2021/06/15

嫲嫲的豉油雞
 (マーマー ディ シ ヤウ ガイ)
【祖母の甘辛醤油チキン】

香港人は肉が好きです。私も肉が大好きです。食事に肉がないと、とてもとても物足りなく感じてしまいます。よく香港の焼き物(ロースト)専門店:「焼味店」(シウ メイ ディム)の窓から吊り下げられた「叉焼」(チャーシュー)、「焼肉」(シウ ヨク 豚のバラ肉パリパリ皮ロースト)、「豉油雞」(シ ヤウ ガイ 醬油チキン)、「焼鵞」(シウ ンォ 焼きガチョウ)など、見たことがありますか?  ロースト肉を手軽にテイクアウトできる「焼味店」は香港中にたくさんあります。しかも、ほとんど「尾頭付き」のもので見慣れてない日本人の方も多いでしょう。肉の中でも、鶏は香港人が大好きな食材です。
鶏は香港飲食文化の中で重要な役割を担っています。
1.大きい季節行事で祭壇にて先祖に供える必須アイテムです。広東語でこの様な「ことわざ」があります。「拜神唔見雞」(バイ サン ン ギン ガイ)とは、「祭壇に鶏がないと慌ただしい」という意味からも、鶏の重要性が分かります。
2.伝統行事食として鶏の丸ごと一羽は必ず登場する食材です。香港人の文化では一家で集まって食事をする伝統行事はとても重視されています。そんな家族団らんのために必ず鶏がないといけないです。鶏は贅沢なご馳走のシンボルであり、おもてなしに欠かせない食材です。昔、貧しかった時代の香港家庭で、普段の日は鶏を食べたくても食べられなかったです。鶏まるごと一羽が食卓に出るのは特別な日だけでした。当時、鶏一羽の値段は一般サラリーマンの一ヶ月の給料ほど贅沢なご馳走でした。
香港人は生きた鶏を好み、私が小さい頃、祖母の親戚は田舎から生き鶏を籠に入れたまま、うちのマンションまで持ってきた時が何度もありました。一般の日本の方は生きた鶏を絞めた経験がないでしょうね? 祖母が生きた鶏を絞めたのを何度も目にしました。ここまで読んでくださった方がいらっしゃるなら、悲鳴を上げてるかもしれませんが、生きた鶏から直接調理した味は別格です。
香港の鶏の中に「三黄鶏」(サム ウォン ガイ)という品種があり、足・口・皮が黄色なのでこう呼ばれています。この品種は香港人にとても人気があります。皮は厚くて、肉の味は濃くて、肉も柔らかく、日本にはない味です。 香港では生きた鶏の値段は冷蔵や冷凍鶏より更に高いです。鳥インフルエンザの影響で香港の生きた鶏はかなり減りましたが、やはり香港人は生きた鶏を重宝しているので、生きた鶏を売り場でその場で絞めてから販売することがまだあります。政府は生きた鶏の売買文化を残すために、膨大な資金を使って、徹底的に鳥インフルエンザを発生させないように予防対策を採用しました。まさに、ウィルスより「口福」が重要です! 鶏の重要性は香港でどれだけ大切なのかは、一目瞭然です。

日本ではなかなか「三黄鶏」は手に入りませんが、丸ごとの鶏はクリスマス時期以外にも最近一般スーパーで売られるようになり、鶏の丸ごとを調理するのも、骨ごとの鶏を食べるのも、香港料理の特徴ですから、骨付きチキンがあるだけで、感謝しています。
祖母の得意料理は「豉油雞」ですが、香港の「焼味店」のように、鶏を調味料に漬ける調理法でなく、祖母の故郷の作り方は日本の照り焼きチキンに似てます。香港の料理名は同じであっても、家庭により作り方と味付けも違ってきます。要するに、「おうちの味」とは、それぞれの家庭の味ですので、全く同じ味にはなりません。もう一度、香港の「三黄鶏」を食べたいなぁ・・・。

Tips: 表面に深いキャラメル色を出すために、香港の溜り醤油(老抽・ロ チャウ)を使うのはおすすめで す。鶏一羽ごとを煮るので、大き目の鍋や中華鍋を使ったほうが良いです。

 

材料 (4人分)

鶏丸ごと一羽………  約1kg

香港溜り醤油(老抽)……….  1大さじ

紹興酒………  2小さじ

 

煮込み用材料:

葱…………………..  1/2本

生姜……………………..  30g

にんにく……………………  10g

醤油…………………….  100cc

きび砂糖……………………  65g

水………. 100cc

<作り方>

1.鶏は記載分量以外の適量の日本酒にて揉み洗いし、その後キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取る。溜り醤油と日本酒を合わせて鶏の表面に満遍なく塗ってから、ラップをして冷蔵庫で3時間寝かせる。

2.生姜をスライスして、葱も斜め切りにしておき、にんにくを潰しておく。

3.記載分量以外のサラダ油大さじ3を鍋に入れ、弱火から中火で鶏の表面を軽く焼き、取り出す。そのまま鍋にある油を大さじ1ほど残し、生姜、葱、にんにくを香りが出るまで炒めて、火を消す。生姜、葱、にんにくは鶏の中に詰める。

4.醬油、きび砂糖、水を鍋に入れ沸騰させ、鶏の胸のほうを 下にして鍋に入れ、弱火で12分煮る。ひっくり返し、背中のほうを下にし、弱火でさらに12分煮る。

5.粗熱を取ったら、切り分けます。手羽のところをまずは落とします。次にモモの部分を落とします。ハサミでバキバキっと胸肉の部位と背中の部分を二つに分けます。胸の部分のまん中から切り分けてから、1.5cmの間隔で切り分けます。綺麗にお皿に盛り付けて、煮汁をちょっとかけて出来上がりです。

 

 


雲姐(ワンジェ)

料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。

人在東京 Prime Kitchen Labo

 

 

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