2023/03/19

前回のコラムは「思春期999」の前編として、思春期の身体と心、脳に何が起こっているのかを簡単にまとめました。
今回は、子どもの思春期に出会ったとき、親がどのような態度や心構えで居ると良いかについて考えます。ここで一つ前置きですが、それまでの家庭環境や親子関係によって、子どもにとって必要な対応は変わってくるということです。答えは一つではありませんので、それを念頭に読んで頂けたらと思います。以下、思春期の子どもに寄り添う際の親の態度や心構えについて、大切なことをまとめました。

 

1、ありのままの子どもを認める

まず、「今までと何か違うな」と感じたら、子どもをよくよく観察して欲しいのです。何に違和感を覚えるのか、何が今までと違うのか。そして、その変化を悪いものとせず、「面白い」という視点を持って受け容れてみる。「うるせえ」、「ウザイ」など言葉のレパートリーこそ増えていますが、言ってしまえば、幼児期の反抗期の高尚バージョンです。反抗期には、自分という存在を模索するが故に、その不安や脅威に対して「怒り」という感情を出すことで、「自分」を確認します。なぜなら、怒りほど自我に根差した感情は無いからです。自我全開の状態を見られるのは、この時期くらいかもしれません。子どもを認めることの中には、子どもの話に興味を持って聞く態度や、「おはよう」、「行ってらっしゃい」などの声掛けも含まれます。親が子どもを受け容れることで、子ども自身も、ありのままの自分を受け容れることを知り、自己肯定感を高める助けとなります。但し、ここは個人の性格による部分が大きいのも確かです。完璧主義傾向の強い子は、周囲がどんなに肯定的に寄り添っても、「こんな自分ではダメだ」と思ってしまうこともあります。それぞれの子に合った受容のカスタマイズが求められるという意味でも、「観察」が重要になります。

 

2、干渉し過ぎない/ 甘やかし過ぎない

ここは、特に今までの親子関係が影響してくる部分でもありますし、各ご家庭によってルールがあるので、匙加減が難しいところですが、ゲーム時間や帰宅時間のルール等の見直しが必要になるのも思春期の特徴です。家庭という安全な社会の中で、徐々に社会的責任を担わせることが必要になってきます。子どもの部屋が汚くて気になる……よ~く分かります。しかし、そこは親の管轄外と考えましょう。提出物が見当たらない? 明日着る体操服がない? “so what?” 。親は「見ざる、言わざる、聞かざる」の境地(笑)。同居する上での一定の責任を担ってもらう。「敢えて見ない」ことが、親の心の安定に繋がることもあります。何かを選択する際にも、手伝いや助言を求められたら、必要に応じて一緒に対処することは重要ですが、「自分が決めた」という実感を持たせることで、自分の人生に責任を持たせることも必要です。また、大人と同様に、子どものプライバシーを尊重すること。勝手に部屋に入ったり、カバンやスマホを見るようなことはしないことも大切です。

 

3、安心・安全基地としての居場所を作る

子どもは日々、学校や部活、塾などで複雑な人間関係に晒されています。多くの場合、思春期の子どもは、人間関係におけるスキルや経験がまだまだ不足しています。温かいご飯を作る、おやつを用意しておくなど、家を安心・安全な温かい場所にしておくことも大切です。

 

4、子どもの壁になる

思春期には、現実と空想のバランスが崩れているので、空想や妄想がすぐに現実と近くなり過ぎる傾向があります。そんな時、「壁」と言える、現実世界の親にぶち当たることで、現実を確認したくなるのです。怒りの発散は、時に親に当たることが目的ではなく、「自分が自分である」という感覚の求めでもあります。子どもからの率直な疑問やむき出しの感情をぶつけられた時、何となく避けたり、交わしてしまうのではなく、しっかりと受け止め、親が大人としての存在感を体現するだけで、落ち着きを取り戻すことがあります。

 

5、親が自分の世界を持つ

親は子どもにとって、社会の窓でありロールモデルです。親がエネルギーや時間を持て余していると、目にしなくても良い子どもの特定の部分が気になったり、必要以上に構ってしまいがちです。親は親で自分の世界を持ち、仕事や習い事に打ち込み、子どもとはかけ離れた人間関係、楽しみを持っているという姿は、子どもにとって、ロールモデルとなり、社会と自分との関係の持ち方、引いては、自分が社会で何が出来るのかを考えるきっかけを与えます。ご自身の楽しみを見つけ、輝いている親の姿を子どもに見せられると良いと思います。

 

心理学の世界では、個人が年齢に応じて発達するように、家族の形にも発達があるという考え方があり、子どもが思春期を迎える頃も、家族の一つの発達段階と言われています。変化は、人間の性質上、不安を掻き立てるものですが、新しい世界との出会いでもあります。学校の先生やスクールカウンセラー、同じ思春期の子どもを持つ親同士が助けとなることは言わずもがな、心の専門家として、お手伝いが出来ればと考えています。



河合 まり絵

臨床心理士。日本ではスクールカウンセラーとして、不登校児童や別室登校児童、発達に偏りのある児童への心理的サポートや、精神科クリニックで、パニック障害、PTSD、うつ病、摂食障害などの個別カウンセリングを実施。リワーク外来では、精神疾患などで休職中の患者に対し集団療法を、また、復職後の企業内フォローアップ・カウンセリングを実施。刑務所内では、グループ矯正教育をするなど、教育、医療、産業、司法の分野で臨床経験を積む。香港に移住してからは、3児の子育てに追われるも、縁あって精神科クリニックに復職。

 

OT & P Healthcare/ Mind WorX Clinic
MindWorXはOT and P Healthcareが運営する精神科専門のクリニックです。
中環駅(セントラル)から徒歩2分の場所に位置しており、簡単な日本語を話せる医師と、日本人の臨床心理士が在籍しておりますので、薬の処方と共にカウンセリングを並行して受けることが可能です。投薬はしたくないけれど、カウンセリングを受けたいという方もご相談下さい。

以下のようなことでお困りの方は、是非、一度、ご相談下さい。
・夜、なかなか眠りにつけない、または、朝、早くに目が覚めてしまいすっきりしない
・不安や心配な気持ちがいつも頭を離れない
・過度に食べ過ぎてしまう、または、食欲がない
・子育てに疲れている
・コロナ禍でストレスが溜まっている
・夫や妻、パートナーや他者との関係に悩んでいる など

初回予約の際に日本語でのサポートが必要な方は、marie.kawai@otandp.comにemail を頂ければ、日本語での対応が可能です。

Mind WorX Clinic
OT&P – Internationally Accredited Medical Clinics in Hong Kong (otandp.com)
6/F Century Square, 1 D’Aguilar Street, Central, HK
中環徳己立街1號世紀廣場6樓
Tel: +852 2468 3577
Fax: +852 2111 3850
Appointment WhatsApp: +852 6339 2639


 

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