2022/10/21

家族や親戚、親しい友人から離れた香港という土地で生活する上で必須の助っ人、我が家にとって、それは間違いなく「夫」……ではなく、「ヘルパーさん」です(夫よ、すまん)。もう、「遠くの家族より近くのアンティー」と公言できるほどに、その存在は無くてはならないものとなっています。
一方で、「ヘルパーさんとうまく関係性が築けない」という話もよく耳にします。我が家には2名のヘルパーさんが居ることもあり、「うまく協力するコツってあるの?」と聞かれることもあります。そこで、今回は、言語や文化が違ったとしても、人との関係性を良好に保つ為のヒント、「ストローク」という心理学の理論についてお伝えします。

 

普段、身体の健康を維持するために、わたしたちは食生活を心がけ、良質な栄養を体に蓄えようとします。心も同じで、良質な栄養は心を豊かにします。では、心にとっての栄養とは何でしょうか。それが、「ストローク」と呼ばれるものです。
ストロークは、人との触れ合いによって得られる、物理的、精神的、言語的な刺激のことを指します。生活する中で、生じている人とのやり取りの全てがストロークなのです。例えば、挨拶やハグ、笑顔や感謝の言葉など、受け取ると心が温かくなるようなストロークは、「ポジティブストローク」と呼ばれます。逆に、怒った顔や叱責など、相手の心が悲しくなるようなストロークは「ネガティブストローク」と呼ばれます。

 

当然ながら、ポジティブストロークは、その人の存在や価値を認める言葉かけや態度、働きかけのことですので、相手に幸福感と喜びを与え、受け取った人は自らの存在に意味を感じることができます。そして、ポジティブストロークのすごい点は、他者に対して、多く与えれば与えるほど、より多くのポジティブストロークを他者から受けとることができる点です。また、受け取った人にとっても、ポジティブストロークが溜まり、心に充分な栄養が行き届くと、他者を受容できるようになり、ポジティブストロークを与えることができる、という好循環が生まれます。

 

まず、相手と友好な関係を築きたいと思うのであれば、相手に対する関心と興味、ある程度の信頼は基本的な土台として必要です。わたしも、初めてヘルパーさんを雇う際、色々なサイトを見てはビビり、周りからは「甘やかしてはいけない」、「舐められるな」などと言われたものです。日本では、外国人ヘルパーさんはまだ根付いていませんから、不信感を抱くのは致し方ないのかもしれませんが、心配や悲しい気持ちになったのも事実。
しかし、実際に一緒に生活し、彼女たちがどんな場所から来たか、どんな家族が居るのか、どんな食べ物が好きなのか等、話を聞くと、嬉しそうに話をしてくれます。よほどの理由がない限り、関心を向けられて嫌な人間はいません。また、顔を見たら笑顔で挨拶、感謝の気持ちも折々によく言葉にするようにしています。すると、相手も食べ物やお菓子を分けてくれたり、部屋の使い方の改善点を提案してくれたり、モチベーションが上がるのがよく分かります。そして、雇用主との関係が良好で、ハッピーな気持ちで働いているヘルパーさんの周りには、同じようなヘルパーさんが集まってきます。類友現象ですね。
好循環を手に入れるには、自分からポジティブストロークを生み出すこと。言葉が通じなくても、「スマイル」と「サンキュー」は万国共通、最強の武器です。もちろん、小さな問題が全く起きないわけではありませんが、今のところ大きなトラブルもなく、良い関係を保てていると信じています。

 

このストローク理論は、職場での人間関係や親子関係においても活用できます。例えば、「落ち込んでいる時にそっと肩に手を置いてくれた」というような親の行動や、「テストの点数が悪かったのは残念だったけど、頑張ったのは知ってるよ」といった声かけは、子どもに、自分は存在を認めてもらっている、完璧な人間ではなくてもこのままで大丈夫なんだというメッセージを与えます。幼少期にこのようなポジティブストロークを与えられる環境に恵まれていると、自分を受け入れ認めてくれている人がいると感じ、自分に自信がつき、自立心が芽生えやすいといわれています。また、ポジティブストロークを伝える際は、「成績が上がったからあなたは良い子」というような、条件付きではなく、「勉強ができてもできなくても、あなたのことを大切に思っているよ」という無条件のポジティブストロークの方がより効果があります。
職場でも同じです。毎朝、笑顔で挨拶をする、相手が話している際に相槌を打つ、ほんの些細なことが、ポジティブストロークとして相手に伝わり、あなたに返ってきます。

 

日本人同士でも、人間関係を円滑に保つのは非常に難しいこと、ましてや異文化で生まれ育った人間同士が一つ屋根の下に住むのは、なかなかに難易度の高いということは、想像に難くありません。人間関係を良好に保つヒント、「なんだ、そんな簡単なことか」と思われた方もいると思いますが、常に心に栄養を蓄えておくことって、やはり人間なので難しいものです。
もし、今、心の元気がなくなっているなら、是非、カウンセリングで自己肯定感を上げ、周りにポジティブストロークで働きかけられる自分になってみませんか。



河合 まり絵

臨床心理士。日本ではスクールカウンセラーとして、不登校児童や別室登校児童、発達に偏りのある児童への心理的サポートや、精神科クリニックで、パニック障害、PTSD、うつ病、摂食障害などの個別カウンセリングを実施。リワーク外来では、精神疾患などで休職中の患者に対し集団療法を、また、復職後の企業内フォローアップ・カウンセリングを実施。刑務所内では、グループ矯正教育をするなど、教育、医療、産業、司法の分野で臨床経験を積む。香港に移住してからは、3児の子育てに追われるも、縁あって精神科クリニックに復職。

 

OT & P Healthcare/ Mind WorX Clinic
MindWorXはOT and P Healthcareが運営する精神科専門のクリニックです。
中環駅(セントラル)から徒歩2分の場所に位置しており、簡単な日本語を話せる医師と、日本人の臨床心理士が在籍しておりますので、薬の処方と共にカウンセリングを並行して受けることが可能です。投薬はしたくないけれど、カウンセリングを受けたいという方もご相談下さい。

以下のようなことでお困りの方は、是非、一度、ご相談下さい。
・夜、なかなか眠りにつけない、または、朝、早くに目が覚めてしまいすっきりしない
・不安や心配な気持ちがいつも頭を離れない
・過度に食べ過ぎてしまう、または、食欲がない
・子育てに疲れている
・コロナ禍でストレスが溜まっている
・夫や妻、パートナーや他者との関係に悩んでいる など

初回予約の際に日本語でのサポートが必要な方は、marie.kawai@otandp.comにemail を頂ければ、日本語での対応が可能です。

Mind WorX Clinic
OT&P – Internationally Accredited Medical Clinics in Hong Kong (otandp.com)
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