2025/10/22
セラミックアーティスでトルコ人の生徒Tugbaさん。しぼりを解いたばかりで、初めて見る素敵なしぼり染めににっこり。
日本人のわたしたちが海外にいると、現地の人に日本文化について聞かれる機会が多々ありますね。でも「日本人なのに日本のことは何も答えられず愕然とした」という声を時々耳にします。今回ご紹介するのは、香港にいても日本と同じように、いえそれ以上に日本文化のひとつである本格的な「しぼり」を使った藍染を習うことができる場所です。
「しぼり」は現在、西洋人東洋人問わず人気で、その深いインディゴブルーにさまざまなパターンが浮き出る素晴らしい見た目に心を奪われる人が多く存在し、比較的、気軽に取り掛かれることから、世界中でハンドメイド愛好家に人気の手法です。このワークショップでも、縫いしぼり、手しぼり、棒しぼり、板締めなどと、レベルにより色々作れるようになります。日本人にとっては帰国したとしても、たくさんの愛好家グループや協会などがあるので、そういうところに所属し、継続して一生楽しむことができそうです。
さて、今回は、筆者が九龍の黄大仙(ウォンタイシン)にあるClayhausさん主催の、「しぼりワークショップ、レベル1」というクラスを、受講した体験を交えてご紹介したいと思います。
Clayhausを運営するEricさんとLorraineさん。さまざまなアート系ワークショップを開催しており、しぼりのクラスは藍染研究家のエリックさんが開催している。Clayhausスタジオの前で。
2012年から現在の場所でクラスを開催するClayhausでは、4週間(週1回、1回4時間)のワークショップで学びながら作品を作ります。しぼりのクラスは全部でレベル7まであり、広東語と英語のクラスがあります。今回筆者は、英語クラスに参加させてもらいました。クラスメートは、トルコやフランスやインドなど、世界中から集まった国際色豊かな面々。皆さんハンドメイドが好きというだけあって、とっても熱心に受講されていました。
クラスの内容はとても充実していて、とにかく情報量と実技が満載。さまざまなしぼりのテクニックや、ちょっとしたコツなどを学べて、「しっかり学んだ!」という満足感が得られます。
クラスは、10人以下の少人数制。英語のクラスはEricさんの愛弟子のSarahさんが英語で教えてくれます。
クラスは4時間なので、巷のワークショップに比べると長め。それでもあっという間に時間が過ぎていきます。このクラスの素晴らしいところは、全くの初心者でも、裁縫が苦手でも、問題なく参加できて楽しめるということ。そして英語がそこまで得意じゃなくても見て理解することもできるという点が挙げられます。英語の環境に身を置きながら趣味をやってみたい人におすすめできます!
制作:Liz Yuensさん
週を追うごとにさまざまな技法を解説してくれるので、パターンを見ると点と点が繋がるようにどうやって作っているのかがだんだんわかってきます。たくさんの事例をスライドで見れたり、クラスメートの作品にも大いに刺激を受けます。
毎回クラスは、先生のレクチャーの後に、実践に入ります。布、針、糸など全て用意してくれるので、生徒は手ぶらで参加できます。クラス内で終了しない場合は、宿題として持ち帰れるので、プレッシャーも少なめ。また、意欲的な生徒は、好きなサイズの布を別途購入して家で制作し、できたら次のクラスで染めることもできます。
国際色豊かなクラス。しぼりのデザインを真剣に考え中の皆さん。
さて、香港でしぼりを使った藍染の啓蒙活動を務める主催者のひとりで、藍染研究家のエリックさんが、藍染に魅せられたのは小学生の頃だそうで、両親が雲南旅行から持ち帰った布を見たときだそうです。その美しさに魅了されてからというもの、この昔からある藍染について、古代中国の文献や日本の書籍、オンライン上でのあらゆる情報を通して、技術をはじめ、視点、解釈などを独学で学びました。古代技法の詳細な分析を行い、自身でかみくだいた方法を、よりアクセスしやすく理解しやすい形で、ワークショップの参加者に教えています。また、日本で開催するしぼりワークショップを通して、日本の職人と親睦を図るなど意欲的に文化交流の活動もしています。
