2022/11/22

11月に入り、我が家の末っ子が通う幼稚園も衣替えで秋服になりました。でも晴れの日の日中はまだTシャツ一枚でも気持ちの良い陽気ですね。街を歩きながら、ふと見上げると青空を背景に咲き誇る赤紫色のバウヒニアが視界に入り『香港って最高!』と思う季節です。

 

さて、今回のタイトル、なんのことかお分かりになりましたでしょうか。『寿限無寿限無』は、皆様もご存じのとおり、すごく長い名前の主人公が出てくる落語のお噺ですね。ではその次につづいている長い漢字『里安納度狄卡比奧』はなんだと思いますか? 実はこちらも人名です。誰かお分かりになりますでしょうか。

正解はレオ様です。

 

皆様もその昔、沈みゆく鐵達尼號(タイタニック号)の中で愛するローズを守るために奮闘するジャックに夢中になったのではないでしょうか。何を隠そうわたしも彼のファンであり、多くの出演作品を見ています。中でもわたしが好きなのは『華爾街狼人(ウルフ・オブ・ウォールストリート)』。共演していた馬修麥康納希(マシュー・マコノヒー)の狂った様子も演技とは思えないほど上手です。ちなみに、わたし、レオ様のファンではありますが、タイプのハリウッド男優はと聞かれたら一番は『生死時速』の『基努里維斯』と答えるかな。え? 何の映画か誰のことだかさっぱりわかりません? 『スピード』の『キアヌリーブス』ですよ!

他にもハリウッド俳優さんたちが香港にやってくると、寿限無に負けないほどの長ーい名前が与えられます。『茉莉亞羅拔絲』でジュリア・ロバーツとか『姫帯白蘭芝』でケイトブランシェットとか!

長い名前といえば、わたしの夫の名前も長い! 電話口で夫の名の綴りを聞かれると萎えます。なぜって電話の相手に『フランケンシュタイン』の綴りを伝えるくらい大変なのですから。そんな事情もありまして、我が家は夫婦別姓です。

ちなみに世界のスタンダードから大幅に遅れ、2022年の今も日本政府は『夫婦別姓は家族の絆が弱まるから認めない!』と言っています。でもうちのように国際結婚夫婦には別姓を認めている。……うちの家族の絆はどうなっても構わないということなのでしょうか? まぁよく理解できませんが、こういう古い慣習に囚われて進歩がないことを韓非子の有名な故事で『守株』と言いますね。日本では童謡の「待ちぼうけ〜待ちぼうけ〜」の歌でよく知られています。

 

その『守株』の故事を生み出した中国文化圏では夫婦別姓が基本です。同姓選択の自由もありますが、少なくともわたしの周囲にいる中華系の友人、またその両親で結婚後に姓を変えた人はいません。

同姓、別姓の他に『冠姓』と言って結婚した女性が自分の姓の前に、夫の姓を持ってくることも可能です。例を挙げてみましょう。香港の前行政長官の名前は『林鄭月娥』(広東語読みではラムチェン、ユットンゴー)でした。最初の『林』が夫の姓、次の『鄭』が自身の姓です。彼女はまた『キャリー』という英語のファーストネームも使用しています(多くの香港人は英語のファーストネームを持っています)。さて、面白いのは彼女の名前表記。中文新聞では『林鄭月娥』、香港の英字新聞では『Carrie Lam Cheng Yuet-Ngor』、英国BBCは『Carrie Lam』、そして日本では、メディア各社で違っていて、朝日新聞の表記は『林鄭月娥(キャリーラム)』で、毎日新聞や読売新聞では『林鄭月娥(りんてい・げつが)』でした。私としては朝日新聞に座布団一枚差し上げたいと思います。だってもし香港の人や外国の人と会話をするときに、日本語読みの『りんていげつが』と言ったって誰にも通じませんから。

さて前行政長官の名前の話のついでに今度は現・行政長官の名を見てみましょう。『李家超(ジョンリー)』。漢字の広東語読みでは『リーカーチュー』と発音します。皆様、何か気になりませんか? そうです、あの黄色くて可愛いポケットモンスター『ピーカーチュー』とばっちり韻を踏んでいます! そんなわけで彼は影でピカチューというあだ名を付けられているのだとか。

香港に来てから、日本語話者以外の友人とも中華圏の人名、事象、本や映画の話をする機会が増えましたが、なんと全て日本語の音読みで覚えているもので、会話では相手に通じない! ということを痛感しています。広東語のみならず、まだまだ香港についても中国文化圏についても勉強することはいっぱいあるなー! と思いつつ秋の夜長に勉強よりも、上海蟹や火鍋など美味しいものにつられているわたしでした。

 

皆様も是非大好きなハリウッド俳優の寿限無級に長い漢字名を見つけながら芸術の秋を楽しんでくださいね!

 

ではまた次回!


小林杏 (Anne Kobayashi)


東京都出身、青山学院大学仏文科卒。ニュージーランド、日本、フランス、英国での就業経験あり。ロンドンでの出産子育てを経て、2020年に来港。今まで住んできた土地のように、香港も愛おしい場所となりつつある今日この頃。趣味は読書、舞台芸術鑑賞とカンフー映画鑑賞。


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