2023/10/13


今回ご紹介するところ

唐の船御嶽
久米天妃宮
真謝天后宮
首里天后宮


LEI読者の皆様、ハイサ~イ!

香港の天后廟を巡る日本人ことやんまです。天后廟への関心が止まらなくなり、いよいよ香港以外の天后廟まで巡るようになりました。この度、機会をいただいたので、外伝として香港以外の天后信仰を紹介してみようと思います。

今回やってきたのは香港から二時間半、地理的・歴史的にも中国と関係が深い沖縄です。そんな沖縄にも天后信仰が伝わっていることを知ったわたしは、その実態をこの目で確認するべく、朝7時発の香港エクスプレスに乗って眠たい目をこすりながら入国(帰国?)したのでした。日本人的には常夏のイメージが強い沖縄ですが、香港から行くとむしろ涼しくさえ感じます。なお、2023年10月現在、沖縄県には4つの天后廟がありました。

まずは、那覇市からバスに乗って約40分、八重瀬町という場所にある通称「唐の船御嶽」です。なんと御神体は不思議な形をした岩。

裏手にある遺跡公園を紹介するプレートに、この周辺がアワ石という石灰岩の産地だという記述がありました。この岩にあるたくさんの穴、侵食されやすい石灰岩の特徴がよく現れていますが、崩れることなく形が保たれている様はたしかに御神体向きかも。

残念ながら由縁を記したものは見当たらなかったものの、かつて中国の貿易船が沖合で難破し、故郷に無事帰れるよう媽祖像を安置したという昔話があるのだとか。太平洋戦争の最中に媽祖像が紛失してしまい、それからこのアワ石を祀ることにしたそうです。

次に訪れたのは久米天妃宮。この「天妃」は天后様の別称で、日本で比較的よく聞かれるものです。「久米」は今の那覇市久米のこと。ここは14世紀に福建省から琉球王国へ渡来した学者集団が集住した場所で、彼らの存在が琉球王国の発展に寄与したと言われています。そんな久米村人(くにんだんちゅ)が厚く信仰したのが天后だったそうで、なんと15世紀初頭に二つの天后廟が建立されました。いまは久米から少し離れた場所に他の神様と一緒に祀られていますが、沖縄の天后信仰の総本山として参拝者を迎えています。

香港でもしきりに見かけた”天上聖母”の文字を見ると、たしかにここは天后廟だと分かって嬉しくなりますね。

ちなみに、今の那覇市久米にはかつての天后廟の遺構として石門が残っており、那覇市の指定文化財に登録されています。その石門があるこの小学校、なんと名前が天妃小学校でした。天后信仰の歴史について勉強する授業があるのでしょうか、気になるところです。

「もしかして沖縄の天后廟は那覇市に集まっているのですか?」と聞きたくなった方もいるのではないでしょうか? 安心してください、3件目の天后廟は那覇から飛行機で一時間の離島、久米島です。ビーチには目もくれずに向かった天后廟はなかなか味のある佇まいでした。

集落の名前から真謝天后宮とも呼ばれているこちらの廟は1759年の創建。かつて中国王朝の庇護の下にあった琉球王国では、国王が変わるたびに冊封使と呼ばれる一団が大陸から派遣され儀式を行っていました。ある時、冊封使を乗せた船が真謝付近で遭難した際、島の人々が総出で彼らを救出し、那覇まで送り届け、無事に儀式を開くことができました。時の琉球国王はこれに深く感謝し、廟を建てて天后を祀るだけでなく、立派な装飾品や祭祀のための資金まで与えたのだそうです。

沖縄県の有形文化財に指定されているとあって由縁を記した石碑はあるものの、祭祀はすでに行われなくなり、小さな天后様が静かにそこにいるだけとなりました。それでもこの廟が真謝に住む人たちの誇りとして、この先も末長く残っていくことを切に願いたいです。

再び那覇市に戻って最後に訪れたのは首里天后宮です。しかし、調べて出てきた場所はマンションの一室。おそるおそる階段を上がっていくとドアの向こうで天后様が待っていました。

実はここ、台湾で天后信仰を知った男性が個人的に開設している廟でした。この部屋を使って台湾の言語や文化についてレクチャーをすることもあるそうです。そんな彼は何度も旅行するほど台湾が好きなのにコロナ禍で渡航が禁止されてしまい、その間に日本中の天后廟を巡ったのだそう。さらに、ホームページを開設して天后信仰を紹介するなど、わたしの何十倍もの熱量を持って活動されています。しかし、香港の天后廟はまだ訪れたことがないということで、ついつい時間を忘れて天后談義に花を咲かせてしまいました。

https://masosama.ti-da.net/

帰り際、沖縄の媽祖廟をすべて巡った証に達成証をいただきました。「久米島がネックなので一度の旅行で巡り切ろうとする人はほとんどいません」と、嬉しいような恥ずかしいようなコメントまでいただいて、沖縄を後にしました。

聞くところによると、日本と台湾の有志で、石垣島に媽祖廟を作ろうという動きがあるのだそうです。また沖縄を訪問することになりそうだなあ(笑)


やんま
2020年10月から出張で香港入り。仕事の傍らになんとなく始めた天后廟巡りにハマり、その魅力をSNSで発信するようになる。やんまは小学生時代のあだ名から。


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