2025/11/26
©︎Photo: Hong Kong LEI
香港故宮文化博物館とエジプトの最高古代委員会によって共同開催される「古代エジプトの真実:エジプト博物館の至宝」展は、香港で最大かつ最も包括的で、最長期間にわたる古代エジプトの宝物展示会です。今回の展示会は、7つの主要なエジプトの博物館から直接調達された250点の宝物から構成され、香港で大々的に展示するのは初めての試みです。貸出元には、カイロのエジプト博物館、フルガダ博物館、スエズ国立博物館、ルクソール古代エジプト美術館、ソハグ国立博物館、マトルーフ博物館、カフル・エル・シェイク博物館、サッカラ考古学遺跡が含まれています。また、香港故宮博物院及び香港中文大学の美術館の所蔵品も展示されます。
「古代エジプトの真実」展は、香港故宮文化博物館のギャラリー9で、2025年11月20日から2026年8月31日まで開催されます。
©︎Photo: Hong Kong LEI セヌワセト1世の巨大頭像(ラムセス2世によって奪われた)第12王朝(約紀元前1985年~1773年)カイロのエジプト博物館
古代エジプト文明は、アフリカ大陸の北東部に位置するナイル川の流域で、7000年以上前に始まりました。紀元前3000年頃の統一から「ピラミッド時代」とも呼ばれる古王国時代(約紀元前2686年~2160年頃、第3~第6王朝)を経て、ファラオの統治システムや太陽神などの神々が確立されました。古代エジプト文学を代表する古典が次々と生み出された中王国時代(約紀元前2034年~1650年頃、第11王朝から第12王朝頃)、そして新王国時代(約紀元前1550年~1069年頃、第18王朝から第20王朝頃)を通じて、文化と芸術は徐々に頂点に達しました。紀元前12世紀からギリシャ・ローマ時代(紀元前332年~紀元395年)にかけて、古代エジプト文明は地中海地域を含む周辺文明とのより深い交流と統合を続けました。
展示品には、像、スフィンクス碑文、金の装飾品、ミイラの棺、動物のミイラなどが含まれています。「ファラオの国」、「ツタンカーメンの世界」、「サッカラの秘密」、「古代エジプトと世界」という4つのテーマで構成され、ほぼ5000年にわたる古代エジプト文明の発展をたどり、この古代文明が栄えた時代の政治、芸術、日常生活、宗教的信念を探ります。また、サッカラからの最新の考古学的発見や古代エジプトと他の世界文明との活発な交流も紹介されています。
1)ファラオの国(エジプト王の国)
©︎Photo: Hong Kong LEI Shepensopdetの座像
古代エジプトのファラオ時代(約紀元前3000年~紀元前332年)には、約3000年にわたる王朝支配の中で繁栄した文明が育まれました。力強いファラオの記念碑的な像やスフィンクス碑文が、彼らの神聖な王権を象徴しています。古代エジプト人は自然への畏敬の念と、「冥界の王で死と復活の神オシリス」、「豊穣、母性、魔法を司る女神イシス」、「天空と王権の神でハヤブサの頭を持つホルス」の神々にまつわる神話からは、古代エジプトの信仰の概念を見て取ることができます。
© Hong Kong Palace Museum オシリスの復活 第26王朝(紀元前664年~525年)カイロのエジプト博物館
© Hong Kong Palace Museum
古代エジプト人の確固たる信念は永遠の来世(死後も続く生)であり、ここでは塗装された木製棺、葬送用のパピルス、呪物などの物品を通じてその信仰が描かれています。小さいサイズの棺にミイラを入れて、大きなサイズの棺を重ねて収納し、埋葬されました。
© Hong Kong Palace Museum 死体から取り出したそれぞれの臓器(心臓、肺、肝臓、胃、腸)を収納するカノポス壺。ミイラ化の際に内臓を守護する4柱の神々で作られている。
ミイラ化のプロセスは、40日から70日かかり、複数のステップが含まれていました。古代エジプト人は、肉体をミイラとして保存することによって死者の魂が蘇ることができると考えました。完全な体が復活のために不可欠であると信じ、そのため、ミイラ化技術と防腐処理を発展させました。その一環として、腐敗しやすい臓器—腸、肺、肝臓、胃—の除去と別々の処理が行われ、これらはカノポス壺に保管されました。この人の頭を持つカノポス壺(写真左)は、王アメンホテプ3世(在位約紀元前1390年~1352年)の義母ティユです。通常、カノポス壺は4つで1セットで、当時はすべての壺に人の頭の栓が付いていました。
その後、第19王朝になると、新たなスタイルが登場しました。(写真右から4つの壺)セットの各壺は天空と王権の神でハヤブサの頭を持つホルスの四人の息子(4柱の神々)を表し、内蔵は彼らによって守られていました。 falcon-headed(ハヤブサの頭を持つ)ケベセンウエフ(腸)、baboon-headed(ヒヒの頭を持つ)ハピ(肺)、human-headed(人の頭を持つ)イムセティ(肝臓)、およびjackal-headed(ジャッカルの頭を持つ)デュアムテフ(胃)です。
