2023/05/25
母親節快樂!5月の第2日曜日、母になって9度目の母の日がやってきました。
「ママ、英語分かんないと思って日本語にしといたからね」長男(8歳)からは似顔絵に“ありがとう!”とメッセージが添えられたカード。しっかり字が書けるようになって来た次男(5歳)からは“To mummy I love you xxxxxxxxxx”初めての手書きのカード。優しいのか小憎らしいのか(?)いっぱしの口を利くようになった長男と、きっと字を書くのが途中で面倒になりキスを意味する“x”でカードの余白を埋めてみた要領の良い次男。
わたしは苦笑しながら、改めて子の成長を感じる一日を過ごしたのでした。
さて、そんな彼らの成長を語る上で、我が家が香港にやって来た4年前からお世話になっているフィリピン人の住み込みのお手伝いさんの存在を避けて通るわけにはいきません。
特に、来港当初、まだ1歳だった次男にとっては、彼女は仕事中のわたしに代わって1日の大半を共に過ごすもう一人の“母”。オムツをせずに朝まで眠れるようになり、補助なしでスイスイと自転車に乗って、水泳スクールで初めて水に顔をつけて泳いで……。わたしが見逃した彼の成長の節目にはいつも彼女の姿がありました。
クローゼットから自分で洋服を選び、お手伝いさんとリンクコーデをするのが次男の最近のマイブーム
5月に母の日があることにも由来するのでしょう。2015年、生活に重要な役割を担ってくれているヘルパーたちに対し、5月を感謝月間として彼ら/彼女たちに感謝し、その気持ちを実際に伝えるアクションを起こす取り組みが香港のランタオ島で始まりました(注1)。
“May is Helper Appreciation Month”と名付けられたプロジェクト。4年ぶりに通常の生活が戻ってきた今年は、息子たちの通う学校でもPTSA(The Parent Teacher Student Association)の協力のもと、様々なアクティビティが用意されました。
日曜日には、お手伝いさんたちのための飲み物・軽食付き無料カラオケ大会。医師が講師となり、糖尿病や高血圧を予防する生活スタイルや、血液検査、子宮がん・乳がん検診等が無料・格安で受けられる行政サービスを紹介する無料セミナーも催されました。
また、ある日には、アートイベントとして、長男の学年の児童たちが彼女たちにネイルを施したり、一緒に工作をしたり。次男たちの学年は、授業で作って焼いたクッキーを準備し、ありがとうの歌を歌うティーパーティーに彼女たちを招待したようです。児童たちが企画したベイクセールも開催され、お友達の作ったスプリンクル付きチョコカップケーキと引き換えに、息子はお小遣いからヘルパー支援団体への寄付を行いました。
たくさんのアクティビティ。長男はお手伝いさんと彼女の母国語(タガログ語)を使ったワードパズルも楽しんだ
そして今年5月は「ハッピー香港」(注2)と連動した外国人ヘルパーを雇う家族に向けたイベントも実施されています。
雇用主とヘルパーが気持ちを伝え合うショートビデオを制作し労働局のサイトにアップロードすると、抽選で3,000世帯に合計12,000枚のオーシャン・パーク入場チケットが贈呈されるというキャンペーン(注3)。雇用主が日頃の感謝を伝えるきっかけとして一緒にビデオを作ったり、無料で当たったチケットをプレゼントしてあげたりすることで、政府として雇用主とヘルパーが良好な関係を築く後押しができればという目的で実施されているのだろうと思います。
皆がそれぞれのカタチで伝える感謝。ヨガの先生による無料レッスンも。イベントの告知が行われるFBコミュニティ(注4)
2020年以降のコロナ禍。香港暦15年を超える我が家のベテランヘルパーさんですが、恐らく人生で最も辛い時期を過ごしたのではないかと思います。
持病がある彼女の夫はコロナ罹患をきっかけに、一時、意識不明の重体となりました。泣き崩れ、国に帰らせて欲しいとわたしたち夫婦に申し出た彼女でしたが、フィリピンに帰って来ても病室には1名しか付き添うことはできないし、お前にできるのは、香港に残り、入院費用と家族のための生活費、子どもたちの教育費を稼ぐことだと親族たちに説得され、翌日、震える声で「マニラまでの航空券、必要がなくなりました」と伝えてきた彼女に、わたしは何と言葉を掛ければよいのか分かりませんでした。
一命はとりとめながら障害が残ってしまった夫の分も、彼女は今も我が家で懸命に働き、国への仕送りを続けています。
「人口估計」及び「在香港外籍家庭傭工數目按國籍分項的統計」をもとに筆者作成(注5)
香港にいる外国人ヘルパーの数はおよそ35万人。香港の人口全体の約5%を占めています(筆者作成の表を参照)。
『数字からみる香港の風景』の記事を執筆するため統計の数字を眺めていると、「不包括外籍家庭傭工(外国人ヘルパーを除く)」という文字が頻繁に出てくるのがいつも引っ掛かり…前提条件を合わせるためなのだろうと頭で理解はしながらも、彼ら/彼女たちもわたしたちと同様、香港で働き、消費もしているのに、同等に扱ってはもらえない存在なのかしら…と複雑な気持ちになってしまいます。
宿題で我が家のヘルパーさんにロングインタビューを実施した長男。食いしん坊少年が最も食いついたのは彼女の大好きなフィリピン料理Adoboについての話題だった!
香港で30万世帯以上のもう一つの家族のために働く大勢の外国人ヘルパーたち。国に残した自分自身の家族を支えるため、異国の地で頑張る彼ら/彼女たちの逞しさにわたしは心から敬意を感じます。
フィリピンに戻れば3人の子どもたちの母親でもある我が家のお手伝いさん。もう一人の“母”の日を祝う香港の“息子たち”からの気持ちが、彼女に、束の間、どうか安らぎの時間をもたらしてくれますように。
Emi in HK。多謝收睇。下次見!
【出典】
※注1…(参考URL)https://www.helperplace.com/blog/helper-appreciation-month-hong-kong
※注2…「開心香港」Happy Hong Kong(GovHK香港政府一站通)
https://www.info.gov.hk/gia/general/202304/28/P2023042800466.htm
※注3…「顧融感謝週」Thankful Week for Families with Foreign Domestic Helpers(香港特別行政區政府 勞工處)
※注4…https://www.facebook.com/MayHelperAppreciation
※注5…以下より算出。各年の人口は「在香港外籍家庭傭工數目按國籍分項的統計」の数値に合わせ年底の値を参照。
・在香港外籍家庭傭工數目按國籍分項的統計(香港特別行政區政府 入境事務處)
https://data.gov.hk/tc-data/dataset/hk-immd-set4-statistics-fdh
・人口估計(香港特別行政區政府 政府統計處)
https://www.censtatd.gov.hk/tc/scode150.html
汪 江美子(わん・えみこ)
映像プロダクション会社勤務。慶應義塾大学大学院修了後、日本・東京商工会議所にて、中小企業の資金調達支援や政策立案時の省庁との折衝等に従事。15年半の勤務を経て2019年、夫の仕事の都合により来港。2020年から現職。夢は日本と香港の合作映画の製作に関わること。気分転換は25年振りに再開させたピアノ。インター校に通う8歳、5歳、男児2人の母。
Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。
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