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2026/09/14

香港と聞いて思い浮かぶ風景は何ですか?ビクトリア・ハーバーの夜景?ネオン看板がひしめく繁華街?それとも映画『フォー・トレイルズ』でも知られるようになった山や峠?では「海」はいかがですか?海に囲まれ、離島も多い香港には、実はマリンスポーツを楽しめるスポットも多いのです。今話題の映画『浪花男女』(英題:Wakesurf Lovers  )は、これまであまり注目を集めてこなかった香港の海辺を舞台に、マリンスポーツに励む若者の物語です。登場するウェイクサーフィンは、走行するボートが作り出す引き波を利用して、ロープなしで波に乗り続けるスポーツ。そんな新しい題材を扱っている映画作品『浪花男女』について、今回はフォン・チーチアン(馮志強)監督に作品の魅力と見どころを伺いました。

 

 

あらすじ

ウェイクサーフィンの女性コーチ、マン(楊偲泳)は指導方法をめぐってネット上で非難を受けていた。大学を卒業したばかりの青年、チュン(魏浚笙)はその風評を鵜呑みにし、正義を気取ってマンを茶化す動画を作ったところ、それが大バズり!再生数が増え、調子に乗った彼だったが、実はコーチの言い分の方が理にかなっていることを知る。罪の意識を感じたチュンは、マンのもとでウェイクサーフィンを学ぶことを決めた。ネットの評価とは異なるマンの姿に惹かれていく彼はオンライン上での悪評を覆すべく、ウェイクサーフィン界のスターコーチのジョー(朱鑑然)に挑戦するよう彼女の背中を押すが――。

フォン・チーチアン監督 ©️Hong Hom Linda

フォン・チーチアン監督紹介

テレビの構成作家として数々の名作ドラマを手掛けたのち、香港の映画監督チャウ・シンチー(周星馳)の代表作『少林サッカー』『ミラクル7号』『美人魚』などで共同脚本を務めたことで知られる。『スリ』(原題:文雀)や『每當變幻時』『報應』などジョニー・トー(杜琪峯)の監督、プロデュース作品でも多くの脚本を担当。

自らの監督作品『大楽師※』(原題:大樂師.為愛配樂)は香港電影金像獎(香港アカデミー賞)4部門でノミネートされ、日本の「アジアフォーカス 福岡国際映画祭」では最高栄誉である観客賞を受賞。(※映画祭で使用された邦題)

 

役者と同じぐらい魅力的な香港の海 ©️Photo courtesy of One Cool Pictures

コメディーの金字塔『少林サッカー』の脚本や、爽やかな青春映画『浪花男女』を手掛けたフォン・チーチアン監督。1つのスタイルにとらわれない多様な映画を生み出す監督へのインタビュー当日、現れたのは「ご自身もスクリーンに立つ側では?」と思ってしまうほどの男前。水泳経験者らしい颯爽とした所作と、少年のような眼差しで香港の海や作品のエピソードを語る姿が印象的でした。 

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観終わった後に思わず笑顔になってしまう、爽やかな映画ですね。まだ観ていない方に向けて、この作品の魅力を伝えるとしたら、何でしょう?

端的に言うとこの映画は「青春、ロマン、情熱」の物語で、香港初のウェイクサーフィンの映画でもあります。この映画を通じて、香港の美しい自然を見て欲しいですね。香港は海に囲まれているので、美しい海の景色がたくさんあります。特にロケ地であるサイクン(西貢)はどこをとっても絵になるので、是非お勧めしたい場所です。ウェイクサーフィンをしなくても、観光や水泳を楽しめますよ!

また、スポーツを通じて若者が人間的に成長する姿も描き、ソーシャルメディアの問題を取り上げています。ウェイクサーフィンは風に大きく影響されるスポーツ、そしてソーシャルメディアも「風評」という「風」に影響されるという共通点があります。

映画の中でジェフリーは人生についてまだよくわかっておらず、キャリアを定めていない若者「チュン」を演じています。最初、チュンは自分はなんでもできると自らを過信していますが、ウェイクサーフィンを通じて順風も逆風も経験して、彼は人間的に成長していきます。実際の人生でも、順風だけでなく逆風の時もある。逆風にさらされた時に一緒にいてくれる人、それこそが一番大切にする価値があるものだというメッセージを伝えたいです。

レンシ(手前)とジェフリー。ジェフリーは完全なウェイクサーフィン初心者。この映画のために猛特訓した。©️Photo courtesy of One Cool Pictures

 

迫力あるウェイクサーフィンのシーンもこの映画の醍醐味ですね。撮影はいかがでしたか?

