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2026/07/04

2026年、世界中で愛され続ける不朽の名著『星の王子さま』がフランスで出版されてから、80周年を迎えました。これを記念し、香港大学美術博物館(UMAG)とアリアンス・フランセーズ香港の共同主催による特別展「星の王子さまとパイロット(The Little Prince and the Pilot)」が幕を開けました。

本展は、単に「かわいいキャラクターとしての星の王子さま」を愛でるだけのファンシーな展示ではありません。物語の著者でありながら、激動の時代が現役の戦闘機パイロットとして駆け抜け、最終的には空へと消えた伝説の男、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900–1944)のドラマチックな生涯と、彼の「リアルな実体験」がどのように名作へと昇華されたのかを紐解く、極めて重厚で見ごたえのある展覧会です。日本人にも長く愛されてきた『星の王子さま』の裏側を知る貴重な機会になるでしょう。

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリと妻のコンスエロ、航空ショーを訪問 Courtesy of 香港大学美術博物館

展示会は、サン=テグジュペリの生涯をたどる旅形式で構成されており、「幼少期」「パイロットとしてのキャリア」「『星の王子さま』の誕生」という3つのセクションを巡るテーマ型の旅として紹介されています。会場では来場者はサン=テグジュペリの並外れた旅路をたどる旅人となります。展示されているのは、彼が作家・画家・パイロット・探検家・人道主義者、そして「1人の不完全な人間」として、戦争の時代に生きた証拠である貴重な遺品の数々です。

サン=テグジュペリによる『星の王子さま』の直筆スケッチ Courtesy of 香港大学美術博物館

人間、サン=テグジュペリの素顔が垣間見える、彼の幼少期の家族の形見や、親しい友だちとの深い絆を物語る私的な手紙、直筆のスケッチなどが並びます。また、空に命を懸けた、現役の飛行士、そして戦時中の偵察機パイロットとして空を飛んでいた彼が実際に使用していた地図や飛行記録、軍の遺品、精度、そして彼の身体の一部でもあった軍用コートといった私物も展示。航空界への先駆的な貢献を果たしたパイロットとしての、スリリングで孤独な世界観がリアルに伝わってくるでしょう。

  • 📌 展示品に刻まれた言葉 「おとぎ話を書いてはいけない。わたしは飛行機の物語を書くつもりだ」 ——サン=テグジュペリが、最初の熱烈な恋人であり婚約者であった“ルル”(ルイーズ・ド・ヴィルモラン)に宛てた手紙に遺したこの言葉は、彼の創作の原点が「現実の空」にあったことを強く物語っています。(画像資料:Courtesy of 香港大学美術博物館)

さて、ここで『星の王子さま』を読んだことがない人のために、簡単にストーリーをご紹介しましょう。

サハラ砂漠に不時着した飛行士の「わたし」は、小さな小惑星から旅してきた不思議な男の子「星の王子さま」と出会います。王子さまは、自分の星に残してきたわがままで愛おしい1輪のバラの花と喧嘩をして、旅に出たのでした。王子さまはいくつかの星を巡る中で、権力にこだわる王様や、数字ばかりを気にするビジネスマンなど、奇妙な大人たちに遭遇し、彼らの価値観に戸惑います。7番目に訪れた地球で、王子さまは1匹のキツネと出会い、「本当に大切なものは、目に見えない」という重要な秘密を教えられます。キツネとの交流を通じて、自分が残してきたバラの花への責任と、それが自分にとってかけがえのない存在であることに気づいた王子さまは、元の星へ帰ることを決意します。

惑星の上で、マフラーを風になびかせながら椅子に座る星の王子さま Courtesy of 香港大学美術博物館

会場では、オリジナルの原稿やデッサン、貴重な初版本、精度、そして世界中で翻訳された多言語の翻訳本が集結しています。デザイン画の変遷や作中の引用を追いかけることで、観客は星の王子さまというキャラクターの最初のコンセプトや創作の背景、さらには編集や出版プロセスの詳細を探求することができます。

実は、作中で飛行士がサハラ砂漠に不時着するエピソードは、サン=テグジュペリ自身が1935年に経験した「砂漠への墜落事故と奇跡の生還」がベースになっていると言われています。極限状態の砂漠で彼が見つめた「目に見えない大切なもの」とは何だったのか。そんなことにも思いを馳せながら展覧会を味わうと、よりこの物語の素晴らしさを感じることができるでしょう。

展覧会で目を見張る作品が、香港限定の物語が現実になる8体のカラーフィギュアです。『星の王子さま』の印象的なシーンからインスパイアされたこの立体作品は、絵本の中からそのまま飛び出してきたかのようなクオリティ。砂漠で出会ったキツネや、自分の星に残してきたバラの花など、おなじみの世界観が現実の空間に再現されます。来場者は、王子さまと並んで写真撮影をすることができ、生涯の思い出となる1枚を残すことができます。 なお、これらの彫刻はコレクターや熱心なファン向けに先行予約も受け付けており、サン=テグジュペリの文学的遺産を形として手元に残せる、またとない貴重な機会となっています。(写真:Courtesy of 香港大学美術博物館)

Courtesy of 香港大学美術博物館

これらの貴重な展示品は、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの玄孫(やしゃご)であり、サン=テグジュペリ=ダゲイ家族財産の代表を務めるアドリアン・ジロー氏の尽力なくありえませんでした。世界各地でサン=テグジュペリの展覧会や文化的取り組みを精力的にサポートしているジロー氏。今回、開催に向けて、彼がフランスより香港大学美術博物館へ駆けつけました。 彼の来港は、単なるセレモニーとしての意味合いだけでなく、サン=テグジュペリが命を懸けて遺した生涯、彼が物語に込めた「目に見えない大切なもの」というメッセージ、そして文学的遺産を、国境を越えて21世紀の新しい世代へと正しく継承していくという、一族の強いコミットメントと情熱の表れでもありました。

香港大学美術博物館では、より深い学びのために、学校や団体向けの特別ガイドツアーが手配可能。また、香港大学による教育ワークショップ、アリアンス・フランセーズ香港の3つのセンターでは、本展と連動したテーマ別のフランス語講座やキッズ向けのサマーキャンプなども多数開催される予定です。

この夏、きらびやかな香港の街で、かつて遥かなる空を見上げ、砂漠の星に想いを馳せたパイロットの、美しくも孤独な魂の物語に触れてみませんか?


The Little Prince and the Pilot
会期: 2026年6月26日(金)~10月18日(日)
開館時間:火曜日~土曜日:9:30~18:00|日曜日:13:00~18:00|※月曜日、祝日、大学の休日は休館
会場: 香港大学美術博物館(UMAG)徐展堂楼1階(1/F, T. T. Tsui Building)
住所:90 Bonham Road, Pokfulam, Hong Kong
入場料: 無料(入り口は馮平山楼のG階/地上階となります)

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