展示会では実物大のミイラを作る過程や、木製棺の収納方法などがビデオで紹介されています。
©︎Photo: Hong Kong LEI ピラミッド内の探索ビデオ
日常の物品は、古代エジプトの日常生活について教えてくれます。人々が何を食べ、どのように服を着て、どこに住み、どのように移動していたのかを学べ、古代エジプト社会の様々な社会階層も存在したことを知ることができます。
© The Supreme Council of Antiquities of the Arab Republic of Egypt ビールを醸造する二人の男性の像 第6王朝(約紀元前2345年~2181年)カイロのエジプト博物館
各階層で、特定の役割と責任を果たしてました。古代エジプトでは、富裕層から貧困層まで、すべての人々がパンとビールを基本的な食べ物と飲み物として消費していました。当時のビールはホップを使用せず、アルコール度数が低く、甘い味わいでした。
この像には、一人の男性が立ち上がり、もろみを大きなタンクに注いでいる様子が描かれています。ビールとパンは経済的な商品であり、両方とも賃金の支払いにも使用されました。エジプト人はそれらを生命と栄養の源として尊び、葬儀では、故人への供物としても捧げられました。このような像も作成され、来世でのパンとビールの提供が確保されるように故人と共に埋葬されました。
2)ツタンカーメンの世界
© Hong Kong Palace Museum
少年ファラオであるツタンカーメン(在位:約紀元前1336年~1327年)は、神秘に包まれています。彼の治世は後の支配者によって歴史から意図的に消され、彼の名前は3000年もの間忘れ去られていましたが、1922年に彼の墓が発見され、脚光を浴びました。他のファラオの墓と比較して規模は控えめですが、ツタンカーメンの墓はほぼ無傷の状態で見つかった数少ない墓の1つです。そこからは、象徴的な金のマスクを含む数千点の希少な宝物が出土しました。
© Hong Kong Palace Museum アクエンアテンの巨大像第18王朝(約紀元前1550年~1295年)カイロのエジプト博物館
ここに展示されている第18王朝末期の最後の直系王族ツタンカーメンやその家族を表す像は、この時代の政治的および宗教的な激動を反映しています。それでも同じ時代には、金細工、ファイアンス、家具、絵画、彫刻などの分野で芸術と工芸が栄え、前例のないピークに達しました。
ツタンカーメンの前代で父の、古代エジプト第18王朝の王アクエンアテンの巨大像は、王を頑強で英雄的に描く理想化から外れています。彼の特徴は過剰に引き伸ばされており、これにより前例のないファラオの描写が生まれました。これは単なる芸術的な目的ではなく、弱体化しつつある王権を再確立しようとする彼の決意を宣言する力強いビジュアル・マニフェストでもありました。
©︎Photo: Hong Kong LEI
ツタンカーメンは、第18王朝(約紀元前1550年~1295年)後期の複雑で激動の時代に生きていました。ツタンカーメンの巨大像は、もともと5メートル以上の高さがあり、一対として制作されました。その「双子」はシカゴ大学の古代文化研究所博物館で元の形に修復され、いくつかの元の色合いも再現されています。
© Hong Kong Palace Museum ツタンカーメンの巨大像(アイとホルエムヘブによって奪われたもの)第18王朝(約紀元前1550年~1295年)カイロのエジプト博物館
伝統的なファラオの像がシンメトリカルで、厳しい表情を持つのに対し、ツタンカーメンの巨大像は、より自然主義的なアプローチを通じて少年王の独自の仕草を捉えています。彼の顔は若々しく洗練されており、個々の特徴が明確に表れています。同時に、彼の姿勢、装飾、穏やかな表情は伝統的な慣習に従い、エジプトに伝統的な宗教と安定を復活させた指導者の姿を映し出しています。しかし、ツタンカーメンは即位時にはわずか約9歳であり、実際には名目上の王として治めていたと考えられています。実権は大宰相アイや最高司令官ホルエムヘブの手にあり、彼らはツタンカーメンの死後にファラオとなりました。
© Hong Kong Palace Museum プロジェクションマッピングに照らし出されたツタンカーメンの像
古代の時代には、その色彩は今日見るものよりも遥かに鮮やかでした。しかし、時が経つにつれて、像は多くの損失を受け、色あせてしまいました。展示会では、修復および考古学的記録を基に、マルチメディアインスタレーションとして、プロジェクションマッピング技術を用いて、像の元の姿を仮想的に再構築しています。写真を見比べてみると、より生き生きとしたツタンカーメンが見て取れて、古代エジプトの壮大なストーリーが身近に感じませんか?