ウェイクサーフィンの一番の見どころは、何と言ってもレンシとケビンのバトルですね。2人がそれぞれのボートを使って、横並びで同時にサーフィンをやるというシーンですが、本当に難度の高い撮影でした。2艘のボートが作る引き波が、互いに干渉し合って、波の方向、強さなどが予測できなくなります。1人がうまく行っても、もう片方が落水したり、ロープが絡まったりで、もう何度取り直しをしたか!天気や風などの条件もなかなか揃わなかったし。最終カットで見ると短い、あの数分のシーンを撮るだけで4日かかりましたが、もっと時間がかかってもおかしくない、難度が高いシーンでした。その迫力をぜひ銀幕で見て欲しいです。

 

ジェフリー自慢の大きく鍛えた筋肉はウェイクサーフィンには不利だった。©️Photo courtesy of One Cool Pictures

キャストについては今回、特にジェフリーは本当に頑張りました!彼のウェイクサーフィンシーンの撮影日は、嵐かと思うぐらい強い風が強かったんですよ。そもそも、ケビンとレンシは経験者だけど、ジェフリーは正真正銘の初心者だったし、体型的にもハンデが大きいから、不利なんです。彼のように体を鍛えていて、筋肉が大きいと、重さがあるし、余分に水の抵抗を余計に受けるので。でも、彼のやる気と努力は凄まじかったですよ。以下のYouTubeで、練習の様子をぜひ観てください。練習、撮影と、体力を消耗するので、お弁当を二つベロッと平らげてましたよ(笑)

 

 

レンシはウェイクサーフィンの経験者で、キャストの中で一番上手だし、フォームが美しいです。朝から晩までウェイクサーフィンをしていたので、体力的にキツかったと思いますが、映画の中の役と同様、情熱を傾けていました。おにぎりを持って最後まで練習していた姿を今でも思い出します。あと、彼女は売れっ子女優だから、『浪花男女』の前に、『廚師發辦』『UFO離奇命案』の撮影を終え、続いて『夜王』の撮影に入るというクレイジーなタイミングで仕事をしていました。もしも『夜王』の中でレンシが疲れて見えたら、それはこの作品が原因です(笑)。

レンシはおにぎりを片手に練習・撮影に励んだ。©️Photo courtesy of One Cool Pictures

 

ケビンもウェイクサーフィンの経験者。彼は飲み込みがとても早いんです。手本を見せると、すぐにできてしまう。それに彼は水泳の香港代表だったから、落水しても、水中の彼はとても自信タップリでした(笑)。撮影の時も、船の後を自力で泳いで戻ってきたりしていたんですよ。

元水泳選手のケビン(左)が数年前、監督をウェイクサーフィンに誘ったことが、この映画誕生の発端。©️Photo courtesy of One Cool Pictures

 

製作段階で想定外の困難があったと聞きました。

実は映画の初期段階で突然、一部の投資者が手を引いてしまったんです。政府の補助金を獲得して、キャストのスケジュールを確保して、ウェイクサーフィンの練習も始めて……。そんなタイミングだったんです。わたしは大きな決断を迫られましたが最終的に、自分は監督として周囲の人たちへの約束を果たさなきゃいけないと心を決め、映画制作をやり遂げようと、自腹を切りました。ジェフリーもスポンサーを探すなどして、手助けをしてくれました。

 

影響を受けた日本の映像作品、あるいは今後一緒に仕事をしたい日本人のクリエイターなどいたら教えてください。

まず、わたしの作品は日本でとても高く評価される傾向があるので、とても嬉しく思っています。例えば前作の「大樂師」は、2018年、九州の福岡市で開催された「第28回 アジアフォーカス・福岡映画祭(Focus on Asia Fukuoka International Film Festival)」で、アジア各国の並み居る出展作の中から、最高賞にあたる「観客賞(Audience Award)」を受賞しました。

2018年9月「第28回 アジアフォーカス・福岡映画祭」授賞式でのフォン監督 ©️Photo courtesy of One Cool Pictures

 

日本の映像作品が大好きです。監督であれば黒澤明や北野武。あと、木村拓哉の出演作品は全部好き。『笑の大学』をはじめとする天才、三谷幸喜の作品です。日本の漫画も大好きです。『デスノート』『進撃の巨人』『北斗の拳』や池上遼一の『サンクチュアリ』など、名前を挙げればキリがありません。いつか、木村拓哉、福山雅治などと仕事をしてみたいなと思います。

 

これから監督の作品を観る日本のオーディエンスにメッセージをお願いします。

日本では『少林サッカー』が人気ですよね。20年以上前の作品ですが、わたしは今でも日本に行くと『少林サッカーの脚本家』って紹介されるんです。でも今後、様々なジャンルの香港映画を撮って、みなさんに観ていただきたいです。アクションだけが香港映画じゃないですよ!

 


香港の海の美しさと、若者たちの熱いドラマがギュッと詰まった『浪花男女』。監督の情熱と誠実なお人柄を感じ、ますます作品が好きになりました。ぜひ日本でも劇場公開され、多くの人にこの爽やかな風が届くことを期待しています。

 

取材・文:紅磡リンダ(編集部)
通訳・翻訳:イバ・ルイ

(人名のカタカナ表記は、基本、既存の作品で使用されている表記に従いました。表記に揺れがある場合や既存の表記が確認できない場合は、便宜上仮のフリガナを付しています。また、本文では敬称を省略しています。)

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香港映画が今年日本でも上映されます!ぜひご覧ください。

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