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2026/02/21

映画『フォー・トレイルズ  72時間の挑戦』より、女性ランナーのニッキー・ハンさん。©LOST ATLAS

2026年1月1日、日本のお正月は、帰省して、こたつみかんをしながら、箱根駅伝の生中継にかじりついた方も多くいらっしゃるのではないでしょうか? 青山学院大学「シン・山の神」黒田朝日くんには、感動させられましたね!

さて、香港にも盛大に祝う旧正月がやってきたわけですが、こちらも、個人ではありますが、長距離を走るイベントがあります。その名も「香港フォー・トレイルズ・ウルトラ・チャレンジ(Four Trails Ultra Challenge)」。香港の4大トレイル総計298 kmをランナーたちが3日3晩、72時間以内に走り通すという、「超」がつくほど過酷なレースです。

2024年12月に公開された、ロビン・リー監督のドキュメンタリー映画『フォー・トレイルズ  72時間の挑戦』(原題:Four Trails)が大ヒットしたこともあり、このイベントは、トレイルランナーのみならず、多くの香港市民にも知れ渡るようになりました。(映画の紹介はこちらから)

2026年の今年も、レースは無事に開催、終了し、26人中15人のランナーがゴールに到着。それぞれの感動の物語が誕生しました。

今回、Hong Kong LEIでは、華やかな打ち上げ花火やライオンダンスとは一味違う、香港の比較的新しい旧正月のイベント「香港フォー・トレイルズ・ウルトラ・チャレンジ」の概要を第一部でご紹介し、第二部では、このイベントと切っても切ることのできない大ヒット映画『フォー・トレイルズ  72時間の挑戦』のロビン・リー監督に、作品についてのお話しを伺いました。
旧正月に、皆様にまた一つ「大好きな香港のこと」を知っていただけたら嬉しいです!

 


第一部:HK4TUC、その概要

香港はトレイルランニングの聖地
距離298 km、累計標高14,500 m どれくらいきついの?
いつから始まった?誰が始めた?どんなルール?
日本人選手の奮闘!

第二部:映画『フォー・トレイルズ  72時間の挑戦』、ロビン・リー監督インタビュー


 

香港はトレイルランニングの聖地

今回ご紹介する「香港フォー・トレイルズ・ウルトラ・チャレンジ(Four Trails Ultra Challenge:以下、HK4TUC)」を筆頭に、香港では、年間、実に50以上ものトレイルランニングのレースが開催されているのをご存知でしょうか?

香港のイメージといえば、高層ビル、ビル、ビル! その多さは、ギネスブックに「最も高層ビルの多い都市」と記録されているほど*。その香港でなぜ、トレイルランニングが盛んなのかを、まず最初にみていきたいと思います。

香港は確かに高層ビルが多い都市ではあるのですが、実は緑被率70%以上という、自然豊かな都市でもあるのです。市街地から20分も車を走らせれば、緑に囲まれたカントリーパークやハイキングコースにすぐ着きます。

写真左:ビクトリアハーバーを臨む香港の高層ビル群 写真右:タイタムカントリーパーク ©Hong Kong LEI

 

整備されている山道が多くあることも、トレイルランニングが盛んに行われる理由の一つでしょう。例えば、HK4TUCのコースのうちの一つ、マクリホーストレイル(100 km)は1979年に開通しました。これは、当時、香港総督を務めていたマクレホース男爵がカントリーパーク設立を推進したことが発端となり、そこから、カントリーパークを通る道を、点在していた山道や峠を繋げて整備し、作ったのです。

また香港は「暑くて湿度が高い」亜熱帯地域ではありますが、10月くらいから徐々に暑さも和らぎ、3月くらいまではアウトドア活動に適している気候であることもあげられます。

新界の山に住んでいる猿(左)や黒くて大きな牛(右)©Hong Kong LEI

 

それから最後にもう一つ。香港の山中を歩いても、熊や虎に出会う危険がないこともあげておきましょう。お正月らしさを盛り上げる、干支の牛、蛇、サル、犬、イノシシや、またヤマアラシに遭遇することはありますが、こちらから何かしない限り、彼らが襲ってくることはないので安心です。ただし、蛇は、4m級のパイソンとか、毒を持ったコブラもいますので、確率はかなり低いですが、万が一遭遇した場合は、すぐにその場を離れましょう。

 

距離298 km、累計標高14,500 m 、どれくらいきついの?

それでは、いよいよ今回の主題であり、映画『フォー・トレイルズ  72時間の挑戦』の題材にもなったHK4TUCレースについて見ていきましょう。まず、298 km、どこをどのように走るのか、こちらをご覧ください。

©LOST ATLAS

1、マクリホーストレイル   Maclehose Trail         100km
2、ウィルソントレイル     Wilson Trail                78km
3、香港トレイル                 Hong Kong Trail           50km
4、ランタオトレイル            Lantau Trail                70km

(レースでは、トレイル間の移動に、車、地下鉄、フェリーなどを使います)

さて、この298 kmという距離。一体どれくらいなのか、わかりやすいものと比較してみましょう。

日本で言うならば、徒歩で、東京駅から新潟駅の一つ手前、燕三条駅くらいまで(約290 km)、もしくは旧東海道経由で、金のシャチホコの名古屋城から小田原城まで(約270 km)、福岡の博多駅から鹿児島駅(約280km)などでしょうか。

