2022/01/15

茄汁煎蝦碌

(ケ ジャップ ジン ハ ロック)

【香港家庭風ケチャップエビ香味炒め】

 

いくら香港が好きであっても、いくら香港のレストランをよく知っている「超級香港迷(スーパー香港ファン)」であっても、香港の家庭でしか食べられないものまで深く知ることは難しいでしょう。香港は中国全土、主に中国広東省出身の人々が集まった地域。そのため各々の食文化を交差させるあまり、現在の香港料理から元の文化を紐解くのは大変困難です。例えば、日本では地方によって、味噌汁で使う味噌は様々で、具材も違うし、全国の味噌汁を知ることは無理であるのと同じ理屈です。
但し、長く香港で暮らしていると、だんだん市民たちは香港の一般的な食文化を取り入れ、旧正月のメニューはなんとなく似たようなパターンになってきた背景があります。日本と同じく、お正月のメニューは必ず縁起が良いものを用いて、一年の始まりには多くの福を迎えられる年になるように願います。
縁起がいい食材はたくさんあり、「蝦」は必ず登場する食材の一つ。「蝦」の広東語は「哈(ハ)」と言い、「哈哈大笑 (ハ ハ ダイ シウ)」の意味で、「笑う門には福来る」という日本のことわざの意味と似ています。英語にも、「Fortune comes in by a merrygate」という表現があり、笑い声が満ち、和気藹々とした家には、幸福が巡ってくるという意味です。笑うと幸福が訪れるのは世界的な共通点みたいですね。
実家では、大晦日の夕飯:「團年飯 (トゥン リン ファン)」は元旦の食事よりも一番大事にしていました。家族全員が揃って食べると、来年の一年は「円満」になるというニュアンスでしょう。「嫲嫲 (マーマー)」(祖母)はよく「茄汁煎蝦碌(ケ ジャップ ジン ハ ロック)」(香港家庭風ケチャップエビ炒め)を作りました。ニコニコよく笑う家や人には、自然と幸福が舞い込むことでしょう。
香港は世界各地から色んな蝦を手に入れられる場所です。この料理に限り、蝦はうちでは超特大有頭蝦にしています。どのくらいデカい蝦かというと、一尾あたり500mlペットボトル程の長さとペットボトル半分の太さがあるぐらい大きいサイズのもの。サイズが大きく、「嫲嫲 (マーマー
)」は長く加熱するので、結局パサパサになってしまいます。子どもの時、この蝦が出た瞬間に眉間にしわが寄ります。蝦がパサパサで食べたくないのです。皮肉な話で、その様な蝦を食べても嬉しくなく、笑わない! 「哈哈大笑(ハ ハ ダイ シウ)」にならない。
この料理の名前を分析してみましょう。「茄汁」とはケチャップのこと、戦後にアメリカから国際大都市である香港に伝えられてきたのでしょう。「煎」とは炒めるの意味で、「碌」の漢字の本来の意味は忙しい!どうして海老は忙しいの???
「碌」と広東語発音は「轆」と同じ、「轆」の意味は太い棒状のものを説明する単位。「轆」の書き方は難しいから、同じ発音の「碌」にしたのではないかと思います。ですので、我が家がこのメニューで必ず超特大有頭蝦を使う理由とは、棒ほど太さがないと「轆」にふさわしくないからです。「蝦碌」というメニューを見ると「頭付き、殻付き、デカい海老」が出てくるだろうとイメージします。
日本ではなかなか超特大有頭蝦がないので、今回は頭付きの赤えびにしました。

 

Tips: 蝦を加熱し過ぎないように、蝦のプリプリ感を残すようにしましょう。ブラックタイガー、大正えびは殻が硬いので片栗粉をまぶして炒めたほうが良いです。赤えびは殻が薄く、片栗粉をまぶさなくても良く、殻ごと食べられます。今回は生食用の赤えびを使いましたが、殻ごと食べることが出来て美味しかったです。味は蝦の殻に絡んであるので、殻ごと食べられると美味しいです。

 

材料 (約5尾)

有頭赤えび 約1尾15cm ………….5尾

 

<ソース>

 ケチャップ………………….1大さじ

OKソース……………………1大さじ

醤油……………………………1小さじ

*1甘麴……………………………1大さじ

(無ければきび砂糖1小さじ+お湯1大さじ)

胡椒……………………………..少々

 

*1甘麴は麹:水  1:1

 

<薬味>

葱の白部分…………………………… 10g
(みじん切り)

にんにく………………………………. 5g

(みじん切り)

生姜…………………………………….. 5g

(みじん切り)

仕上げごま油……………………….. 少々

 

作り方

 

〇 蝦の下処理

蝦の殻を剥かないで!キッチンばさみで蝦の

● 頭のとがったところ
●目
●足
● ひげ
● しっぽのとがったところ

を全部切り落とす。

殻ごとで食べるので、口に入っても口内を傷つけることがないようにしましょう。
蝦の尻尾から1節目と2節目の間に楊枝を浅く刺して背ワタを引っ掛け、ゆっくり丁寧に取り出す。
蝦に分量外の塩を少々加え、冷水を貯めたボウルの中で、軽く揉み洗い、蝦の汚れを落とす。頭は落としやすいので、落とさないように丁寧に洗うことがポイント。
洗い終わったらキッチンペーパーでしっかり水気をふき取る。そのまま、キッチンペーパーで包んで冷蔵庫で2時間置く。冷やした蝦を加熱すると、よりぷりぷりになる。

〇 作り方

1 ソースを全部合わせておく。
2 フライパンを熱し、強火にし、分量外のサラダ油2大さじを加え、 冷たい蝦を入れ、片方の色が変わったらすぐ反対も焼く。蝦は7分目まで加熱する。その後取り出す。
3 綺麗なフライパンを熱し、弱火にし、分量外のサラダ油大さじ2を加え、薬味をいれ、じっくり炒め、香りが出てきたら、ソースを加え、中火にし、沸騰したら2の蝦を入れて、手早くソースを絡めて、最後にごま油を少々たらしたら出来上がり!

 


雲姐(ワンジェ)

料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。

Instagram
@hongkongrecipe

note「レシピ保護区」
https://note.com/recipesanctuary

人在東京 Prime Kitchen Labo

 

 

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