2023/11/07

好耐冇見啦!お久し振りです。Emiです。

8月中旬に新年度がスタートした子どもたちの学校は、10月中旬から1週間の秋休みに入りました。

今年は、夏休み明けからの臨時休校の多かったこと。ご存じのとおり、香港では香港天文台の発令する警報の程度により、学校や会社、政府機関、証券取引所までもがお休みとなるのですが、この2ヵ月、香港は連続して2つの台風と記録的な大雨に見舞われました。

黄大仙や柯士甸などのMTRの駅はホームまで浸水。通りは至る所で冠水し、多くの街路樹が暴風によりなぎ倒され、街は大きな被害を受けました。

暴風雨が通り過ぎた翌日の近所のオープンカフェ。見るも無残な……

 

わたしの働く会社のビルも、水圧に耐え切れず、排水管の隙間から漏れ出てきた水によって地下の倉庫が浸水。エレベーターの機械室も水浸しとなり、2基あるビルのエレベーターはどちらも使用することができなくなりました。

香港にそう多くあるとは思えないエレベーター業者さんに、一度に修理依頼が殺到したのでしょう。「修理は早くて3週間先になります。皆さん、どこも緊急だと仰って…」いやいや、映画用機材のレンタルハウスである我が社にとっても、エレベーターでの運搬は生命線だよ? カメラやレンズ、ドリー(注1)に照明機材。撮影に使用される大量の機材、機材庫のある5階から人海戦術でトラックまで運んで、撮影現場から戻ってきた機材をまた階段で運ぶの?

エレベーター2基、修理の完了まで、結局1ヵ月以上を要しました

 

苦笑いをするしかない状況に、社員一同途方にくれてしまいましたが、湿度と温度の管理が不要で高価でない機材は、24時間365日、ガードマンの監視下にある5階の倉庫まで上げ下ろしをせずに、2階の会議室に一時仮置き場を作って凌ぐことに。同じビルに同居する大手楽器チェーンTの修理工場さんも、貨物輸送会社Oさんも、あの手この手でエレベーターの使えない不自由な状況をなんとか乗り切られたようです。

多くの高層ビルや高層マンションがそびえる香港にあって、エレベーター業者さんの数はいかほどなのか? 細かな数字までは調べても分かりませんでしたが、香港の就業者(361.3万人)を産業別にみると、建設業に携わる人口は33.2万人。全就業人口の約1割。うち、建物の装飾・修繕および維持管理に関わる方は7.2万人。全就業人口の2.0%に過ぎませんでした(注2)。

シンガポールと双璧をなすアジアの金融ハブ、香港。輸出入に関税のかからない自由貿易港でもあります

 

視点を変え、域内で新たに生み出されるモノやサービスの付加価値、名目国内総生産(GDP)を産業別にみると、建設業は4.0%。一方で、金融・保険業21.3%、輸出入業16.8%、運輸・倉庫業6.9%と、これら3つの産業でGDPのおよそ半分が占められており(注3)、香港では、製造業が盛んなモノづくり大国“日本” (注4)とはかなり様相の異なる光景が広がっていることが分かります。

因みに、わたしの属する映画産業は、就業人口1.2万人(対総就業人口比:0.3%)。対GDP比0.1%(注5)。ひぇー、ちっさーい。衣食住に欠かせないものではないけれど、生活にエンターテインメントは、きっと、いや、絶対に、必要だと信じてる。嫁いで香港に来て、思いがけず飛び込んだ世界ですが、撮影機材の提供という映画界を支える裏方仕事に、わたしは誇りを持っています。

今日はミュージックビデオの撮影。香港に2台しかないクレーンも出動!

 

エレベーターのない生活を1ヵ月近く体験したことで、当たり前にある風景が当たり前にあることは、実はそれを支えている人々がいるからなんだということ、財を生み出す力・産業という尺度だけがすべてではなく、職業に貴賤なんかないんだよなぁということ、わたしは今回の大雨を通じて、なんだか改めてしみじみと感じさせられたのでした。

そうそう。今年の夏休み、日本に本帰国したお友達と一時帰国中の東京で再会し、キッザニア東京でお仕事体験をした8歳の長男。東京メトロの運転手さんになり、ピザーラでピザ焼いて、ハイチュウを製造し、ソフトクリームを絞って、ヤクルトの菌を顕微鏡で研究。ヤマト運輸のトラックでメール便を配送し、仕事を通じて得たキッザニア通貨は銀行で口座を作って最後に預金をしました。日本のお仕事を存分に体験した帰り道、「お金、savingじゃなくて、僕、investしたかったー」と香港っ子らしい(?)発言も飛び出し、子の成長に母はびっくりするやら……。

代田博士のシロタ株! お馴染みの容器で「益力多」として売られているヤクルトは、香港でも身近な存在です(キッザニア東京にて撮影)

 

発祥の地であるメキシコ・シティから、東京、ロンドンまで、世界中に26の施設を持つキッザニアですが、現在、さらに9つの施設が開発されている最中なのだそうです。Coming Soonと記された国と地域の中には、カナダやブラジルの都市名に混ざって、なんとここ“香港”の文字も(注6)!

職業、エンターテインメント、食べ物など、それぞれの地域と文化に密着した体験が提供されているキッザニア。香港と言えば…金融の街? 貿易の街? 観光の街? 美食の街? 映画の街? “竹”でできた足場も印象的な高層ビルの街?

子どもたちが、香港の風景について、学校を飛び出し、考えながら学べる施設がまた1つ増える日がとても楽しみです。

撮影現場でじゃれあう若手スタッフたち。夢に向かって

さてさて、君は、将来、何になりたい?

Emi in HK。多謝收睇。下次見!


【脚注・出典】

※注1…カメラを水平に移動させるために使われるタイヤ付きの台車

※注2…香港特別行政區政府 政府統計處綜合住戶統計調查組 「表210-06305:按主要工作所屬詳細行業及性別劃分的就業人數」

https://www.censtatd.gov.hk/tc/web_table.html?id=210-06305

※注3…香港特別行政區政府 政府統計處國民收入統計組 「表310-34101:按經濟活動劃分的本地生產總值」

https://www.censtatd.gov.hk/tc/web_table.html?id=310-34101

※注4…総務省・経済産業省 「2022年経済構造実態調査」

https://www.stat.go.jp/data/kkj/kekka/pdf/2022gaiyo1.pdf

※注5…香港特別行政區政府 文化體育及旅遊局 「創意香港轄下八個創意界別的就業人數」「創意香港轄下八個創意界別的增加價值」

https://data.gov.hk/tc-data/dataset/hk-cstb-cstb_chk-statistics-for-creative-industries-in-hong-kong

※注6…https://kidzania.com/en



汪 江美子(わん・えみこ)
映像プロダクション会社勤務。慶應義塾大学大学院修了後、日本・東京商工会議所にて、中小企業の資金調達支援や政策立案時の省庁との折衝等に従事。15年半の勤務を経て2019年、夫の仕事の都合により来港。2020年から現職。夢は日本と香港の合作映画の製作に関わること。気分転換は25年振りに再開させたピアノ。インター校に通う9歳、6歳、男児2人の母。

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