2026/01/20

Instagram:@macao_guide
YouTube:MacauGuideTsubaki
聞き手:大西望
編集:野津山美久
〈目次〉
〈マカオ在住の日本人ガイド〉
〈マカオで得たライフスタイル〉
〈手を挙げる勇気〉
〈椿さんに3つの質問〉
〈マカオ在住の日本人ガイド〉
香港から1時間ほどで行くことができ、異国情緒を味わえるマカオ。弊誌では2年前に「香港近場旅行」としてマカオ特集を組んだ。その特集は今でもアクセス数が多いのだが、そのロングセラー記事を監修したのが、マカオ政府公認ガイドの椿さんだ。マカオ在住15年、観光ガイド歴10年以上、自身のYouTubeでは、マカオの知られざる歴史や都市伝説を始め、世界遺産、最新グルメ、生活情報など多面的な魅力を紹介。歩きながらでもそれらのマカオ情報を淀みなく説明できる椿さんは、まさしく‶歩くマカオ博士″だ。
世界遺産の聖ポール天主堂跡前でガイドをする椿さん
「マカオの観光名所なら目を瞑ってでもガイドできます(笑)。でも、お客様はマカオに来るのが一生に一度かもしれないし、出会いも一期一会。できるだけマカオの良い所を見てもらい、おいしいものを食べてもらって、楽しい思い出が残ればいいなと、いつも新鮮な気持ちでガイドをしています」
終始笑顔で語る椿さん。その軽やかな語り口調はガイドで培われたものかと思いきや、人生のフットワークも軽やかだった。
椿さんが初めてマカオを訪れたのは、マカオでの仕事が決まってからだという。東京の貿易会社を辞め、次の職を考えていた時、知人がマカオにある日系旅行会社の求人情報を教えてくれた。当時マカオは、「歴史市街地区」が世界文化遺産に登録されて5年目で、日本人観光客の増加にともない、マカオでの専属ガイドを募集していたのだ。
就職氷河期の日本の閉塞感から解き放たれたいという思いがあった椿さんは求人に応募。面接の場で即採用となり、マカオへ行くことになった。「一回も行ったことのない所に住むのは大丈夫?」と心配する声もあったが、椿さんはためらうことなく移住を決めたという。
〈マカオで得たライフスタイル〉
「マカオといえばカジノのイメージでしたが、実際は長崎に似ていました。坂が多くて、天主堂があって、中華街があって。ポルトガルとゆかりがあるという共通点もあります。人ものんびりして優しい。わたしは福岡出身なので九州人として水が合ったのかな」と椿さん。マカオ生活は、初めから恵まれていた。
ルームシェアをした会社同期の日本人は、大学時代を上海と香港で過ごし中国語がペラペラ。椿さんの初海外生活を一からサポートしてくれた。さらに、マカオに来て1ヶ月半後には、のちの夫となるマカオ人男性と知り合った。結婚したいなと思える人の存在が、マカオに長くいる理由にもなった。
マカオに来た当初の椿さん。2010年、マカオタワー58階展望台にて
仕事では、最初の半年間は内勤をしながら観光ガイド養成校に通い、試験を受けてマカオ政府公認ガイドの資格を取得。マカオに来てから学んだ日本とマカオの歴史的な関わりなどを観光案内の中で伝えると、「ガイドを頼んで良かった」と喜ばれ、人の役に立てていると実感できて嬉しかったという。
5年ほど会社の専属ガイドをしたが、結婚でマカオIDを取得したことや妊娠したこともあり独立を決意。独立後は、地道に発信しているSNSを通してガイドの依頼が来るようになった。子育てを優先しながら、ガイド以外の時間に動画制作をしたり日本語教師の資格を活かして日本語を教えたりもしている。
聖ポール天主堂跡近くの「恋愛通り」は、パステルカラーの建物が並ぶ小路で、椿さんのオススメスポット
マカオはカジノ収入による政府補助も充実しており、「ワーク・ライフ・バランスは理想的なゆるさ」だと椿さんは語る。
