2023/08/19

この夏、我が家は日本に一時帰国した際、子ども達を小学校と幼稚園に体験入学・入園させてみることにしました。一時帰国を除き、一度も日本で生活をしたことが無い我が子は、「日本の小学校」、「日本の幼稚園」と言うものを目にしたこともなければ、体験したこともありません。小学生の子は、日本に帰る前から猛反対で、「誰も話してくれなかったらどうしよう……」、「絶対に行きたくない! 日本に帰らない!」と強固な姿勢。下の子は、某し〇じろうのDVDで『かっこいい幼稚園生になるんだ!』というストーリーを観ていたため、幼稚園生への憧れも強く、むしろ楽しみにしていました。上の子の心配な気持ちに耳を傾け、一つ一つの心配事に関して、「こんな風に考えたらどうかな」とか、「周りの子はこんな風に思うのかもしれないよ」などと伝えながら、一つの状況について、考え方や見方はたくさんあるということを一緒に検討しました。そして迎えた体験入学・入園。2週間ほどの短い期間ではありましたが、園や学校の先生方、クラスのお友達が温かく迎え入れて下さったお蔭で、それぞれにとても充実した時間を過ごすことが出来たようです。一方で、2週間という期間は、自分の居場所を探すには短すぎるという側面もありました。休み時間など、同級生が遊びに行ってしまうと、一人で本を読んでいたようです。ただ、読書好きであったことが功を奏し、特に寂しいという感じもなかったことは幸いでした。

さて、この「居場所」という言葉を聞いて、皆さんはどんなことを思い浮かべますか。物理的などこかの居場所を思い浮かべる人もいれば、誰か人が浮かんでくる方もいるかも知れません。どうしたら、自分の今ある環境を自分の「居場所」として感じることが出来るのか。今回は、「居場所」について、心理学的な側面から考えてみたいと思います。

例えば、会社や学校などの場面を思い浮かべた時、毎日、通勤、通学する場所としてその場は存在しているけれど、そこが自分の「居場所」かと聞かれたら、しっくり来ない方も多いかもしれない。それは、家庭においても同じことが言えます。自分が物理的に身を置いているにも関わらず、そこを自身の「居場所」と感じられないのは、その場所が自分の安全地帯ではないからでしょう。

「居場所」についての心理学的研究では、以下のような要件が、人が自身の「居場所」であると感じることに寄与していることが分かっています。

 

1、自分が他者から受け入れられていると感じることができる

2、自分がありのままで居ることができる

3、自分が人の役に立っていると感じられる役割を担っている

4、自分の気持ちが落ち着く、安心する

 

また、こうした居場所は複数ある方が、個人の自己肯定感や幸福感が高くなるという結果が明らかにされています。最近では、物理的な場所でのface to faceの交流だけでなく、オンライン上での交流などでも、こうした居場所を求める人々が増えており、心の安定に大きく影響していることが分かっています。ひと昔前の感覚では、見たこともない、会ったこともない相手とのゲーム上でのやり取りやメールだけのやり取りを、「友達」と表現する世代に違和感を覚えたものですが、今やそれらは、彼らにとってかけがえのない「居場所」となっている訳です。

さて、夏休みも終盤に差し掛かってくると、宿題の心配やら、生活習慣が戻るだろうかという心配と共に、2学期の始まりを意識します。日本でスクールカウンセラーをしていた経験から、「みんな元気に学校に来るだろうか」という心配がわたしの頭をよぎるのもこの時期です。学校を自分の居場所の一つとして感じられ、2学期の始まりを楽しみにしている子どもたちがいる一方、そうでない子どもたちも居る。しかし、居場所は一つだけでなくて良い。むしろ、様々な集団に多重所属することで、自信を持つことができる場合もあります。子どもの「居場所」について、また、ご自身の「居場所」についても、今一度、考えてみることで、何か新たな発見があるかも知れません。



河合 まり絵

臨床心理士。日本ではスクールカウンセラーとして、不登校児童や別室登校児童、発達に偏りのある児童への心理的サポートや、精神科クリニックで、パニック障害、PTSD、うつ病、摂食障害などの個別カウンセリングを実施。リワーク外来では、精神疾患などで休職中の患者に対し集団療法を、また、復職後の企業内フォローアップ・カウンセリングを実施。刑務所内では、グループ矯正教育をするなど、教育、医療、産業、司法の分野で臨床経験を積む。香港に移住してからは、3児の子育てに追われるも、縁あって精神科クリニックに復職。

 

OT & P Healthcare/ Mind WorX Clinic
MindWorXはOT and P Healthcareが運営する精神科専門のクリニックです。
中環駅(セントラル)から徒歩2分の場所に位置しており、簡単な日本語を話せる医師と、日本人の臨床心理士が在籍しておりますので、薬の処方と共にカウンセリングを並行して受けることが可能です。投薬はしたくないけれど、カウンセリングを受けたいという方もご相談下さい。

以下のようなことでお困りの方は、是非、一度、ご相談下さい。
・夜、なかなか眠りにつけない、または、朝、早くに目が覚めてしまいすっきりしない
・不安や心配な気持ちがいつも頭を離れない
・過度に食べ過ぎてしまう、または、食欲がない
・子育てに疲れている
・コロナ禍でストレスが溜まっている
・夫や妻、パートナーや他者との関係に悩んでいる など

初回予約の際に日本語でのサポートが必要な方は、marie.kawai@otandp.comにemail を頂ければ、日本語での対応が可能です。

Mind WorX Clinic
OT&P – Internationally Accredited Medical Clinics in Hong Kong (otandp.com)
6/F Century Square, 1 D’Aguilar Street, Central, HK
中環徳己立街1號世紀廣場6樓
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Appointment WhatsApp: +852 6339 2639


 

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