2023/03/12

你呢排點啊? 日本では、ここのところ、食品やエネルギー関連を中心に、値上げのニュースが連日のように報道されています。平地が狭く資源の少ない香港は、日本以上に食料自給率やエネルギー自給率が低く、生活必需品の供給は他国に頼っているのが実情です(農産物に至っては自給率1%だとか!)。
今晩の我が家のメインディッシュの麻婆茄子の材料も、タイ産の豚挽肉、日本産の茄子に、オランダ産のパプリカ。調味料や片栗粉代わりのコーンスターチは中国産で、付け合わせのスナップエンドウとプチトマトはケニア産とチュニジア産。テーブルの上で世界地図が描けそうです。

近隣スーパーの野菜コーナー。この日、香港生産Product of Hong Kongの表示があったのはマッシュルームのみ。

主要国が毎月発表している消費者物価指数(Consumer Price Index、略:CPI)。この数字は、一般家庭向けの商品やサービスの価格水準を測定し、何がどれだけ値上がり(または値下がり)したか、経年で変化を追いたいときに参考とされる数値です。香港では約3,500の小売店(スーパー、街市や屋台、デパート、ファッションストアなど)やサービス施設(映画館、病院など)における価格が月次で収集され、品目別に分析・発表されています(注1)。
支出は主に“消費”と“投資”に分類されますが、ニュースとしては“投資”という側面から語られることの多い金融センター香港。今日はちょっと視点を変えて、最新のCPIを手掛かりに、“消費”の側面から生活者目線で香港を眺め、世界に思いを巡らせてみようと思います。

実地調査によって収集された40,000以上に及ぶ商品・サービスの価格が、食品、住宅、電気・ガス・水道、酒・煙草、衣類・履物、耐久財、雑貨・日用品、輸送、その他サービス、全88品目の値に反映されます。

自宅近くのスーパーに買物に行くと、必ず立ち寄る「清貨CLEARANCE」コーナー。値引きシールの貼られた賞味期限や使用期限の近い商品が無造作に置かれた隅っこの棚。馴染みある日本メーカーのお菓子やレトルト食品が激安価格となって奥に埋もれていたり、外側のパッケージがダメージを受けただけの文房具や台所用品が並んでいたり、薄さ0.01ミリのあの商品が唐突に紛れ込んでいたりと、お宝探し的に楽しめるこの一角は、掘り出し物を求めていつもつい長居をしてしまいます。
お米が苦手な次男が主食にしているオートミール(800g)は、2019年に香港に移り住んで以降、毎年HK$1、じわじわと値上げが進みHK$17からHK$20へ。わたしの朝食の定番、まとめ買いして冷凍ストックしている山崎パンの黒糖ロール(4個パック)も移住当時はHK$14で買えましたが、これまたHK$1ずつ刻まれ、ついに店頭価格HK$19に。HK$20を超えるのも時間の問題でしょう。
エンゲル係数増大要因となりそうな育ち盛りの男児2人を抱え、メリハリのある家計運営は我が家の悩ましい課題……。

驚異的な回転率を誇るこのコーナー。購入しようと再訪すると商品は大抵、完売していて、即断即決が肝要!

CPIを見ると、2023年1月の香港の食品の値上がりは前年同月比+5.0%。値上がり率トップ3品目は、野菜(+20.2%)、卵(+13.5%)、果物(+9.7%)(注2)。
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻から約1年。原油、石炭、天然ガス、小麦、トウモロコシ、肥料などを世界中の多くの国々に輸出していた両国の情勢が食糧高の背景にあると分析されていますが(注3)、香港の小売店の店頭に並ぶ野菜や果物、卵も、肥料やハウス栽培費用、飼料や養鶏場の照明費用等の生産コスト増加分が輸入価格に転嫁され、輸送コスト上昇分が上乗せされているのではないかと推測されます。
価格が安いときに買い溜めがきかない品目だけに家計への影響は甚大。材料高でテイクアウト(外賣)商品も値上がり率+4.4 %。自炊派でない香港の世帯にも食料価格高騰の影響が及んでいそうです。

