2021/04/15
煎蛋角
(ジン ダン ゴク)
【たまご餃子】
3月末に、香港実力演技派の俳優の廖啓智さん(リウ・カイチー Liu Kai-Chi) が66歳で亡くなりました。とても存在感のある俳優で、彼のことを知らない香港人はいないでしょう。 突然のニュースで呆然としました。幼少の頃、彼のドラマを初めて見たのが数十年前。心の中では、彼は若いまま、イキイキしているイメージしかなく、もう彼の新しい映画を見ることが出来ないなんて信じ難く、なかなか受け入れられないです。
最後に見た彼の映画は2015年に上映された「十年」という映画です。「十年」という香港映画は数年前、日本も上映され、日本でも反響が大きかったようです。この映画は5つの香港短編ストーリーを合わせてできたもので、誰も望まない香港の未来が繊細に描かれた物語です。
廖さんは、5つの短編ストーリーの中で1番最後のストーリー、「本地蛋」(ブンデイダン)の主役として出演しました。この映画で、わたしにとって一番印象的だったセリフは「理不尽なことに慣れてはいけない」です。映画の中では、香港政府の理不尽な政策のせいで香港地元の養鶏場は全て閉鎖され、香港産の鶏卵は永久に消え去ってしまいます…
今回ご紹介するレシピの、「煎蛋角」(ジン ダン ゴク)(煎=焼く、蛋=たまご、角=餃子の形のもの)は、映画の中の香港産の卵のように無くなってしまうのではないかと思います…
「煎蛋角」は祖母が孫達を喜ばせるために、手間を悔やまず、薄焼きにした卵で餡を包んだ卵餃子のこと。
餡はひき肉と「菜脯」(チョイ・ポ / 香港たくあん)の炒め物です。現代の「菜脯」は以前より保存が長く出来るようになりましたが、多くの添加物をが入っていたり、塩分が高かったり… などの理由で、健康に良くない、と人々から敬遠されがちです。さらに作るのに手間がとてもかかるのでだんだん食卓に並ばなくなってしまいました。けれども、日本の無添加たくあんをアレンジし、香港たくあんに似せることもできます。
4月の上旬、香港ではイースター連休で、イースターエッグ・ハンティングがあったり、チョコたまごを販売していたり、ショーケースに卵飾りがあったり… と、どこも「たまご」だらけで、イギリス植民地の伝統はまだ残っています。
「10年」後でも、「煎蛋角」や「菜脯」などは、良い形で香港の文化として生き残ってほしいです。
*香港では甘めな「菜脯」と塩辛い「菜脯」がありますが、このレシピでは甘めのたくあんを使っています。
Tips: 焼く時に、フライパンを高温で温め、そこに油を敷き、たまごを流して素早く固めると綺麗な形になりやすいです。 |
材料 (2人分)
[餡の材料]
豚の挽き肉(粗め)………. 50g
下味:
醤油………………………… ½小さじ
日本酒……………………… ½小さじ
甘麹………………………… ½小さじ*
(無ければ砂糖少々)
片栗粉……………………… 1小さじ
無添加たくあん(甘め)………. 25g
にんにく(みじん切り)… 3g
[皮の材料]
卵………………………………. 2個
塩麹……………………………. ½ 小さじ
(無ければ塩少々)
胡椒 ………………………….少々
片栗粉………………………… 1小さじ
水………………………………. 1小さじ
*甘麹 麹:水 1:1
<下処理>
1.豚の挽肉を下味の調味料でよく混ぜ合わせる。
2.たくあんをみじん切りにしてから、にんにくと合わせる。
3.片栗粉と水を合わせて置いて、粉が沈んだら、上澄の水を捨てる。
4.卵を割り、ボウルに入れ、塩麹と胡椒を上記3番の片栗粉に加え、よくかき混ぜておく。
<作り方>
1.フライパンを熱し、分量外のサラダ油小さじ1を加え、ひき肉とたくあんを色が変わるまでよく炒めて取り出し、冷めておく。
2.フライパンを熱し、分量外のサラダ油を小さじ2敷き、熱くなったら、スプーンで卵液をフライパンに敷き、1小さじほどの餡を片側に置き、片方の薄焼き卵を餡を覆い、くっ付ける。反対側も軽く焼いて取り出す。器に盛り付ける。(卵は直径10センチほどの円になるまで焼いてください)
雲姐(ワンジェ)
料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。
人在東京 Prime Kitchen Labo
Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。
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