2022/04/09

你呢排點啊? 「春分」から十五日目となる清明節を迎え、本格的な夏到来前の短い春が今年も駆け足でやって来ました。一年で最も寒くなる旧正月の時期は過ぎてしまいましたが、今日はその旧正月にも関係する香港の紙幣にまつわるお話をしたいと思います。

紙幣を発行している香港の3つの銀行の本店建物柄シリーズ(500ドル札)。レアキャラのスタンダードチャータード銀行のお札はお財布の中から探し出すのが大変でした(!)。絵柄は異なりますが金種別に色は統一されています。

さて、旧正月前の恒例行事といえば、日本のお年玉に当たる「利是」を配るための新札交換。香港に来て間もない昨年は勝手がわからず、見よう見まねで比較的新しい紙幣をかき集めて乗り切りましたが、二度目の旧正月ともなった今年は万全の態勢で臨むべく、わたしは銀行での新札交換にチャレンジすることにしました。

香港には1,000ドル、500ドル、100ドル、50ドル、20ドル、10ドル、6つの紙幣が流通しています。10ドル札と各種硬貨は日本と同様、政府が発行していますが、それ以外の紙幣については3つの銀行(香港上海滙豐銀行(HSBC)、中國銀行、渣打銀行(スタンダードチャータード))から発行されています。金額的に最も多く市中に出回っているのはHSBCの紙幣で56%、続いて中國銀行(33.9%)、スタンダードチャータード銀行(10.1%)が続きます(注1)。各銀行の紙幣が占める流通割合は(年々、数字は変化していますが)6割、3割、1割と概ね一定の割合です。日本では再来年2024年を目途に紙幣のデザインが一新されるようですが、ここ香港の紙幣は発行する銀行や発行年によって絵柄のヴァリエーションも様々。また、キャッシュレス決済が進む一方で、紙幣の流通金額はこの10年、2,267億ドル(2010年)から5,595億ドル(2020年)と2倍以上に達しており、物価の上昇分を超える右肩上がりの上昇を続けています(注2、注3、注4)。

2020年末時点で流通する銀行券(=紙幣発行銀行が発行する紙幣)の総量は 5,595億ドルで、対前年比8.3%の増加となりました。一方、2020年の消費者物価指数(CPI)は対前年比0.3%の増加でした。

いざ、新札交換へ。旧正月が近付くと長い行列もできると聞いていた銀行の窓口ですが、訪れた時間が早かったせいかさほど込み合ってはおらず、わたしはほっとして人々の列に加わりました。「$20×50枚、$50×20枚、$100×20枚」走り書きのメモを携え、似たような人は居ないか周囲をきょろきょろしていたら、ピンクの紙を配り歩いている眼鏡のお兄さんを発見。「1枚もらえますか?」片手をあげて合図をすると、わたしの黄色い付箋の数字を覗き込んだ行員さん。さらさらっと表に数字を代筆して、この紙を持って順番を待つよう指示されました。ふむふむ、枚数じゃなくて金種別の両替希望金額を書き込むのが正解だったのか。紙帯で巻かれた分厚い札束を何束も封筒に突っ込んでいる隣の窓口のおじいさんを「Wow!」横目でチラ見しているうちに、総額、厚さ1センチにも満たないわたしの新札交換はあっさり終了。自分が香港の風景にまた少し溶け込めたような気がして、出口でもらった金魚柄の利是封を手に、足取りも軽くわたしは帰途についたのでした。

新札交換の初回記念に窓口提出用のメモをパチリ。A4の8分の1サイズの小さな紙でした。(近隣のHSBC支店にて撮影)

新札への交換。過去のニュース記事を辿ってみると、各行とも、例年、旧正月前の2週間をサービス実施期間としているようで、今年は1月13日~31日が交換対象期間に設定されていました(2022年の農曆新年初一は2月1日)。両替態勢を強化するため、サービス開始初日から3日間は通常より1時間早い午前8時を開店時間にしたり、新札の両替専用カウンターを設置したり。両替時間の短縮を図るため、総額3,000ドル(20ドル新札100枚+50ドル新札20枚)の「新鈔標準裝(新札スタンダードパック)」が販売されたり。利是の準備は、香港、年に一度の大イベント。そして最も「利是」需要が多いと推測される20ドル札。金額にすると流通紙幣総額の3.3%に過ぎない20ドル札ですが、なんと、枚数にしてみると35.4%(注5)。流通紙幣のおよそ3枚に1枚が20ドル札だということを知ってわたしはビックリしました!試しにお財布を開いてみてください。皆さんのお手元の20ドル札の割合、何パーセントになるでしょうか?

