2019/07/10

 

「日本人に馴染みのある食材で香港家庭料理を作ろう!」粟米冬瓜清熱袪濕茶
スゥク  メァイ  ドゥン  グゥワ  チィェン イェッ フゥイ  サップ  チャ
(トウモロコシと冬瓜の簡易民間養生茶)

通年、平均湿度が70%以上ある香港。体内に余分な水分が溜まりやすいのは香港の気候の特徴です。だからこそ、体内の余剰水分を取り除く民間治療法は数多く存在しています。中医学の知識がない香港人や、普段から食事を作らない香港人でさえ、どんな食べ物を食べれば水代謝を促進するのか知識を有しているほど一般的に香港人の間では知識が浸透しています。

香港では、よく材料と水で煮出す、身体に良い液体のことを、「◯◯茶」等と名付けています。茶葉を一切使用していないのにも関わらず、「茶」と名付けられています。恐らく、古代の名医たちは茶というものは薬にもなると言う意識があり、茶色になっている身体に有益な液体は無意識に「茶」と名付けられたのかもしれませんね。

このお茶は私の祖母が必ず夏になると作ってくてれいた清涼飲料水です。身体の余分な熱を冷まし、夏の暑さで大量の汗をかいたせいで失われた体内の潤いを補い、ジュース代わりに夏の代表的な飲み物として、常温にて私たちに飲ませていました。

作るポイント⇒ 冬瓜とトウモロコシ皮ごとを全て使うこと

 

材料:

トウモロコシ     1本
冬瓜(皮・種・綿付) 300g
人参         1本
ハトムギ 5g
沖縄冬瓜漬け     30g
陳皮(みかんの干し皮)3g
水(作り方の欄に説明があり)

 

下ごしらえ:

1. すべて野菜を洗う。トウモロコシはひげをぎりぎり覆う一枚の薄皮のみ残し、一本丸ごとを使う。
2.冬瓜は皮のうぶげを包丁の背で軽く削る。種を取らず、綿を取らず、そのまま使う。
3.人参は皮のままで大きく乱切りする。
4.陳皮を水で戻し、綿を取る。

作り方:

1.下処理した野菜と沖縄砂糖漬け冬瓜を高さがある鍋に入れ、水を加え、材料を全部被せた後に2cmの高さぐらい水位まで水を入れる。
2.強火で沸騰させて、中火から弱火でさらに45分で煮る。水位が大体材料をぎりぎり被せる水位までで出来上がり。
3.材料を漉し、汁のみお茶として常温で飲む。

薬膳のプチストーリー

高温多湿の気候環境では、体内の水代謝を悪化させ、余剰水分の排出が難しくなります。身体が怠くなり、浮腫みが酷くなり(特に下半身の浮腫み)、食欲低下や身体が重く感じ、暑さでバテを感じ、大量の発汗等にて体内の潤いがなくなるなどの諸症状が出やすくなります。さっぱりしない気候です。ですので、香港人は夏場での冷たい飲料を避け、夏でも温かい飲み物を摂取します。代表としては、香港の地元のカフェ等に入るとまずは〝滾水*1〞が出されることが多々あります。日本ならどこの飲食店でも氷の入ったお冷が一般的ですが、香港ではなかなかそのケースは見かけません。矛盾しているのは、お湯を出されても、注文する飲み物は何と氷がたくさん入ったアイスレモンティーや香港式アイスミルクティーなど等・・。出されたお湯は単に箸やスプーン等の食器を洗浄するお湯として使われる事が多いです。この矛盾を見かけると、私は何時も微笑んでしまいます。(笑)

冬瓜とトウモロコシも利尿作用があり、体内の余剰水分を取り除くのを促進し、余剰体熱も取り除く効果が有ります。中医学では、「一物全食」の理念があり、食材の全部を食する事で、体内の様々なバランスを助けると言う考え方があります。冬瓜の皮、種、綿、同じくトウモロコシにおいても、皮、ヒゲ、芯、それぞれにて働きがあり、全てを食すればより効果的に養生する事が出来ると言われています。

香港のプチストーリー

「袪濕茶」とは文字通りに体内の余剰水分を取り除く効果があることで知られるお茶です。高温多湿の広東地方でしか見られないお茶です。材料の中にある「冬瓜漬」と言うものは、偶然私が沖縄旅行に行った時に見つけた冬瓜を砂糖で煮詰めたものです。香港でも全く同じものがあり、香港では「糖冬瓜*2」と言い、お正月でのおもてなしのお菓子の一品です。香港ではそのまま食べるか、お菓子の餡として利用されたり、このように砂糖の代わりとしてお茶と一緒に煎じたり、色々な使われ方がされています。日本で「糖冬瓜」の代用品を発見し再現する事が出来てとても嬉しかったです。
*1 滾水 (グァゥン スェゥイ) 白湯、ぬるま湯のこと。
*2 糖冬瓜(トォン ドゥン グゥア)冬瓜を砂糖ど煮詰めたもの。


雲姐(ワンジェ)

料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。

人在東京 Prime Kitchen Labo

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