家から最寄りの駅まで徒歩5分だ、10分だ、とケチな計算をしている現代人にとっては、新幹線を使う距離だと言うことがお分かりいただけるかと思います。

次に、距離と同様、トレイルランニングにおいて、もう一つの重要な要素「累積標高」(Elevation Gain)を見てみたいと思います。こちらは「どれくらいの高さを登ったか」です。

HK4TUCの累積標高は14,500 m ですが、エヴェレスト(8,849 m)とキリマンジャロ(5,895 m)を足すとちょうど、このくらいの数字になります。ものすごく簡単に言ってしまうと298 kmと言う長い距離の中で、この二つの山相当の高さを上る感じでしょうか。(実際には、上りあれば下り(Elevation loss)もあるので、低酸素で体への負荷が大きくなる標高2,000 m は超えません)

ちなみに、香港で一番高いビルディングは九龍にあるICC で、484 m です。4つのトレイルの中には、あのビルディングより高い山が少なくとも10個以上あります。有名なところでは、大帽山(Tai Mo Shan)957 m 、鳳凰山(Lantau Peak)934 m 、大東山(Sunset Peak)869 m などがあります。

どうでしょうか。なんとなく、この過酷さの想像ができましたでしょうか?

 

いつから始まった?誰が始めた?どんなルール?

こんな無謀とも思える距離と上り下りを3日3晩走りとおすなどという無謀なレースを一体誰が思いつき、始めたのでしょうか?

それは、香港在住のドイツ人、アンドレ・ブランバーグさん。

2009年のある日、それまで香港エクスパットとして、睡眠時間を削り、働きまくり、遊びまくる人生を謳歌していた彼は、健康診断で医者から「太り過ぎ。コレステロール高すぎ」とにべも無く言い放たれます。40歳を目前に、これはまずいと反省したブランバーグさんは、一念発起。酒を断ち、ジョギング、そしてトレイルランニングをするようになったのです。

写真左:香港の英字紙The Standardの表紙を飾るブランバーグ氏。写真右:左から2番目から、ブランバーグ氏、ロビン・リー監督、ランナーのニッキー・ハン氏。映画『フォー・トレイルズ  72時間の挑戦』の鑑賞後のトークにて。©Hong Kong LEI

 

2012年の旧正月を目前に「4日間休みがあるな。退屈するな」と思った彼は、なんと「そうだ京都、行こう!」ではなく、「そうだ! 4大トレイルを全部走破しよう!」とひらめいたのであります。

周囲には「無理でしょ」と冷たくあしらわれるも、彼は、見事にその挑戦をやり遂げたのです。これが、記念すべき、HK4TUCの第一回となりました。

翌年、他の4人のランナー達ともう一度、HK4TUCをやり遂げた彼は、香港という、自身にとって思い入れのある地で、無謀とも思える挑戦に打ち勝った時に感じる何かを、他の人々にも伝えたかったのでしょうか。2014年からはHK4TUCの主催者として、毎年、旧正月に現場に立っています。

レースは毎年少しずつルールや形式を変えながら、現在に至っていますが、ただ、当初から変わっていないこともあります。

それは、レースは参加費無料であること。そして差入れは禁止、自身でコンビニや売店で、飲料や食べ物を調達します。ただしトレイル間の移動のみサポートがあります。

また60時間以内に完走すれば、「完走者(Finisher)」、72時間以内なら、「生還者(Survivor)」という称号が与えられますが、トロフィーもメダルも賞状もありません。

ゴールである緑のポストに辿り着き、感極まるランナー ©LOST ATLAS

 

でも、「走り切った」というランナーたちの誇りや喜びが確実にそこにあり、彼らが届けてくれた感動が、人々の心に残ります。

 

日本人選手の奮闘!

マラソンや箱根駅伝など、長距離に強い日本人選手の健闘ぶりも見逃せません!  過去には、60時間以内にゴールする「完走者(Finisher)」のタイトルを獲得した日本人ランナー、井原知一さん(2019年 & 2023年)、土井陵さん(2020年)、森谷充雄さん(2024年)がいます。

昨年2025年のレースにおいては、新ルールの「腕時計禁止。レース開始時間は6時間前に知らされる」という過酷な条件が加わった中、15人のランナーのうち11人が完走(72時間以内にゴール)。そのうち3人は日本人ランナーの脇屋貴司さん、武市香里さん、藤田慎一郎さんでした。

そして2026年の今年。昨年に引き続き2度目のチャレンジを試みた、日本人女性、武市香里さんがまたもや、64時間21分36秒で完走、2度目の「生還者(Survivor)」として、また女性ランナートップでゴールを切るという偉業を達成しました! おめでとうございます!!

女性として、2年連続この過酷なレースに打ち勝った武市さん。LEIでは、間もなく彼女のインタビューを公開予定ですので、皆様お楽しみに。

*Guiness World Records 2026 (p.107)

 

第二部:映画『フォー・トレイルズ  72時間の挑戦』、ロビン・リー監督インタビューへ

 

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