香港の小売店の店頭に並ぶ卵(日本産)の値上がりは鳥インフルエンザの感染拡大も一因? 1パックHK$30を切る卵は、最近はあまり見かけなくなってしまいました(2022年11月当時撮影)

続いて、生活に欠かせない光熱費について。電力は驚愕の前年同月比+30.5%の値上がり。
香港で主軸の火力発電用の石炭は4分の3をインドネシアからの輸入に頼っています(注4)。ロシアからの輸入分は6.8%で第3位。ウクライナ侵攻の影響は限定的にも思えますが、インドネシアは2022年1月、自国の石炭火力発電所への供給確保を理由として1ヵ月の禁輸措置を発動。その後も輸出制限を続けるなど、今後の供給制限・需要逼迫による石炭価格の高騰が懸念されるところです。
これから冷房で電気使用量が激増する季節へと突入する香港ですが、コロナ経済支援の一環だった政府による各住宅への年間HK$1,000の電気料金補助も2023年5月に期限終了。正念場の夏を迎えることになりそう……。

我が家の直近の電気代請求書を公開します!CLP(中華電力)との契約で隔月請求(額面は2ヵ月分の料金)(注5)

その他、値上がり幅が目立った品目は、男性用外出着(前年同月比+16.7%)。アフターコロナ?濃厚接触者の隔離や入境時のPCR検査が廃止されたのが2022年12月29日でしたから、(推測の域は出ませんが)1月の香港は職場通勤や海外出張が完全復活したことで外出着の需要が増したのかもしれません。
全品目の総指数は対前年同月比+2.4%。肌感覚で感じていた香港の物価高ですが、今回、数字を掘り下げることで再認識した現実。明日は子どもたちと夕食の材料の産地当てっこクイズでもしようかな。節電チェックリスト作りもいいかもね。物価高を教材にでも変えて、時に笑い飛ばしながら、強かに逞しく生きてゆこうと奮起している2023年、香港、春の風景。
Emi in HK。多謝收睇。下次見!

春の昼下がり、尖沙咀から香港島を望む

【出典】
※注1…https://www.censtatd.gov.hk/tc/scode270.html

※注2…消費物價指數月報2023年1月(香港特別行政區 政府統計處)
https://www.censtatd.gov.hk/en/data/stat_report/product/B1060001/att/B10600012023MM01B0100.pdf

※注3…令和4年版 通商白書 第Ⅰ部 第1章 第1節 ロシアのウクライナ侵略による世界経済への影響(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2022/2022honbun/i1110000.html

※注4…香港能源統計2022年第 3 季季刊(香港特別行政區 政府統計處)
https://www.censtatd.gov.hk/en/data/stat_report/product/B1100001/att/B11000012022QQ03B0100.pdf

※注5…①コロナ対策のための助成分「電費補貼計劃」(対象期間:2020年1月~12月、2021年6月~2022年5月、2022年6月~2023年5月)と、②低炭素化社会にむけた電力会社の投資(石炭→天然ガスへの移行)による電気料金値上げの影響緩和のための補助分「電費紓緩計劃」(対象期間:2019年1月~2023年12月)が電気代総額から相殺され請求されます。

<参考URL>
https://www.fstb.gov.hk/tb/tc/business/fin_rel_shc/electricity-charges-subsidy-scheme.htm
(香港特別行政區 財經事務及庫務局)

https://www.eeb.gov.hk/tc/energy/ecrs.html
(香港特別行政區 環境及生態局)



汪 江美子(わん・えみこ)
映像プロダクション会社勤務。慶應義塾大学大学院修了後、日本・東京商工会議所にて、中小企業の資金調達支援や政策立案時の省庁との折衝等に従事。15年半の勤務を経て2019年、夫の仕事の都合により来港。2020年から現職。夢は日本と香港の合作映画の製作に関わること。気分転換は25年振りに再開させたピアノ。インター校に通う8歳、5歳、男児2人の母。

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