRの制作チームに、オルセー美術館も入って作り上げた作品ですので、画家や絵画にまつわる話も素晴らしいのです! アート好きな人はもちろん、アートは敷居が高くてよくわからないと思っている人も、まずは参加してみてください!
場所は調景嶺駅すぐ隣にある香港デザイン・インスティチュート(HKDI)という大学校内の展示会場、HKDI Gallery で現在開催中です。(2025年5月11日まで)
校内に入ると、地上入り口すぐのところに右手にある大きな看板(1番目写真)が目に入ってきます。入り口のドアは(下の写真)壁のポスターに同化してわかりにくい時もあるので(笑)気をつけてください。
-目次-
内容
どうやって、何をVRで体験できるの?
ちょっと予習。楽しみ方が倍増する方法!
VR作品の立役者たち
内容
印象派誕生150周年を祝う作品として、参加者を初の印象派展のオープニングナイトに遡る旅へと誘います。モネ、ルノワール、ドガといった著名なアーティストたちとの出会いを通じて、運動の始まりを象徴する作品を発見しつつ、記念すべき日を彼らと一緒に42分間のVR体験を通して過ごします。VRのヘッドセットを装着すると、参加者は1874年4月15日に遡り、有名な人気写真家ナダールのパリのスタジオの前に降り立ちます。そして案内人のローズに出会い、彼女に誘われて、初めての印象派展が開催されたこの重要なスタジオに足を踏み入れます。エレベーターに乗ってドアが開くと、そこはもう彼らの会場です。そこでわたしたちは、ローズに画家たちへ紹介されて、アートの歴史的瞬間を体験します。
私たちがVRを通して見える世界です。当時の売れっ子写真家ナダールはパリの繁華街に写真館を持っていました。1874年、名も無い画家たちのために展示会場に彼のスタジオを開放しました。左に立つ青い服を着た女性が参加者の案内人ローズさん。
42分間の旅で、参加者は印象派運動にとって歴史的価値のある他の瞬間や場所、印象派展のアイデアが生まれた画家フリデリック・バジールのスタジオに訪問し、オスカー=クロード・モネの「印象、日の出」の制作風景をル・アーヴルで間近に見ることができます。なんと今では巨匠と呼ばれる画家たちの才能を直接目の当たりできるのです!(フレデリック・バジールを通した印象派誕生にまつわるお話は「山田五郎オトナの教養講座:好青年画家バジール、印象派絵画誕生のきっかけになった人」をぜひご覧ください。楽しく理解が深まります。)
モネの「印象、日の出」の制作風景。息を呑む美しい景色も見ものです。
登場人物の顔を覚えておくとお話に入りやすいでしょう。
どうやって、何をVRで体験できるの?
予約は時間制です。一度に入場できる人数が決まっているため事前のチケットを入手する必要があります。チケット購入はこちら
まず、予約時間の5分前に入場。参加者は荷物をロッカーに預けます。手ぶらで参加するのをおすすめされます。そして入り口付近から始まる展示を鑑賞しながら奥に進みます。
1874年4月15日に第1回印象派展が開催されました。
1870年代前後のフランスの歴史的背景をショートビデオで鑑賞。パリの地図などで自分がこれから行く場所を確認します。
その後、前に進むとVRで聞く言語を英語、広東語、普通語の中から選択します。スタッフが手伝ってくれますので心配いりません。そしてヘッドセットを取り付ける前に説明を受けます。ヘッドセットは、きちんとつけていないと視界がぼやけます。そうすると臨場感が出ず、全く違うものになるので、しっかり居心地良く付けられているまでスタッフに調整してもらい、勢いで始めないようにしましょう。また、メガネをつけている場合はメガネと自分の目の距離感がいつもと変わってしまってよく見えないという事態が起こったりします。初め良ければ全てよし。妥協しないできちんと装着してから始めましょう!
1)ヘッドセットをつけた後に、一緒にいる人は白い蜘蛛の巣に覆われた人の形が目の前に見えます。その場合名前が頭上に表示されます。他の人が近づいてきたら同じように形が見えますので、ぶつからないように注意しましょう。かなり接近してきたら、体の周りに白いシールド(盾)のようなものが出てきますので、ぶつからないように回避しましょう。
2)壁に接近したら、壁の部分が赤い網の目のような壁が目前に出てきますので、ぶつからないように注意しましょう。
3)自分の立ち位置が青色で枠が光ります。そこに立つようにします。
4)自分が通路から外れている場合は、視界が暗くなり矢印で「こちらに進んで」と出てきますので、矢印に沿って進みましょう。
5)途中で気分が悪くなったり、助けが必要な場合は、手を挙げてください。またはヘッドセットを外してください。
これらを理解したら、ヘッドセットを装着します。大きくて重そうに見えますが、ちゃんと装着できていれば、実はそんなに重くはありません。体験している間は、静かに、おしゃべりはしないでまわります。
42分間でこの狭い空間を歩き回ります。
自分が見える世界は360度、どちらを向いても普通の世界にいるのと同じような視界が広がります。だんだんどっちが本当の世界かわからなくなりそうです。
42分間の旅が終わると、自然といつの間にか出口に立っています(笑)。到達するとスタッフに声をかけられるので、ヘッドセットを外してもらって返却します。あっという間の42分間でした。
さて、体験が終了すると上の階で、登場人物の紹介パネルや、制作の裏話を紹介したドキュメンタリー映像も見ることができます。筆者は、情報量がもりもりで少々ふらつき気味でしたが、夢のような素晴らしい体験の数々で大満足でした。
ちょっと予習。楽しみ方が倍増する方法!
