2021/06/05

義父の愛車テスラ車 エンジン音はほとんど聞こえることなくスムーズで静かな走りです

事件はある日の午後、1本の電話から始まりました。

米電気自動車(EV)メーカー大手テスラのディーラーからかかってきた納車の場所と日程の確認。「えええー」夫は、車の発注者だとディーラーに聞かされた自分の父と慌てて連絡を取り紆余曲折を経て車の注文は白紙に戻されたのでした。相当年季の入ったトヨタの中古車を運転している息子を見かねた義父からの好意をありがたく受け取ることもできたのですがキャンセルした一番大きな理由。それは現在住んでいる香港の離島区には近隣に車を充電できる場所がないからという理由でした。

EV充電場所はネット検索が可能です(注1

月極契約をしている駐車場でEVに乗っている人をたまたま見かけた夫。この地域で?どうして?と珍しく思って立ち話をしたところ、「充電?香港ディズニーランドに行って遊んでる間、いつもそこの駐車場で充電してるんだよね」との返答。なんと!充電のためにディズニーランド!確かに香港ディズニーランドはここからさほど遠くない場所にあるけれど。入園料や駐車料金が割引になる年間パスポートを所有されていらっしゃるのでしょうが、現実離れしたそんなやりとりを以前交わしたこともあって、わたしたち家族はまだまだ現役で頑張れる今の車をしばらく使い続けようという結論に至ったのです。

コロナ禍以降、香港で人気のキャンピング
キャンプ道具とショッピングモールの中央に展示されていたテスラ車(2021年5月撮影)

その事件以降、長年ペーパードライバーで車には全く興味のなかったわたしもさすがに香港の車事情が気にかかるようになりました。そうして気付いたんです。日本にいた頃はあまり見かけなかったように記憶しているけれどテスラ、香港の街中をたくさん走っているじゃないか!(他のメーカーの車はEVなのかそうでないのか一見して車種が見分けられないのでごめんなさい)政府環境局の資料によれば昨年2020年、香港で販売された新車の12.4%、およそ8台に1台が電気自動車(EV)だったのだそうです(注2)。

香港特別行政區政府 環境局資料(※注参照)

「香港を走っているテスラの台数は現在30,000台程度ですけど、この3〜4年で弊社はさらに飛躍することになると思いますよ。今、四半期でおよそ2,000台、年間10,000台弱の売り上げですね。香港内のEVシェアは弊社が圧倒的1位を誇っています。他社さんの車はテスラの充電ステーションで充電ができないんですが、テスラ車は他社さんの充電ステーションでも充電できるという大きな特徴があるんですよ」「購入の際は僕にWhatsAppでご連絡くだされば大丈夫。店頭にもう一度いらっしゃらなくても良いですよ。手付金HK$1,000のカード決済で直ぐにお好きなお色、ご希望の仕様で上海の工場に発注します。香港内には整備工場も4ヵ所ありますから購入後も安心ですよ」「え?キャンセル?手付金分だけでいいです。車を待ってる方はたくさんいますからね。その人たちへの納車が早まるだけです」。EVのことがもっと知りたくてショッピングモールでテスラのショールームの前をウロウロしていたら愛想のいいお兄さんが話しかけて来てくれました。

テスラのショールームに置かれていたパンフレット
税制優遇の条件についても記載があります

所有している従来のガソリン車を廃車にしてEVに買い替える場合、条件を満たせば購入時に限度額HK$287,500の減税措置も受けられることもあってか、平日なのにお店にはお客さんが途切れることなく訪れている様子でした。

ショッピングモールの駐車場に設置されている充電(上:Festival Walk、下:K11MUSEA)/有料の急速充電器(上・白はHK$150、40分でフル充電が可能/無料の充電器(下・グレーフル充電に6時間かかるそうですが、2時間も充電すれば100キロ位は走れるよ、香港内なら十分でしょ?と店員さんが教えてくれました

長男が通う学校。環境保護に意識が高くまだ5歳になったばかり。当時、日本で言うところの年中組さんの年次にもかかわらず息子は学校で3R(Reduce, Reuse, Recycle)について学んで帰ってきました。

学校全体が“Sustainability Week”に設定された9月最終週の初日、歩いて学校まで行ける距離に住んでいる子どもたちはバスに乗らずに歩いて通学することが課され、朝のコミュニティタイムでは“Save our earth”のために自分に何ができるかを話し合う時間も設けられました。その日の午後には皆から出た意見を先生がホワイトボードにまとめた画像が学校から送られてきたけれど「部屋から出るときは電気を消します」とか「絵を描くときは要らない紙に描きます」とか「テラスで野菜を育てて食べています」など、皆しっかり意見を述べていて(節電大切!パパやママに言われなくても消せるようになろうね)とか(裏紙、使っているってことかな?)とか(地産地消!そうだね。輸送の必要がなくなるとエコだよね。しかし、これ、よく考えるとかなり高度な意見だな)とか、香港に越してきて3ヵ月。まだあどけない顔した子どもたちの今後の可能性に驚かされたことを覚えています。(因みに我が息子は「自分の着なくなった服を弟にあげます」と意見を述べていました。Reuse!)

長男通う学校のSustainability Weekのスケジュール(2019年9月)まだこの頃は毎日フルデーで学校に通学できていた

こうして一週間の最終日。参加は強制ではありませんでしたが始業前、皆で学校近くのビーチの砂浜のゴミ拾いをして“Sustainability Week”は締めくくられたのでした。

あれから一年半。「アイェイェ(義父)とパパの車どっち好き?」事件後、間もないある日の寝かしつけの際の息子(現在6歳)とのベッドの中での会話。「アイェイェの車!だってパパの車は後ろから出てる煙が邪魔でしょ。アイェイェの車、屋根にハイブリッドソーラーパネルが付いてたらもっとかっこいいのにね。ママ、ソーラーパネルって知ってる?」環境保護の早期教育の賜物か長男からはなんとも頼もしい回答がありました。

長男落書きしたパパの車、排気ガス忠実に描写

そっか、もう発電の仕方に種類があるってことも知っているのか。EV普及に向けた香港政府のロードマップには「2035年もしくはそれ以前にハイブリッド車を含む内燃式自家用自動車の新規登録を終了させる」との目標が掲げられています(注3)。この子たちの世代が成長して車の免許をとる頃には街を走る車の大半が電気自動車(EV)という光景が日常の光景になっているのかもしれません。

Emi in HK。唔該你。一陣見!


【出典】
※注1…テスラ公式ウェブサイト
※注2…香港特別行政區政府環境局 Environment Bureau.“Hong Kong ROADMAP ON POPULARISATION OF ELECTRIC VEHICLES”March 2021,Figure1,p.5.
※注3…香港特別行政區政府環境局 Environment Bureau.“Hong Kong ROADMAP ON POPULARISATION OF ELECTRIC VEHICLES”March 2021,Figure4,p.7.

Emi
経済団体にて経済産業省・法務省との折衝から、中小企業の事業転換・倒産回避の相談現場まで、多岐にわたる業務に従事。2019年6月、15年の東京・丸の内オフィス生活に別れを告げ、夫の仕事の都合により香港へ移住。英語・広東語・北京語とも旅行者レベルの域を未だ脱せず、危機感覚えながら日々勉強中。気分転換は映画・ドラマ鑑賞、25年振りに再開したピアノ、甘い物。小学校、幼稚園、やんちゃ男児2人の母。

emiinhkg@gmail.com

 

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