2023/02/22
2月といえばバレンタイン。香港では、今年も大きなばらの花束を贈られた老婆が多数いらっしゃったに違いありません(なんのことかいまいちピンと来なかった方は是非、昨年のコラムをご参考くださいね)。
ここ香港で若さに関係なく『老』の字を戴いているのは実はワイフだけではありません。ある日わたしは、店頭の冷凍庫でこんなものを発見しました。
『米奇老鼠』
袋を見つめながらわたしは悶々と考えてしまいました。「ネズミ入りの餅か何かの冷凍食品?……香港では年老いたネズミを食すのか……。確かに若いネズミはすばしっこくて捕まえづらいから、食品用に捕獲されるのは必然的に年老いたネズミになる、ということなのか……」と。
すると「ママーアイス食べたいー!」と横にいた息子たち。おぉ、そうか。これは『米奇』(ミッキー)『老鼠』(マウス)のアイスか!
若くても老鼠、ミッキーでも老鼠、つまり『老鼠』で『ネズミ』の意なのですが、実は『老』を冠させられている有名な動物が他にもいます。それは虎。ここで疑問が湧きます。若い虎、って言いたい時はどうするの!? 友人いわく『老虎仔』だそうで。老いているのか、子どもなのか、ハッキリしろ! と突っ込みたくなるような表記です。
『老鼠』にしろ『老虎』にしろ、なぜ、わざわざ『老』を戴く動物がいるのか。一説によると『老』という接頭辞を用いて「一音節を多音節にするため」(確かに『鼠(シュ)』より『老鼠(ロウシュ)』の方が聞こえやすいかも!)であり、また虎に関しては、年配者が尊敬される、つまり威厳があるとみなしている中国文化が背景となり、威厳のある虎にも『老』をつけている、などでした。*
『老』がつく動物がいる一方、『仔』がつく動物もいます。それは今年の干支の『兎(トウ)』。香港では一般的に『兎仔』と呼ばれます。こちらもやはり『仔』をつけることによって多音節にしているのかもしれません!?
さて、子どもは一般的に動物が好きですが、公立幼稚園に通う我が家の三男も例外ではありません。彼は幼稚園から動物の絵本や学習ノートを嬉々として持って帰ってきます。ただ当たり前といえば当たり前なのですが、それらが何と一字一句全て漢字で書いてある!……文章の難易度を、漢字とひらがなの比率によって判断する習性のあるわたしにとってそれは「可愛いイラストと不釣り合いに文章が小難しい!」……ように感じられます。
ちなみにまだ年中さんですが、幼稚園ですでに漢字を書く練習をしています。まず『一』、『二』、で始まり、最近は『山』とか『月』など。日本で漢字学習といえば、読みと書きを同時にやりますが、こちらの幼稚園児は、読むものは身近なものからどんどん進めていきます。例えば家族の絵と共に『媽媽(お母さん)』や『爸爸(お父さん)』など。書けなくても漢字を見て、それが何を意味するのかを理解させていきます。
自身の広東語学習にもなるかもしれない、と三男の幼稚園の宿題を覗き込んでみると、教材の中に面白い動物を二つほど見つけました。
『長頸鹿』『猫頭鷹』
長い首の鹿と書いてキリン。なるほど、模様は独特ですが、形としては確かに鹿の首を引っ張って長くしたような感じですね。「あれ、キリンって漢字で『麒麟』って書くんじゃないの?」と思われたあなた。実は中華圏で『麒麟』というと、麒麟ビールの缶に描いてある一角獣の生き物を指します。伝説上の『麒麟』は、五色の光を出し平和な世の中が訪れる予兆として現生に姿を表すのだとか。ちなみに『麒麟』、そして『鳳凰』『霊亀』『応竜』の四匹をあわせて『四霊』とも呼びます。
それから『猫頭鷹』。絵の通りフクロウのことですが、言い得て妙です! フクロウって確かに体は鷹だけど、頭部には猫の耳みたいなのがついているし(でも実はあれは羽角と言って耳ではないのです)顔つきも猫に似てる!
最後、走り回って悪戯ばかりしている、前述の我が家の三男のようなちびっ子を表す広東語表現があります。それは『馬騮仔』。馬の子ども? いえいえ、『馬騮(マーラウ)』とは猿のことで、『馬騮仔』とはチビザルです。表記としてのお猿さんは『猴』で、干支の申年も『猴年』と表記されるのですが、なぜか呼び名は『馬騮』です。馬には似ても似つかないですけどね!
さて外出するのが気持ちいい気候が続いている香港。金山郊野公園で野生の『馬騮』を見ながら歩くのも楽しいですし、観光名所スタンレー(赤柱)を散策がてら天后廟に足を伸ばし、1942年に捉えられた野生の『老虎』の皮を見に言ってもいいですね!……そう、そんなに遠くない過去に香港にも野生の虎がいたらしいですよ!**
では皆様また次回!
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https://read01.com/8z6JQQL.html#.Y-7x_y8RpQJ
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https://edition.cnn.com/2020/08/15/asia/tiger-hong-kong-hnk-dst-intl/index.html
小林杏 (Anne Kobayashi)
東京都出身、青山学院大学仏文科卒。ニュージーランド、日本、フランス、英国での就業経験あり。ロンドンでの出産子育てを経て、2020年に来港。今まで住んできた土地のように、香港も愛おしい場所となりつつある今日この頃。趣味は読書、舞台芸術鑑賞とカンフー映画鑑賞。
Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。
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