2025/07/08

先週は九龍公園にある香港文物探知館に招待され、新たな展示会場「唐風萬里」に参りました。中国大陸の10か省市の博物館、28館からの唐に関わる文化財が鑑賞できる大変貴重な機会です。唐三彩をはじめ、中国の古美術、服装史に興味がある方におすすめしたいと思います。

日本と唐の関係は、古くから平安京の建設と深い関わりがあります。平安京は中国の唐の都・長安をモデルに建てられています。また、唐からたくさんの文化や技術が日本に伝わり、律令制度や仏教、文学、建築などに影響を与え、後の日本文化の発展と繋がっていると言われています。

明皇擊球圖卷

絵巻：

展示物の中で、美術家の注目を浴びている絵巻は楊貴妃ゆかりの〈明皇擊球圖卷〉と〈真妃上馬圖卷〉です。明皇は楊貴妃を寵愛する皇帝で、絵巻はポロ（馬球）イベントを表しています。ポロは馬に乗って行う団体球技で、唐の宮廷で流行っていました。

豆知識：

楊貴妃は中国の大規模な反乱後、山口県まで逃げた噂があり、京都と熊本もいくつの伝説が残されています。日本と関係深い悲劇の人物です。

日本でも有名な詩人、李白が主人公になる〈春夜宴桃李園序〉絵巻は、シルクの生地に描かれた絵です。シルクに絵を描くのは紙より優れた技術が必要なので、必ず足を止めて見てください。

春夜宴桃李園序

書道：

書道は中国から伝わり、飛鳥時代に日本で本格的に始まりました。 中国歴代の皇帝や貴族も、書道をやっていました。宋·徽宗と清·乾隆皇帝は特に書道が上手です。

展示物の中は、清·乾隆皇帝が唐の書道家懐素（かいそ）の草書書体をモデルとして、書かれた作品「千字文（せんじもん）」があります。元々、初句「天地玄黄（てんち‐げんこう）」の意味は「天は黒く、地は黄色」ですが、清の皇帝·康熙皇帝の諱（いみな=忌名）は玄燁（げんよう、燁は火偏に華）を口にしないように、「玄」を「元」に変更したのが見所です。

天地玄（元）黄

黄金のアクセサリー：

恥ずかしながら、わたしは黄金の金色が好きです。日本史上豪華極まる豊臣の黄金茶室、もちろん大好きです。この度、黄金のアクセサリーが多く見られて、大喜びしました。

キラキラしている金の櫛（くし）と金のイヤリングを見たら、目が離せませんでした。

舞妓さんが使われている櫛、現代ではあまり使わないですが、唐の女性にとっては日常のヘアアクセでした。そして、合わせるイアリングもとてもかわいらしいです。

わたしが一番気に入った展示物は、展示室二階にある「嵌綠松石立鳳金飾件」です。専門用語だったら、「歩搖（ぽよう）」といいます。言葉の通り、風で揺れ動くかんざしのような装飾具で、特に貴族の女性が用いました。

嵌綠松石立鳳金飾件

豆知識：

唐の詩人白楽天の「長恨歌」に出てくる一節「雲鬢花顏金步搖」は、楊貴妃の美しさを描写しています。日本語では「雲のように豊かな黒髪、花が咲いたような美しい顔、きらきらと揺れ動く黄金のかんざし」と訳されます。

鎏金（りゅうきん）美術品：

鎏金（りゅうきん）とは、金属工芸の技法の一つで、水銀を使って金箔を金属の表面に焼き付ける鍍金（めっき）のことです。 

「鎏金十字折枝花紋葵口銀碟」と「鎏金雙鳳銜綾紋御前賜銀方盒」、1987年まで長安の地下に眠っていたそうです。歴史価値はもちろん、美術品としても素晴らしいです。

陶器：

唐三彩（とうさんさい）とは、中国の唐時代（７～10世紀頃）に作られ、釉薬を施した陶器です。主に緑、黄、白の三色（三彩）を基調とした色彩が特徴です。副葬品として貴族の墓に納められますが、高度な美術価値があります。

唐三彩は食器類だけでなく、動物と人間も多く発見されています。特に、馬とラクダが多いです。それは、シルクロードの影響だと歴史家が言っています。

この度、展示物から個人的な感情を引き出し、自分なりの経験と知識で書いてみました。読者のみなさんが時代や文化背景を理解し、歴史と文化的な意義を把握してくださったら、嬉しいです。

キリ
日本語教師で旅行作家。唎酒師と観光ガイド資格。特に日本が大好きで年に10回以上は訪れる。著書に『Kiri的東瀛文化觀察手帳』（2017）、『日本一人旅』（2019）、『爐峰櫻語：戰前日本名人香港訪行錄』（2022）、『爐峰櫻語：戰前日本人物香港生活談』（2023）、『悠遊日本』（2024）、『在水一方——在日本尋找中國歷史』（2025） がある。香港の誠品商務三聯などの書店で購入可能。

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