2024/05/03
文化財保護や公開をしている博物館と言えば、まずは尖沙咀と西九文化區が思い浮かぶでしょう。ですが、この間、古物古蹟辦事處のメディアツアーに参加して、香港のある地下鉄駅の素晴らしさがわかるようになりました。地下鉄駅の構内で文化財保護や公開をしている所があるのです。
古物古蹟辦事處は香港の歴史系博物館を管理する政府機関で、博物館好きのわたしはいつもお世話になっています。
古物古蹟辦事處 – 宋皇臺站考古陳列 (45) (amo.gov.hk)
2年前にコラムで紹介した通りに、宋皇臺駅は宋代皇帝が自害したところで、大変歴史の価値があります。駅内博物館を開くのはいままでなかったことですが、屯馬線宋皇臺駅の開業にしたがって、駅構内のミニ博物館を考え始めたとのことでした。
日本でも駅での博物館があります。例えば、京都府の福知山駅の外は、SL列車が置かれています。それは福知山城公園にある鉄道博物館の展示物の一つで、地元の誇りでもあります。
博物館はスペシャルイベントなど行うので、ずっと同じものを見せるわけではありません。3月22日、宋皇臺駅の展示物がリニューアルされました。テーマは「聖山遺粹」と言います。宋元時代の生活や経済活動、聖山のかつての風景、宋皇臺駅の出土品と海上貿易の関係などを、出土品や歴史的な写真、地図などを通して紹介しています。
陶磁器や芸術品がお好きな方はぜひ足を運んで、行ってみてください。新しい展示品は陶磁器がメインで、古いものから現代のものまで幅広く選ばれています。
かつて日本では、平安時代から戦国時代にかけて、平清盛や千利休などの偉人たちも海上貿易で大金を稼いでいました。貿易先は、中国と朝鮮。輸入品の中に、陶磁器は欠かせない存在でした。織田信長の軍旗上には明代年号「永楽」の「永楽通宝」が書かれたとはいえ、戦国時代流通していたお金は明銭より宋銭のほうが多かったと認識されています。
堺 商船 (千利休、與謝野晶子『さかい利晶の杜』)
展示棚のガラスの後ろにある青瓷と白瓷(名前は色のままでつけています)は色で分かれています。今の人は白の方が好きなようですが、古物古蹟辦事處の代表蕭麗娟氏が昔の人気色を披露しました。それは、青の方だったそうです。
実は、福岡市博物館(写真下3枚)も龍泉窯的青瓷が沢山展示されています。福岡市博物館と宋王臺駅の展示品に思いがけず共通点を見出して、海の陶磁器貿易に思いを馳せました。
青瓷、白瓷両方ともアジア諸国に輸出されていました。日本へは、商船は昔中国の泉州(今の寧波)やかつて港だった宋王臺を通じて太宰府に向かって航行していました。太宰府では鴻臚寺(こうろじ/外交、海上貿易の施設)が設置され、中国や朝鮮の商人たちの世話をしていました。
展示物の中に、日本の急須の形に似ているものがあります。それは昔の中国で、「水注」と言います。
唐宋時代中国のお茶は日本の茶道に影響を与えたと言われているので、この急須を見たらなんとなくわかる気がします。
茶道のお茶碗と下にある小さいお皿、今は日本の伝統茶具と思われています。茶道は千利休が発展させたことは今では常識ですが、元々は中国から学んだ文化の一つです。
実は、宋代の中国茶人が使っていた茶具は戦国時代の輸入品で、織田信長と松永久秀も宋代の茶具を高級品として集めていました。宋皇臺駅では「黑釉盞」と「醬釉盞托」という茶具があり、かたちは今の日本茶具に似ています。
次はとてもモダンな花瓶「梅瓶」を紹介します。
「梅瓶」は梅一本を飾る器で、風雅の限りです。今は桜が愛されていますが、天満宮の学問の神菅原道真などの昔の偉人たちは梅に関する文学作品を残しています。
青花瓷好きな方は見逃さないようにしてほしいお皿があります。それは、可愛い金魚か書かれているお皿です。昔の美学と技術に感心してやみません。
最後に、わたしは茶具や花瓶が好きでずっと紹介していますが、宋皇臺駅では昔の水道の土管、屋根の瓦、床のタイルなども展示されています。宋皇臺は千年前立派な建造物があったことが明らかになりました。建築がお好きな方もチェックしてくださいね。
キリ
日本語教師で旅行作家。唎酒師と観光ガイド資格。特に日本が大好きで年に10回以上は訪れる。著書に『Kiri的東瀛文化觀察手帳』(2017)、『日本一人旅』(2019)、『爐峰櫻語』(2022)がある。香港の誠品商務三聯などの書店で購入可能。
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