3)サッカラの秘密
© Hong Kong Palace Museum
サッカラはナイル川下流西岸にある古代エジプトの王墓群で、「死者の町」として知られ、エジプトの現首都カイロの近くに位置しています。ここは、古代エジプトの最初の首都メンフィスの中心的な埋葬地です。約6キロメートルの長さと1.5キロメートルの幅を持ち、3王朝から13王朝(約紀元前2686年~1649年)までの王や女王の20以上のピラミッドが含まれており、エジプト最初のピラミッドであるジョセル王(在位約紀元前2686年~2667年)の階段ピラミッドもあります。
© Hong Kong Palace Museum
近年、サッカラでの考古学的作業は実を結び、塗装された人型棺などの重要な物品が多数発掘されています。これらの発見は、後期(紀元前664年~332年)の北エジプトにおける葬送慣行と宗教的信念を理解するために大きな意義があります。
© Hong Kong Palace Museum 子牛のミイラとカルトンナージュ プトレマイオス時代(紀元前332年~30年)カイロのエジプト博物館
古代エジプトでは動物の神々が数多く存在しました。多くの王族やエリートの墓のほかに、サッカラは寺院が点在する宗教的中心地でもあり、古代エジプトで最も広大な聖なる動物の死体安置所が存在し、数百万の動物ミイラが埋葬されています。
© Hong Kong Palace Museum カバ おそらく第13王朝(約紀元前1773年~1650年以降)カイロのエジプト博物館
カバは古代エジプトにおいて二重の象徴性を持っていました — 混沌と破壊的な力を具現化する一方で、保護と再生も表していました。古代エジプト人は、カバの像を墓に配置することで、その保護と再生の力を借りて、故人が冥界の危険を乗り越え、無事に来世に到達できるようにしました。一方で、カバの破壊的な力を恐れ、多くの像の脚は意図的に壊され、その潜在的な脅威を排除していました。
©︎Photo: Hong Kong LEI 古代エジプトで聖なる動物、ネコ神「バステト」
© The Supreme Council of Antiquities of the Arab Republic of Egypt バステトがシストラムを持つ像 後期(紀元前664年~332年)カイロのエジプト博物館
古代王朝初期、バステトは猛獣のライオンとして描かれる戦の女神でした。しかし中王国時代からは、彼女は穏やかな家猫に変わり、豊穣や家庭の保護と深く結びついた神へと進化しました。ここにあるバステトの像は彼女の後期の形を表しており、他の古代エジプトの女神像と比較して、より豪華に装飾されています。バステトは精巧な模様のドレスを着ており、右手には音楽と儀式に使われる楽器であるシストラムを持っています。左手には、太陽円盤と神の頭を装飾した儀式用の飾り「アイギス」を携えています。肘からは、いくつかの学者が子猫を入れるためのバスケットと考えているものがぶら下がっています。これらの要素は、バステトが家庭の守護者であること、また音楽、ダンス、美しさとの関係を示しています。
4)古代エジプトと世界
© Hong Kong Palace Museum
古代エジプト文明は、常に他の文明との交流を通じて発展し、豊かになってきました。特にギリシャ・ローマ時代(紀元前332年~紀元395年)には、古代エジプトと地中海地域との文化的交流が大いに増加しました。この時期の文化的統合は、母国のエジプト文明を豊かにするだけでなく、地中海地域全体に深い影響を与えました。古代中国とエジプトの物品の並置は、これら2つの偉大な古代文明が並行して栄えた壮大な成果を示しています。最後に、エジプトの長年にわたる考古学的歴史や、考古学や文化遺産の研究・保存における中国とエジプトの最近の協力についても学ぶことができます。
全体を通して、作品数も多く、ビデオやインタラクティブな展示なども楽しめるので、時間をゆっくり取ってまわりましょう。ちなみに香港故宮文化博物館を全てしっかり観覧しようとすると1〜2日はかかりそうです。
その他、楽しい催し物やイベントなどが開催されています。
公開ガイドツアー:ドーサー(ボランティア)によるエクスプレスハイライト無料ツアー
約45〜60分で、知識豊富なドーサーとともに「古代エジプトの秘密」展のハイライトを巡ることができます。
言語:広東語、普通話、英語での対応が可能です。
展覧会期間中(2025年11月20日~2026年8月31日)の毎日、ツアーを開催します。
時間の詳細はこちら
その他、学芸員による専門ツアーやグループツアーなどもあります。
子どもと家族プログラム
© Hong Kong Palace Museum
参加者はエジプトのピラミッド建築家の役割を担い、これらの古代の記念碑的構造物の進化を探求し、隠された部屋や神秘的な通路、さらなる古代の秘密を明らかにします!