実はこの体験は、現在、広東語、普通話、英語のバージョンでのみ提供されています。残念ながら日本語での解説はありません。お話の内容は少々複雑で、印象派絵画の知識がないとわかりにくいかもしれません。そこで言語がわからなくても、お話の背景が少しでもわかれば、楽しみ方が倍増しますので、以下の動画をぜひ見てから行かれることをおすすめします。もちろん行った後に見ても、「あ、あの絵、あの場面、あの人が出てた!」なんて発見があり、十分楽しいです。
山田五郎オトナの教養講座:画家バジールの3番目のアトリエを描いた作品「アトリエ、ラ・コンダミンヌ通り」がVRでも登場します。背景を知るとなお面白いです!
山田五郎オトナの教養講座:印象派展の裏話、ルノアールの苦悩について
山田五郎オトナの教養講座:第一回印象派展の当時の記事を解説!
この時代の画家や印象派展の予習を、自分なりに何でもいいのでして行くと、何もしないで行くよりも数倍楽しく体験できます。ぜひトライしてみてくださいね。
VRのワンシーン。左がモネ。右がルノアール。2人は交流も深い親友同士でした。並んで描いていた様子を後ろから眺めることができます。どちらも作品のタイトルは「ラ・グルヌイエール」。自然を描くのが好きなモネと、人を描くのが好きなルノアールの作品を見比べてみると面白いです。
VR作品の立役者たち
さて、最後に、少し制作に関するお話をしましょう。『Tonight with the Impressionists, Paris 1874 – An Immersive Expedition in Virtual Reality』「パリ1874年今宵、印象派画家と」は、HKDIによって企画され、Excurio社、GEDEON Experiences社、オルセー美術館と共同制作されました。
実はこの作品のテクノロジーはExcurio社が担当し、これまでにノートルダムの歴史的建造物を紹介する「永遠のノートルダム」やエジプトでピラミッドなどを巡る旅「クフの地平線」などのVR作品もあります。そして上海からモントリオール、ニューヨーク、パリに至るまで、名門文化機関や専用の会場で100万人以上の訪問者を魅了しています。「Excurioの使命は、驚きを通じて文化をアクセスしやすくすることです」と述べる通りの作品を世に排出しています。
そして物語の進行やテーマを深く掘り下げるパートを担ったのがGEDEON Experiences社。同社は本来のドキュメンタリー制作や、没入型およびインタラクティブ環境でのオリジナル制作という強みを生かし、作品にストーリー性を持たせ、歴史的正確さにできるだけ近い形で失われた遺産を再構築することを専門として、考古学、文化、芸術、科学、歴史に対する認識を高めるための啓蒙活動に力を入れています。
また印象派の画家たちに焦点を当てるためにオルセー美術館の絵画に対する専門知識は必要不可欠です。これらの共同制作によって、信憑性や臨場感のある素晴らしい作品が完成し、HKDIの企画によって香港での開催になったのです。
体験終了後に上の階に行くと、制作風景を紹介したショートドキュメンタリーを見ることができます。左側から下を覗くとVRの広場を上から見ることができます。
全体を通して75分ぐらいは時間を見て行くと良いでしょう。消化するのに少し時間がかかるかもしれませんが、VRの世界がここまで進化したのかと驚くだけでなく、その物語の世界が素晴らしく美しく、居心地の良ささえ感じるでしょう。終わった後、印象派たちの生きた時代を歩き回り擬似体験できたことで、何だかとってもリッチな気分になるはずです。全ての方におすすめします。ちなみに子どもの入場に関しては、8歳以上、身長が137cm以上ということです。
『Tonight with the Impressionists, Paris 1874 – An Immersive Expedition in Virtual Reality』
「パリ1874年今宵、印象派画家と」
チケット購入はこちら
会場:HKDI Gallery, 3 King Ling Road, Tseung Kwan O, Hong Kong
MTR調景嶺駅下車徒歩1分
Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。
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