2022/09/04
実はこのコラムを書いている今は、わたしたち家族が村屋に入居してからちょうど1年が経った頃でした。つまり全てのシーズンを1回経験したことになります。
1周して身をもって体験したのは、香港は過酷なシーズンと、気持ち良いシーズンの2つに分かれることです。高層ビルに住んでいた頃は、そこまで気にしなかったのですが、体感としては高層ビルに住んでいた以上に感情が気候に左右されること。過酷なシーズンとは、暑さと、雨、台風、湿気に伴う4月中旬ごろから9月中旬ごろまでの超ウェットな時期。この期間は除湿機のタンクがすぐにいっぱいになって、1日1回は捨てないといけません。もう1つはドライシーズンとも言える、涼しくて、乾燥していて、清々しい9月中旬から4月中旬ぐらいまでの時期。わたしたちが引っ越しをしたのが7月下旬でしたので、暦上は、過酷なシーズンまっただ中でした。それを知らず、村屋初心者のわたしは来る日も来る日も、雨や台風で暗くどよんとした毎日に加え、動物たちからの洗礼もあって(1回目をお読みください)、家に閉じ込められた孤独な村の生活に夜が明けないような気分になり、失敗したかもという言葉が脳裏をよぎることも増えて、鬱々としていました。
転機が訪れたのは、ある日、子どもの送り迎えをしていて、土が雨に濡れた匂いや、木が日に当たって香ってくる緑の匂いなど、ふと自分が子どもの頃に嗅いだのを思い出して、とても懐かしい感覚になりました。雨が降れば傘が必要だし。洋服は雨に濡れるしー。よく考えてみると当たり前のことなのですが、これまであまりにも便利な生活を追い求め、どこに行くにも駅直結で雨に濡れない日常が普通になっていて、何か地球に住む人間にとって大事なものをすっかり忘れていたようなことに気がつきました。すると、今まで嫌だなと思えたことが、愛おしくもなるように思えてきて、俄然悪天候も、悪天候なりに楽しめるようになり、雨音さえ美しい合唱のように聞こえてきました。
(雨水に濡れた雲の糸、風で美しくなびいていました)
9月の下旬、突然少し涼しいカラッとした清々しい日がやって来ました。空気がガラッと変わって、見える景色が一気に変わりました。その日を境にまさに、村屋に引っ越して大正解と思えるバラ色の日々が始まりました。
気候はどんどん良くなって、蚊やサンドフライも少なくなり、外で火を起こしてちょっとしたものを料理したり、ご飯を食べたり、お酒を飲んだり、本を読んだり、仕事をしたり、どんどん家の外で過ごすことが多くなりました。しまいには屋外用ソファセットを買って長椅子で昼寝することもできるようになり、香港でまさかこんなことができるとは!というような、わたしにとっては夢のような毎日を過ごせるようになりました。
香港は半年我慢すれば、半年は素晴らしいので、この半年のために村屋の生活をする価値が十分あると思います。
さて、このコラムが公開されるのは9月、後2〜3週間もすればまた外でプラプラできる日がやってくると思うとウキウキが止まりません。また次回では気持ち良いシーズンの過ごし方などをご紹介したいと思いますが、今回は、過酷なシーズンのために入居前後に絶対にチェックしたほうが良いことを3つ挙げましたので、村屋への引っ越しを検討される方はぜひ参考にしてみてください(アパートを決めるにあたって水回りやお湯などは大変重要な問題です。それについては引っ越し大作戦の方で書きましたので、そちらも参考までにご覧ください)。
入居前後に確認すること!重要!
<網戸!>
先ほども述べたように、村屋は窓を開けるともうそこはワイルドな外。大荒れの天候の時は大音量の風や雨の音、鳥や虫の声もまるで外にいるように聞こえてきます。村屋の、特に地上階は、そんな自然の影響をモロに受けやすいので簡単に蚊、蜘蛛、サンドフライ、羽根蟻などは侵入してきます(でもゲコが住んでいれば夜中に食べてくれている確率は高しですが!)。全ての窓に網戸は必要です。ついてない場合は入居前に付けてもらえるように交渉しましょう。ない場合は、自分でベルクロテープを使って網をはる方法もあります。
<排水溝!>
村屋の地上階に住む場合は、必ず排水溝がどこにあるかを確認した方が良いです。大体は排水溝が建物を取り囲むようにめぐらされているので、土砂などで詰まっていないか確認しましょう。詰まっていると水が溢れ出てきます。微妙に傾斜がついていて、全てが排水溝に流れ込むようになっていると直良しです。排水溝がない場合は、雨水の導線を作る必要があります。地上階に住んでいると床上浸水になったという話をちらほら聞きますので、豪雨や台風が来る前に、絶対にチェック!
<荷物を入れる前に穴という穴を全て塞ぐ!>
村屋は虫の侵入が多いです。なぜか家の中に蟻やムカデが歩いていたり、ゲジゲジ、バッタ、ゴキブリも外から侵入してくるかもしれません。荷物を入れる前に各部屋、各トイレ、物置、流しの下やとにかくありとあらゆる場所をチェックして、穴という穴を全て塞ぎましょう。また、排水溝は、そこから虫が伝ってくる可能性もあるので、使わないときは蓋をしておきましょう。わたしたちは穴を塞げるような粘土を買ってきてどんな小さな穴も全て塞いだので、ゴキブリも蟻もいない1年を過ごしました。
それではまた次回!今度はバーベキューシーズン到来のころに!
第1回
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