2021/07/15

幼いころから声楽を学び
身につけた圧倒的歌唱力

ゲームからアニメ化された『AIR』の主題歌「鳥の詩」が大ヒットし、数々のアニメソングを歌ってきたLiaさん。透明感あふれる歌声と圧倒的な歌唱力で、2011年には、ボーカリストとして参加したアルバムが第53回グラミー賞「最優秀クラシック・クロスオーバー・アルバム賞」を獲得。世界中にいるファンにその歌声を届けるため、アメリカ、カナダ、中国、タイ、インドネシアなどを回ってライブを行った。そんな彼女が約7年前から暮らしているのが、実はここ香港だ。

実際に会ったLiaさんは、小柄でほがらかな女性だった。ステージで歌う姿には神々しいほどのオーラを感じるが、実はとても気さくでおしゃべり好き。「10代のファンがライブに来てくれたりすると『どこから来たの?』って母親みたいな気持ちで話しかけてしまうんです」と笑う。

Liaさんが初めて舞台で歌ったのは、小学3年生のとき。当時通っていたバレエ科が所属するミュージックスクール主催のミュージカルのために、オーディションを受けたのがきっかけだった。そこで選ばれてステージに立って以来、声楽を習い始めたLiaさん。毎年恒例のコンサートでは大人に混じって小学生で参加、ミュージカルでは中学生で主役を演じていたそうだ。

高校で留学した経験を生かして進学先に選んだのは、アメリカで現代音楽の名門校といわれる「バークリー音楽大学」。一流の音楽家たちと学び、ジャズやゴスペルなど本場の音楽に触れた経験は大きな糧となっている。

「世界のトップを目指す学生たちに囲まれて最初は圧倒されましたが、人のまねではなくて、自分の個性を生かすことが大切だと学びました。わたしの場合は『素直な声』と評価されてきた声質かな」

ライブでみんなの喜ぶ顔を見ると、苦労も吹き飛ぶ。「ファンが愛し続けてくれたから、20年間歌ってこられました」
運命的なデビューを迎えたきっかけ

Liaさんが『鳥の詩』でデビューしたのは、アメリカにいたとき。知り合いのスタジオで自身のデモテープを制作していた最中、そのスタジオを使いたいという日本のゲーム会社からの問い合わせを通訳した。その際、「わたしもここを使っていますが、良いスタジオですよ」と話したら、後日この会社から「ぜひそちらでレコーディングをしたい。ついてはあなたが歌ってくれませんか?」と、驚きのオファーを受けたのだという。

「歌うはずだった方が、急に来られなくなったそうです。そうはいっても、さすがにわたしの歌を聴いてから決めてくださいとデモテープを送ったら、社長が気に入ってくださって。レコーディング当日は、日本から来た人たちの『ここを巻き戻してください』『曲を止めてください』という指示を現地のエンジニアスタッフに通訳しながら自分は歌う、という状況。泣くほどきつかったのですが、今では良い思い出です」

ゲーム『AIR』は、のちにTVアニメ化、劇場版化され、その際の主題歌にもLiaさんの「鳥の詩」が使用されている。作品の世界観にLiaさんのクリスタルボイスがぴったりのこの歌は、今でもネット上で「神曲」「国歌」と呼ばれている。

「『鳥の詩』と出合っていなければ、今のわたしはなかった。あれは運命だったとしか思えませんね」

20周年を記念して発売された『Lia 20th BEST』。収録曲はファンアンケートの結果によって決められた。

 体は歌うための楽器
日々のメンテナンスが必要

「日本では仕事に集中して、香港では妻・2児の母として過ごす。今はそれがちょうど良いバランスのような気がしています」

日本からも近く、子どもの英語教育もできる香港での生活は気に入っている。ただ、5年ほど前に風邪を引いて以来、歌うときに違和感を覚えるようになった。

「ある高音を出すと、声がカサッとするんです。でも、何度耳鼻咽喉科へ行っても異常は見つからず、挙げ句の果てには『あなたの求めるレベルが高すぎて、僕たちには理解できない』と言われてしまって」医師には「香港の空気」が理由の一つと言われた。少しのどを締めれば問題なく歌うことはできるが、いつかのどを痛めてしまう。抱える焦りを周りに理解してもらえない苦しみは、歌手人生の終わりを考えるまでLiaさんを追い詰めた。

「あるとき、医師に言われたんです。きっかけは香港の空気かもしれないけれど、生きていれば環境も身体も変わっていく。一緒につき合っていくしかないのでは、と」

つらい宣告だったが、Liaさんの背中を押してくれた言葉でもあった。自分の身体は歌うための楽器。年齢を重ねればメンテナンスが必要なのも当然だ。歌う前には身体を温め、念入りな声帯のエクササイズで最高のパフォーマンスができる状態に仕上げる。この5年間、就寝中のマスクは欠かしたことがないそうだ。

アーティストであり職人でもある

アニメソングのレコーディングをするときは、納得できるまで脚本家や作曲家に質問をするというLiaさん。

「ストーリーや誰の目線で歌うのかなどを理解して、アニメの世界観を大切にして歌いたい。レコーディング中は『もう少し息遣いを強調して切なさを出しましょうか』など、ワンフレーズずつ相談しながら歌います。こだわりすぎてしまって最終的にどれがいいかわからなくなってしまうこともありますね」

「ニーズに応じて歌うための引き出しはたくさんある」と語るLiaさん。「わたしは歌うパートを担っている制作陣のひとり。そこで全力を尽くすだけ」という姿勢は、アーティストでありながらも職人のような気概を感じさせる。

ライブ会場でたくさんのファンを見ると「すごいのはアニメなのに、どうしてこんなにたくさんの人がわたしのために集まってくれているの?」と今でも思ってしまうというLiaさん。ライブでは涙するファンにもらい泣きしそうになりながらも、全力で歌う。それが自分にできる精一杯のことだから。

「わたしにできるのは歌うこと。歌うと喜んでくれる人がいるから今まで歌ってきました。でもやっぱり、音楽はライブに勝るものはありません。新型コロナウイルスのパンデミックが終息して、皆さんに安心して歌をお届けできる日が早く来ることを祈っています」

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*Hong Kong LEI vol.44 掲載

WRITER書いた人

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