「マカオはリゾート地なので、香港のようなスピードは求められないし、自分の裁量で仕事ができます。日本では当たり前の‶日本語で丁寧な接客をする″ことが、ここでは価値になるんです」
もちろん、こうしたゆとりあるライフスタイルは、生活に不可欠な広東語習得や日本とは異なる文化、常識などを身に付けてきた、椿さんの日々の積み重ねがあってこそだ。
〈手を挙げる勇気〉
昨年10月、マカオで世界中のトップクリエイターが集う「クリエイターウィーク・マカオ2025」という大きなイベントが行われた。マカオは、TikTok、YouTube、Instagramや中国版インスタと称される小紅書(RED)など多くのSNSが利用でき、世界のクリエイターが垣根なしに交流できる場所だ。
イベントの中には、地元アンバサダーがクリエイターを案内し、マカオを世界に発信するという企画があった。そのアンバサダーの公募が8月にあり、椿さんは、「絶対につかまないといけないチャンスが来た」と思ったという。
「コロナ禍から3年ほど動画制作をしているので腕試しのいい機会だし、日本からクリエイターがいらっしゃることも分かっていたので、日本人の存在感をアピールできると思いました」
応募条件は、マカオID保持者であることと、「マカオでの一日」というテーマで英語の動画を制作することだった。動画のテーマはガイドとして大得意分野。結果、椿さんは20人のアンバサダーの中に選ばれた。日本人は椿さんただ1人。
「クリエイターウィーク・マカオ2025」オープニングパーティーにて
YouTuberのいっせいさんとペアで3日間、マカオを巡った
椿さんが案内したのは、登録者数7000万人超えの日本トップYouTuber、いっせいさん。トップクリエイターがマカオをどう撮影するのかを間近で見て刺激を受けた。また、いっせいさんの「チャレンジの数が大事です」という言葉も印象に残ったという。
「アンバサダーに挑戦して貴重な経験ができました。マカオは小さいので、手を挙げる勇気があればチャンスをつかめる可能性が高い。だから、マカオでのチャレンジはやりがいがあるんです」
何年住んでもチャレンジをした分だけ、心躍る体験と見たことのない景色へと導いてくれる街。そんなマカオの奥深さを知る椿さんは、ガイドとしてその魅力を多くの人に伝え続けている。
〈椿さんに3つの質問〉
Q1 マカオから見た香港のイメージは?
香港とマカオはよく並列で語られることがありますが、歴史的な成り立ちも違えば文化も違うので面白いなと思います。例えるなら従姉妹ですね。親も家も違うけど、近くにいてずっと情報は入ってくる関係。香港は家がお金持ちでバリキャリの2歳上の従姉、みたいな。マカオは「お姉さんに憧れるけど、わたしはあんな生き方は無理だわ」と思ってる、みたいなイメージです(笑)。
Q2 マカオ旅行は何泊あれば楽しめますか?
二泊あればゆっくり楽しめると思います。一日は世界遺産を見て、一日はコタイ地区やタイパ島、コロアン島に行くといいですね。ジャイアント・パンダが無料で見られる施設もマカオにはありますよ。ただ、マカオは交通が不便でタクシーも英語が通じないことが多いです。ガイドは、目的地に一番効率よく行ける方法を知っているので、マカオ観光の際はガイドをつけることをおすすめします。
セッパイワン公園内、ジャイアント・パンダ館のパンダ。希少動物館ではレッサーパンダなども見られる
Q3 趣味は何ですか?
踊ることが昔から好きです。夫がDJをするイベントに行って踊ったりもします。いま推している埼玉出身のラッパーのライブがあれば日本に行きますし、福岡で行われている夏のレゲエフェスも友達と集まって一日中楽しんだりします。
Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。
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