2025/10/10

Courtesy of Hong Kong Ballet

英国の劇作家シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」が、香港バレエ団によって10月17日から19日までの間５回上演されます。世界中で愛され続けているバレエ版の「ロミオとジュリエット」の音楽は現ウクライナ、ドネツクで生まれた20世紀最大の作曲家の一人、セルゲイ・プロコフィエフによるものです。彼の美しくも悲しい旋律、そして感情を揺さぶるドラマチックなディスソナンス（不協和音）が、舞台を盛り上げてくれること間違いありません。

Courtesy of Hong Kong Ballet

シェイクスピアの芝居の初演は1595年ごろと言われています。「ロミオとジュリエット」は社会に翻弄された若者の純愛と悲恋を描いたもので、その普遍的なテーマが翻案され、オペラ、バレエ、ミュージカル、映画などで幾度も制作されてきました。特に有名なのは1950年代のニューヨーク、マンハッタン・ウェストサイドを舞台にした、ミュージカル「ウェストサイド・ストーリー」です。富裕層の白人とそこに移民として生活するプエルトリコ人の確執の中で芽生えた敵同士のマリアとトニーの悲恋が描かれました。若者の感情のほとばしりと、行き場のない怒りを、躍動感あふれる歌とダンスで表現したミュージカルで、当時のアメリカのアカデミー賞を総なめにするほどの旋風を巻き起こしました。

Courtesy of Hong Kong Ballet

さて、香港バレエ団の「ロミオとジュリエット」が今回注目すべき作品なのは、バレエの古典「ロミオとジュリエット」ではなく、舞台が1960年代の活気あふれる香港だからです。総合芸術監督のセプティム・ウェバー氏は、これまでも古典「くるみ割り人形」を20世紀初頭の香港を舞台にしており、これらの作品は世界中探しても香港でしか見ることができない大変貴重な作品たちと言えるでしょう。

Courtesy of Hong Kong Ballet

ジュリエットの父は、社会的地位を上げるために一人娘の意に反して裕福な西洋人に嫁がせようとする執念深い上海の大物であり、ジュリエットがすでに彼の最大の敵の息子に心を奪われていることを知りません。対立や恨みの中で、若きロミオとジュリエットは、彼らの愛を成就するために運命に抗います。

Courtesy of Hong Kong Ballet

2023年のニューヨークとノースカロライナでの凱旋公演では高く評価され、2025年９月には韓国国立劇場で開催された「香港ウィーク2025＠ソウル」のオープニングも飾りました。舞台では初々しいロミオとジュリエットだけでなく、ギャング間の対立や、カンフーにインスパイアされた迫力あるストリートバトルもあります。カンフーの振付を実現するために、団員は武術の達人であるヒン・チャオ氏と国際武術協会（International Guoshu Association）のカンフーマスターたちに学び、ダンス、ドラマ、武術を融合させて、唯一無二の作品を創り上げたのです。

Courtesy of Hong Kong Ballet

もう一つのハイライトは、衣装デザイナーのマンダイ・タム氏による華やかなチャイナドレス（旗袍：チーパオ）を含む280着以上の鮮やかなコスチュームと、舞台美術のリッキー・チャン氏のリアリティーと迫力ある香港の舞台セットです。ネオンライトに照らされた竹壁のある通りや麻雀賭博場などの世界が作られています。ぜひ、こちらにも目を向けて鑑賞していただくことをおすすめします。

香港発のオリジナリティー溢れる舞台は、プロコフィエフの心に残るダイナミックな音楽スコアに伴われ、息を呑むようなダンスと力強い物語で、愛の美しさと儚さ、そして時代を超えて憎しみの愚かさを教えてくれます。ここでしか見られない香港バージョンの「ロミオとジュリエット」をぜひご覧ください。

香港バレエ団のプリンシパルダンサー高野陽年さんのコラムもお読みください。
今日も僕は踊り続ける ～バレエダンサーの日常～　第８回　シェイクスピアか？ 記号としての「ロメオとジュリエット」

Courtesy of Hong Kong Ballet

Romeo + Juliet by Hong Kong Ballet

公演：
17.10.2025 (Fri) 7:30pm*
18.10.2025 (Sat) 2:30pm^ & 7:30pm*
19.10.2025 (Sun) 2:30pm* & 7:30pm^

チケット：
*$1,200 (Limited VIP Tickets) $760, $560, $400, $260
^$1,000 (Limited VIP Tickets) $680, $480, $320, $180
Half price for local full-time students and senior citizens

会場：Grand Theatre, Hong Kong Cultural Centre
公演はおよそ２時間15分 （休憩含む）
6歳以上

制作チーム
Choreography: Septime Webre
Music: Sergei Prokofiev
Costume Design: Mandy Tam
Set Design: Ricky Chan
Assistant Set Design: Ryan Lo
Lighting Design: Ruby Yau
(based on original lighting by Billy Chan)
Sound Design: Allison Fong
Dramaturge: Yan Pat To
Make-Up Design: M•A•C Cosmetics
Martial Arts Advisor: Hing Chao
Martial Arts Partner: International Guoshu Association