2025/02/21
2024年の会場外観
香港の3月はアート月間。香港の街がアート一色に染まります!
今回ご紹介するアートセントラルは、アートはちょっと難しいと思われる方にこそぜひ行って、ただただ楽しんでいただきたい展示会です。アートセントラルはこの時期おそらく最も活気があり、パワフルでユニークな展示会です。香港在住の人はもちろん、観光で訪れる人は、この期間をめがけて来港されることをおすすめします!そしてぜひ子どもを連れて訪れてみてください。
2024年の会場内観
アート・セントラルは今年で第10回目を迎えます。開催日は2025年3月26日から30日まで。 これまで同様、定評あるギャラリーや著名アーティストの出展が見られるほか、若手ギャラリーや、多様なアート作品やプログラムも紹介し、新世代の才能も発掘します。今回の見所は、1970年以前に生まれたアーティストの作品にスポットライトを当てる「『Legend』レジェンド」という特集です。
『Legend』では、キュレーターのエノク・チェン氏のディレクションのもと、1970年以前に生まれたアーティストの作品にスポットを当て、それぞれのギャラリーのブース内に専用スペースを設け、過去から現在までのアート制作のつながりを探ります。『Legend』には、アジア太平洋地域の著名で影響力のある6人のアーティストの作品が選ばれています。日本からは靉嘔(Ay-O)作品と細江英公作品が紹介されます。
靉嘔(Ay-O)作品
Image: Ay-O, Rainbow Man and Woman, 2008, acrylic and mixed media on canvas, 162.2 x 130.3 cm. Courtesy of the artist and Whitestone Gallery
虹色の作品で有名な靉嘔(Ay-O)(1931年茨城県生まれ)は、ヨーコ・オノとは同世代のアーティストで、戦後日本で最も著名なアーティストの1人です。
Ay-O. Courtesy of the artist and Whitestone Gallery
靉嘔は国際的なフルクサス芸術運動の中心的存在として、芸術は日常生活と深く結びついていることを提唱しました。1966年のヴェネチア・ビエンナーレでの日本代表は、彼のキャリアの重要な節目となり、その後の 「虹のアーティスト 」として名を馳せました。靉嘔の作品は、従来の模様の代わりに虹の色彩を取り入れることで、森羅万象の真髄を表現し、伝統的な絵画の概念的枠組みを超越しています。環境問題や社会的なメッセージを扱うことも多く、これが国際的な観客の共感を呼んでいるとも言われています。可視光スペクトルにこだわり、色を選ぶというアーティスト個人の趣味趣向からの開放に挑戦しています。見る者に、より豊かな感覚や感情を誘い、鮮やかな視覚的刺激によって知覚を刺激します。
靉嘔の作品は、MoMAや東京都現代美術館をはじめとする世界的に有名な美術館に収蔵されています。M+で開催された特別展「Ay-O: Hong Hong (2024)」では、彼の作品が紹介され、アジアの視覚文化を形成する上で極めて重要な役割を担っていることが強調されました。
細江英公作品
Image: Eikoh Hosoe, Rose Penalty, 1961, gelatin silver print, 139 x 94.5 cm. Courtesy of see+ Gallery
前衛的でシュールなイメージで知られる日本の写真家・映像作家の草分け的存在、細江英公(1933年米沢生まれ、2024年東京没)
Eikoh Hosoe. Courtesy of see+ Gallery
細江英公は戦後の日本写真界を代表する人物です。従来写真の伝統的なドキュメンタリーという制約から解き放ち、強力な芸術表現へ高め、写真というあり方を根本から変えました。彼の代表作のモノクロ写真は、死、エロティシズム、人間心理をテーマにしたシンプルなイメージを、深遠な哲学的表現に昇華させました。アーティストとして、また文化的な影響者としても活動し、1968年に西洋の代表的な写真家を日本の観客に紹介する展覧会を企画したり、森山大道のような新進気鋭の才能を指導したりすることで、日本の写真を形成する上で重要な役割を果たしました。
その他のアーティスト
Emily Kam Kngwarray, Amekameke – Sacred Place, 1994, synthetic polymer paint on canvas, 96 x 111 cm. Courtesy of Rebecca Hossack Art Gallery
○ エミリー・カム・クンワレイ(Emily Kam Kngwarray・1910年頃、ノーザン・テリトリー生まれ、1996年アリス・スプリングス没)
ユートピア・コミュニティ出身の著名なオーストラリア人のアボリジニ・アーティスト。70 年代後半から多作な絵画活動を開始。2025年7月にテート・モダン美術館で個展を開催予定
Lee In Seob, Resonance of Time, 2025, mixed media on canvas (inc. acrylic, ash, charcoal), 131 x 163 cm, motion. Courtesy of the artist and Suppoment Gallery
○リー・イン・ソブ( Lee In Seob・1952年釜山生まれ)
江原道・城箭にあるアトリエの豊かな自然からインスピレーションを 得る著名な現代美術家
Dean-E Mei, Untitled, 2014, leather shoe and rubber, dimensions variable. Courtesy of the artist and Astar Gallery