ちなみに、彼が制作した作品はこちら。
藍染:Ericさん。仕立:Vicky Au-Yeungさん。
ワンピースは、エリックさんが染めたものから仕立てたもの。染めた布で、バックやのれん、シャツなどを作ることもできます。
このワークショップでは毎回必ず下準備した布を自分で染めるハイライトがあります。
日本の藍染はタデアイという草を乾燥させた後、100日かけて発酵させて「スクモ」という原料にします。そこにアルカリ性の石灰や木灰、酒、小麦の外皮「ふすま」を加えてさらに2週間発酵させることによって染液が完成します。化学薬品など一切使わずに発酵の力だけで作る染液は、お料理のようですね。
ぶくぶくしているのが藍が生きて発酵しているサイン。染液はEricさんの調合によるもの。
藍染は昔から、抗菌作用、防虫効果、消臭・保温、紫外線防止、消炎や解毒、止血作用などがあるとか。防虫効果があるので昔は着物などを藍染の風呂敷で包んだり、藍染の足袋を履くとヘビ除けの効果があったという話もあります。これは藍に含まれる「トリプタンスリン」という成分のためだそうです。
左:筆者 右:Jacquelineさん
藍染は色の濃淡を出すには塗り重ねるという方法をとります。布を15分程度漬けたら染液から出します。空気に触れると黄緑になり、水洗いすると青く変化します。これを何度が繰り返すことで、青の濃淡を調整していきます。
スタジオのマスコット犬のKobe君も時々「どんな感じ?」と様子を見にきてくれます。生徒のドタバタには慣れたものです。
Jacquelineさんのしぼり
染めの過程には大量の水が必要になるので、スタジオでは路地裏を使って染めていきます。何度も染めを繰り返し、丁寧に洗い終えたら、しぼりを解いていきます。この時が一番ドキドキするときですね。
クラスメートと。右端からSarah先生、生徒のTugbaさん、Tugbaさん、Angieさん、筆者、Jadeさん、Dinoraさん、Jacquelineさん、オーナーのLorraineさん
今回、1回4時間のクラスを4回、合計16時間を共有した先生とクラスメート。できた作品を皆で鑑賞する時間も創作クラスの醍醐味です。香港で体験するしぼりクラスはとても新鮮で大変貴重な経験でした。
ちなみに最後に染め上がった作品は、自宅に持ち帰り、塩と酢に漬け込んだ後に水洗いし、色が落ち着いたら乾かします。さまざまな染め方を習ったので、その課題を応用して作ったものがこちら(写真下)。乾くとほのかに藍染の良い香りがします。今後は手拭いとして使う予定です。

Clayhausでは、しぼりクラスは継続して行われているものの、1年に数回の開催で不定期クラスです。現在発表になっているクラスは以下の通り。少人数クラスなので、興味ある方は早めに席を確保することをおすすめします。
日本のしぼりワークショップ (英語) Level 1:
開催日:2025年 11月8日, 15日, 29日 & 12月 6日
時間: 10:00-14:00
費用: HK$1980 (含:4レッスン、布)
日本のしぼりワークショップ (広東語) Level 1:
開催日: 2026年1月 4日, 11日, 18日 & 25日
時間: 10:00-14:00
費用: HK$1680 (含:4レッスン、布)
日本のしぼりワークショップ (英語) Level 2:
開催日: 2026年1月 17日, 24日, 31日, & 2月7日
時間: 10:00-14:00
費用: HK$1980 (含:4レッスン、布)
注意: 洋服に染液が付く可能性がありますので、汚れても良い衣服で。エプロン持参推奨。指が青くなりますので、気になる方は手袋を用意してください。昼食休憩はありません。必要であれば、各自必要なスナックなどを持参して合間を見つけて自由に食べてください。
会場: The Clayhaus – G/F, 32 Tsui Fung Street, Wong Tai Sin
地図はこちら
詳細、質問はClayhausインスタよりどうぞ。
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