© Hong Kong Palace Museum
このワークショップで参加者が得られること:
ピラミッドの歴史と建設について知ることができる。
建築の断面図作成とその目的について学び、断面モデルの構築を通じて3Dモデリングスキルを身につける。
エジプトのピラミッドをテーマにしたマーブルランのデザインを通じて想像力を広げる。
言語:広東語と英語(普通話サポートあり)。
イベントの詳細はこちら。
古代エジプト文字の解読コーナー
© Hong Kong Palace Museum
1階の公共エリアに設置された展示パネルとマルチメディアインスタレーションでは、エジプトの言語や文字、ロゼッタストーンの歴史的背景などが紹介されています。また、ツタンカーメンのヒエログリフ名を読む方法を示した短いビデオも表示されています。インタラクティブデバイスを通じて、観客は自分の名前をヒエログリフに変換し、古代エジプトの遠い文明と魅力的な方法でつながることができます。
© Hong Kong Palace Museum
タイムライン ―古代エジプトの王朝と歴史
© Hong Kong Palace Museum
このインスタレーションでは、古代エジプト文明の五千年にわたる発展を重要な歴史的および文化的イベントを通じてたどります。この年代記は、古王国における初期都市国家の台頭とピラミッド建設、中王国での再統一、新王国での帝国拡張、そして外国支配の下での最終的な衰退に至るまで、その循環的な進行を学ぶことができます。
「クリック・アンド・フリックス」AR体験
© Hong Kong Palace Museum
最新の「古代エジプトの秘密:エジプト博物館の宝物」からのキャラクターが、AR体験「クリック・アンド・フリックス」に正式に参加しました! HKPMパレスパルズのメンバーたちと共に、博物館内であなたをお待ちしています。
以下のQRコードを使って、あなたのモバイルデバイスで「クリック・アンド・フリックス」AR体験を起動してください。キャラクターたちがスクリーンから飛び出して、写真を撮る様子を楽しめます。また、隠れたキャラクターや解除を待っている金のマスクもお見逃しなく!

展示会を記念してたくさんの記念品やキュートなぬいぐるみなども販売されています。
お土産や記念品
©︎Photo: Hong Kong LEI
© Hong Kong Palace Museum カバのぬいぐるみ
© Hong Kong Palace Museum女神バステトのぬいぐるみ
© Hong Kong Palace Museum サイプライズボックスのキーチェインぬいぐるみ
箱の中に何が入っているかは開けてからわかります。(下の写真)
©︎Photo: Hong Kong LEI
© Hong Kong Palace Museum ホルスの四柱の神々のトートバック
© Hong Kong Palace Museum ピン
© Hong Kong Palace Museum ブックマーク
©︎Photo: Hong Kong LEI
香港故宮文化博物館
「古代エジプトの真実:エジプト博物館の至宝」展
特別展チケット:HK$190~
特別展「古代エジプトの真実:エジプト博物館の至宝」(ギャラリー9)およびすべてのテーマ別展示(ギャラリー1~7)へのアクセス。詳細はこちら
会期:2025年11月20日から2026年8月31日まで
詳細:Webサイト
©︎Photo: Hong Kong LEI
ギャラリー外にも展示品があります。窓の向こうには香港島のスカイラインが望めます。
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