○ ディーン E メイ(Dean-E Mei ・1954年台北生まれ)
ミクストメディアのインスタレーションや、アイデンティティと政治的イデオロギーのテーマを探求するための革新的なオブジェの使ることで知られる、前衛芸術の第一人者。
May Fung, She Said Why Me, 2016, single-channel digital video (colour, sound), 9 min, ©May Fung
○ メイ・フォン(May Fung ・1952年香港生まれ)
影響力のあるビデオやメディアアートで知られる香港の先駆的なアーティストで、ニューメディア・アーティストが運営する集団「ビデオテージ」を共同設立しました。革新的な作品や新進アーティストの支援活動を通じて、美術教育やコミュニティ活動に多大な影響を与えました。
「『Duo Project』デュオ・プロジェクト」
アーティスト同士がブースを共有し、キュレーター同士のつながりを促進する「『Duo Project』デュオ・プロジェクト」特集も開催されます。デュオ・プロジェクトとソロ・プレゼンテーションがアートセントラルで紹介されます。
特に注目されるのはー
リガのCUT ARTによるアンドリス・エグリーティスとディミトリ・コシレのデュオ・プロジェクトで、両アーティストのマテリアル主導の抽象的手法が融合しています。
ソウルのギャラリー・ルアン&カンパニーでは、チェ・ウンジョンとバン・スヨンの並置作品が展示されます。
東京のMiakiギャラリーでは、コンセプチュアルな巨匠松浦圭介の「resonance」と「jiba」シリーズが香港で初めて個展として紹介されます。
Petaling JayaのCore Contemporary ArtによるPo Oi (Fairuz) Paisanは、ウッドベースのファイバーグラス彫刻シリーズを発表し、ロンドンのCube GalleryではMyung Nam Anが100点のセラミック彫刻コレクションを展示します。
Myung Nam An, Eye Series, ceramics on display, 2020, porcelain. Courtesy of the artist and Cube Gallery
NEORセクション
今年で2年目を迎えるNEORは、新人アーティストや未発掘のアーティストを紹介する場となっており、今回はアジア、ヨーロッパ、アメリカから選ばれた15のギャラリーが、新たな才能を披露します。
日本からはMJK Gallery (2022年設立、東京)が出展します。
Shinduk Kang, Still Life, 2025, lenticular, 150 x 90 cm. Courtesy of the artist and Galerie Pici
ギャラリーのハイライト・セクション
アートセントラルの2025年セントラル・ギャラリー部門の主なギャラリーのハイライトは以下の通り。
- Avocado Art Lab(台北): 初出展し、沈昭良、周慶輝、鍾孟宏、羅晟文の4人の国際的に評価された現代写真家の重要な作品を展示します。
- Bonian Space(北京):李舜、許茂雄、柯家俊などの新進気鋭の画家の作品を紹介し、李昶と楊哲による実験的なマルチメディアプロジェクトも展開します。
- Cospace(上海): 複数の媒体で活動する5人の中国人アーティスト、李淜、肖敏、姚逍遙、 謝艾格、楊小健の作品を展示します。
- Gallery Claire Corcia(パリ): フランス、イタリア、アルゼンチンのアーティストによる現代ヨーロッパの具象作品を紹介し、セルヒオ・モスコナ、エレーヌ・デュクロー、ジュリアン・カロ、ワベなどが含まれます。
- Karin Weber Gallery(香港): 香港をテーマにした作品を特集し、梁嘉賢や洪忠傑などの作品が展示されます。
- Shunpudo Gallery(東京): 戦後から現代に至る日本のアートを紹介し、渡辺恂三、五木田智央、中村一美
の珍しい作品が展示されます。 - The Gallery by SOIL(香港): 日本と中国からの7人の現代漆アーティストの作品を紹介し、五月女晴佳、姚邦亮(Bangliang Yao)、伊能一三、石宇光(Yuguang Shi)などが含まれます。
Chou Ching Hui, Animal Farm No.5, 2014, inkjet print, 127.2 x 161.5 cm. Courtesy of the artist and Avocado Art Lab
チケットの購入はこちら
開催日時
3月25 日(火)プレビュー (招待)
3月26日(水)12:00-17:00
ナイトセントラル 17:00-21:00
3月27日(木)12:00-19:00
3月28日(金)12:00-19:00
3月29日(土) 11:00-19:00
3月30日(日) 11:00-17:00
会場:Central Harbourfront Hong Kong, 9 Lung Wo Road
www.artcentralhongkong.com
Julien Calot, The Coaties Meal Daydreaming Series, 2022-2023, acrylic on canvas, 62 x 45 cm. Courtesy of the artist and Gallery Claire Corcia
Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。
コメントをありがとうございます。コメントは承認審査後に閲覧可能になります。少々お待ちください