2023/10/29
第5回のあらすじ
父親の逝去後に先祖代々の墓は墓じまいする予定だと知り、一から墓探しをすることになった。父親の故郷にお墓を決めて、親戚や友人が集った「人生を祝う会」を開くこともできた。遺産相続についても提出書類をそろえるのに海外在住のため時間も労力も必要だった。
外出の際に保険証と薬手帳は必ず必要
認知症の母は数か月間父が他界したことがわからず、メモリークリニックや総合病院でいくつもの脳検査を受けました。これも予約がなかなか取れず、指定された時間に行けるように夜中便でかけつけた日々。父が亡くなったというのを認知できるようになったタイミングにお墓参りに行きました。父のお墓は車で休憩を入れて片道約5時間かかるので、一泊する小旅行を計画しました。母の喜ぶ顔が見たくて。
が、お墓参りを無事済ませ、ホテルでのこと。夜中にドスンという音がして目を覚ましたら、母が床に倒れていました。フロントに電話して母がつまずいて転倒して動けないと説明すると、すぐに救急車を手配してくれました。夜中2時、受け入れ先の病院が見つからず、30分以上待つことに。認知症の人は慣れない場所は、どこにいるのかわからずパニックになることがあると後で知りました。
病院では大腿骨骨折のため緊急手術が必要だということ、ここで手術をして入院すると、地元の転院先がみつかりにくい可能性もあること、保険証とお薬手帳がすぐ必要であることを説明されました。入院書類を記入するのに、わたしは母の今までの病歴について知らないことに気づきました。椎間板ヘルニア、子宮摘出、大腸癌、、、何年何月にどこの病院でなど正確には覚えていません。
遠い土地での手術と入院
痛がる母を地元の病院まで移動して手術をするのはかわいそうなので、父の故郷の病院で手術と入院することに決めました。一睡もせず新幹線で往復して実家に保険証とお薬手帳を取りに帰り、かかりつけの医師に紹介状を書いてもらったところ、翌日の朝一で手術をしてもらえることになりました。「後期高齢者は入院そのものがリスクになり、高齢者が10日間寝たきりで過ごすと10年分の筋力が失われるというデータがある」、「若い健常者が入院するのとは違い、治療自体が成功したとしても、退院後の生活の質は今までどおりにはいかない」など高齢者の入院に関する資料は、心にとめておきました。ケアマネさんに事情を説明し、転院の時期や受け入れ先については入院している病院のソーシャルワーカーさんとケアマネさんとわたしで連絡を取り合いました。母はラインを使っておらず、入院した病院では面会はできなかったので約6週間は全く母の様子をみることはできませんでしたが、ソーシャルワーカーさんがメールで現状の説明をしてくださいました。母は自分がどこにいるのか、なぜ入院しているのかわかっていないようでした。
falkonhk
介護タクシーでリハビリ病院へ転院
転院先はリハビリテーション科がある総合病院ではなく、リハビリテーション病院にこだわりました。リサーチした病院リストをソーシャルワーカーさんに伝え、次々と空きがあるまで連絡をしてもらうモンスタームスメ。需要の高いリハビリテーション病院はウェイティングがありますが、診断名により保険でカバーされる入院期間が決まっているので、待っていれば必ず空きは出ます。ちなみに大腿骨骨折の場合、入院できる最長期間は3カ月です。
術後1か月半後、車いすごと入る介護タクシーに約4時間乗り、リハビリテーション病院に転院しました。これは保険ではカバーされません。母は思っていたよりかなり元気で、わたしのこともわかっていました。リハビリ病院では入院した瞬間から、退院後の生活のためのリハビリを始めるため、実家の道路から玄関までの段差やトイレの便座の高さ、廊下の幅や居間の床の状況などをすべて図り提出し、やはり病院は妥協しなくてよかったと感じました。
介護コンシェルジュが書いたおすすめの本
「家族みんなが笑顔になった介護の話」 福島真治著 秀和システム
元の生活ができるように家を整える
ケアマネさんのアドバイスで、家の中を母が暮らしやすいようにアレンジしました。
・骨折再発を防ぐため布団よりベッド、座布団より椅子
・寝室を1階に移す
・段差をなくす
・部屋のところどころにつまずいても支えられる棚を置いておく
介護保険の要介護1~5に該当すると、住宅改修も20万円まで支給されます。「介護保険居宅介護住宅改修費支給申請書」、「住宅改修が必要である理由書」、「完成後の状態を確認できる書類と写真」、「平面図」が申請に必要ですが、全部ケアマネさんにお願いして、手すりの取り付けと段差の解消をしました。
母は病院では優等生で一生懸命リハビリに専念したようで、入院生活3か月後、杖も必要なく、すたすたと一人で歩いていました。
今回の介護のポイント
① 高齢の親と外出するときは保険証とお薬手帳も持って行く
② 親が元気なうちに、過去の病歴を詳しく聞いて書いておく
③ 入院先のソーシャルワーカーとはラインやメールでつながっておく
グリーフ(悲嘆)に向き合えているかもわからないまま走り続けた一年間。
次回は最終回です。
りんみゆき
カノッサ病院日本人通訳/グリーフケアアドバイザー2級/メディカルアロマインストラクター
香港を含め30年以上の海外生活体験と語学力を生かし、香港では医療通訳としてカノッサ病院で活動する傍ら同病院の日本語ケアラインサービスという無料のお悩み相談窓口もチームの1人として担当している。趣味はマラソン。著書に「海外のいろんなマラソン走ってみた!」(2019年5月、彩図社)がある。
どんな小さなことでも1人で悩まずにご相談ください。
無料日本語ケアラインサービス
電話:2825-5849 (月9:00-13:00、水13:00-16:00、土10:00-12:00)
カノッサ病院への日本語によるお問い合わせ
https://www.canossahospital.org.hk/ja/
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