20ドル札(35.4%)に次いで多いのは500ドル札(17.5%)、100ドル札(16.4%)の順でした。自分の肌感覚としても、なんとなくそんな気がする! 因みに10年前(2010年)に最も流通していたお札も20ドル札(34.5%)。次いで10ドル札(22.0%)、100ドル札(16.8%)が続き、2020年は20ドル札に次いで多かった500ドル札は9.2%に止まっています。

旧正月前に街に出没する利是封屋さん。縁起が良さそうな様々な赤い封筒が揃います。(銅鑼湾にて撮影)

家庭教師の先生やお手伝いさん、会社の後輩に100ドルずつ、息子たちのお友達たちに50ドルずつ、管理事務所のおじさん、お掃除のおばさん、スーパーのレジの店員さん、行きつけの近所のレストランの店員さんたちには20ドルずつ。今年の旧正月は準備万端の利是を、これまた昨年より板についた「恭喜發財!」の広東語で配って回りましたが、利是を渡す時期とされている元旦から2週間経った香港はパンデミックによる事態の深刻化で、生活に不自由な時期がしばらく続きました。

飲食店内の食事は18時まで、ロックダウンの噂でスーパーの棚の食料品や日用品は品薄となり、「スタッフに感染者が出ました」という掲示が窓に貼られた多くの店舗がディープクリーニングで臨時休業。最短でも1週間以上先の配達日しか指定できないネット通販。まさに旧正月に20ドルの利是を配った人々、エッセンシャルワーカーと呼ばれる方々に私たちの日常生活は支えられているのだということを改めて痛感させられたこの1ヵ月間半。もしもの発熱に備えて配達を頼んでいた飲料を20時過ぎに届けてくれた配達員さん。明日で良かったのに……、彼が自宅に帰宅できるのはいったい何時になるんだろうか……。来年の旧正月からは宅配のお兄さんにも利是を渡さなきゃ。その日、わたしは心にそう決めて、幼い子どもたちを抱えて過ごす長い夜の不安が少し和らぐのを感じたのでした。

キャセイパシフィック航空の古い制服を再利用した珍しい利是封。パッケージの裏側には”Handmade with love and care”の文字。以前、機内販売で購入したものですが、現在、購入可能かどうかは不明です(早く飛行機に乗りたい……)。

電子決済の普及が急速に進む香港。ここ1~2年、クレジットカードやオクトパスカードはもとより、レストランでの友人との会食代や、子どもたちの学校の先生へのプレゼント代など、現金を介さず、PaymeやFPSで精算を行う場面が増えてきたように感じます。携帯で利是をやり取りする時代も、遠くない将来、やって来るのかもしれません。でも、やっぱり、赤い封筒に包まれた利是を旧正月に配るという慣習は、いつも面とは向かって伝えられない気持ちを手渡しで伝えるきっかけになるような気がして、この姿のままずっと続いて欲しい香港の風景のひとつだと、そう考えています。

Emi in HK。多謝收睇。下次見!

 


【出典】
※注1…二零二零年年報 貨幣穩定 (香港金融管理局)
https://www.hkma.gov.hk/media/chi/publications-and-research/annual-report/2020/C13_Monetary_Stability.pdf

※注2…二零一零年年報 貨幣穩定 (香港金融管理局)
https://www.hkma.gov.hk/media/chi/publications-and-research/annual-report/2010/09_monetary_stability.pdf

※注3…注1に同じ

※注4…香港統計月刊(2022年3月)消費物價指數及其在2012年至2021年間的變動情況(香港特別行政區政府, 政府統計處)
https://www.censtatd.gov.hk/en/data/stat_report/product/FA100025/att/B72203FA2022XXXXB0100.pdf

※注5…注1に同じ


Emi
映像プロダクション会社勤務。大学院修了後、日本・東京商工会議所にて、中小企業の資金調達支援から政策立案時の省庁との折衝まで多岐にわたる業務に従事。
15年半の勤務を経て2019年、夫の仕事の都合により来港。2020年から現職。夢は日本と香港の合作映画の製作に関わること。気分転換は25年振りに再開したピアノ。インター校に通う7歳、4歳、男児2人の母。

Twitter   @emi_m_wang
E-mail  emiinhkg@gmail.com

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