2022/06/16

筍蝦(鮮筍)燜豬肉
(スン ハ(シン スン)マン ジュ ヨク)
【筍と豚肉の発酵香港豆腐よう煮物】

 
香港の10人の若者に「『筍蝦燜豬肉』(スン ハ マン ジュ ヨク)を知っていますか?」と聞いたら、恐らく、そのうちの9人は知らないと答えると思う。 もし、知っていたら、奇跡の1%と言ってもいいかもしれない。絶滅の危機に瀕している香港レシピと言えるくらい。さて、どんな料理でしょうか?
4月初旬、義母が京都物集女(もずめ)産の筍を送って来てくれた。筍をうまく処理出来ないわたしは、箱を開けないで、猛ダッシュで友人の家に持っていった。友人はとても仕事が出来る「女」(実際、料理の先生)ですから。筍のあく抜きから下処理まで全てお願いした。図々しいわたし。どんな方か、気になるでしょう。こちらのリンクで覗いて見て下さい。
https://cookingschool.jp/school/mirepoix
二人とも、物集女(もずめ)という地名は初耳でした。まずはネットで調べることに。調べたらかなり高価な筍らしいのですが、筍は掘り出して24時間以内に渋抜きしないとえぐみがどんどん増えるので、急いで友人の家に持って行ったのも、それが理由だった。
筍の話で盛り上がり、「香港のメンマのことを聞いたことがある?」って軽く投げてみたら、ないと友人は答えた。また次回ゆっくりと話しましょう、と約束したが、文字で書き留めたほうが将来のためにもなると思って、書いておきたいと思います。香港でさえ聞いたことがある人がいないぐらいだから。
『筍蝦』(スン ハ)とは廣東人の「干し筍」のこと。実は日本のメンマに似ている。作り方もメンマと同じ。中国南部廣東地方で「麻竹」(まちく)という細長い筍を使うのが一般的。筍を4等分で切り離して、茹でてから発酵させ、天日干しで乾燥させてから保存する。筍を発酵させるのはポリポリな食感にするためと、変色を抑制するためだと思う(筍をそのまま干して乾燥したら、筍の色は黒くなりやすい)。
『筍蝦』は発酵食品だから、独特の匂いがする。メンマの匂いの5倍くらいが『筍蝦』の匂いに近いかも知れません。
乾燥した最終的な形は、半月形の「つげ櫛」に似ていて、蝦の形にも似ているから、我々廣東人は干し筍のことを『筍蝦』と呼んでいる。昔の旧正月の際に『筍蝦』と豚のバラ肉の煮物は廣東人の家庭内でよく出された料理ですが、現在知っている人は非常に少ないと思う。ネットで検索したら、情報が少なく、びっくりしました。
子どもの頃、『爸爸』(バーバー)【和訳:父】はとてもこの煮物が好きで、月一回は食卓に必ず出る料理だった。濃厚な味噌うどんのような発酵臭がある筍豚バラ煮物だが、日本ではなかなか似たような味がないので、機会があれば是非食べてみてください(なかなか出会う機会は無いかも知れませんが)。
『筍蝦』の下処理はかなり手間がかかる乾物。非常に臭うので、下処理するには数日かかる。それが人気が無くなった理由の一つかもしれない。『筍蝦』はかなり強い癖を持つ食材なので、廣東の紅麹で発酵した豆腐調味料、「南乳」(ナム ユ)と一緒に煮込むのが一般的です。

 

Tip: 日本では『筍蝦』がないため、生の筍を使いました。脂を押さえるため、豚のバラ肉の代わりに肩ロースを使いました。本来ならこの料理は汁だくですが、お弁当用に汁なしにアレンジしました。もし、『南乳』が無ければ、沖縄の「豆腐よう」を代用しても大丈夫です。

 

<材料>(2人分)

豚の肩ロース………………………200g
筍の水煮…………………………….150g
生姜(スライス)…………………..3g
にんにく(つぶす)………………..5g
鷹の爪(種無し)………………….1本
サラダ油………………………2大さじ

【A】豚肉の下味

塩麹………………………………1小さじ
紹興酒……………………………1小さじ
きび砂糖……………………..1/2小さじ
サラダ油………………………..1小さじ

【B】煮込み用の合わせ調味料

麦みそ…………………………..1小さじ
南乳………………………………1塊
きび砂糖……………………….2小さじ
紹興酒…………………………..1大さじ
水………………………………..100cc

<下処理>

1.豚肉を1.5㎝ⅹ3㎝で細長く切っておく。【A】の豚肉の下味に30分つけておく。
2.筍は縦に5㎜の厚さで薄切りしておく。さっとお湯にくぐらせてからあげて、水気を切る。水気を切ったら乾煎りする。筍が干しもののように水分が無い状態になるまで乾煎りする。焦げないように注意して下さい。
3.【B】の煮込み用の合わせ調味料を合わせておく。

<作り方>

1.深さがあるフライパンを熱し、熱くなったら、サラダ油大さじ2を加え、生姜とにんにくを入れて香ばしくなったら、【B】の煮込み用の合わせ調味料を軽く炒める。豚肉、筍と鷹の爪も加え、全ての材料がソースで絡まったら、水を入れて沸騰させる。
2.沸騰したら中火で汁がなくなるまで煮込む。


雲姐(ワンジェ)

料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。

Instagram
@hongkongrecipe

note「レシピ保護区」
https://note.com/recipesanctuary

人在東京 Prime Kitchen Labo

 

 

コメントをありがとうございます。コメントは承認審査後に閲覧可能になります。少々お待ちください

意見を投稿する

Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。

Translate »