2025/01/15

龍蝦芝士生麵

(ロン ハ ジ シー サン ミン:廣東語発音)
濃厚チーズソースの伊勢海老生パスタ

香港人にとって、お正月の食事は特別な意味を持つ重要な行事です。家族が集まる「年越しの食事」では、出される料理一つひとつに縁起の良い意味が込められ、新しい一年の幸運と繁栄を願う大切な場となります。食事は単に空腹を満たすだけでなく、願いや期待を象徴する存在として捉えられています。

伊勢海老は、祝い事の食卓によく登場する食材です。広東語で『龍蝦』(ロンハ)と呼ばれ、「龍」という文字が含まれていることから、中国文化において非常に縁起の良い象徴とされています。『龍馬精神』(活力に満ちた精神と健康)を意味し、調理後の鮮やかな赤色は喜びや幸福、さらには豊かさを表現しています。

また、『蝦』は、広東語で「哈哈」(ハハ)という笑い声に似た発音であることから、縁起物として欠かせない存在です。「哈哈大笑」(ハハと笑う)に通じるため、龍蝦料理を食べることで新しい一年が笑顔と喜びに満ちたものになることを願います。

香港では、伊勢海老を使った人気料理の一つに、伊勢海老のチーズソースをかけた『伊麺』があります。『伊麺』(イーミン)は、広東料理でよく使われる中華麺の一種で、丸みのある軽く縮れた形状が特徴です。油で軽く揚げた乾燥麺で保存性が高く、調理時に茹でるだけで使える手軽さがあります。茹でた後はコシがあり、滑らかな舌触りが楽しめます。たっぷり濃厚なチーズソースに伊勢海老を絡めたこの料理は、お正月だけでなく、特別な祝い事にもよく登場する華やかな一品です。

伊勢海老はお祝い事や特別な日に食べられる高級食材であり、普段の食卓には滅多に登場しません。しかし、1989年にはある出来事をきっかけにオーストラリア産伊勢海老の価格が急落しました。それは昭和天皇の崩御です。

当時、日本全体が深い哀悼の意を表し、特に1年間の「喪」に入る期間中、祝い事や派手な行事が控えられました。この影響で伊勢海老をはじめとする高級食材の需要が一時的に激減し、日本が主要輸入国であったオーストラリアでも価格が大幅に下がりました。その結果、オーストラリアでは伊勢海老が魚よりも安価になり、一般家庭でも気軽に楽しめる時期がありました。

わたしの父もこの恩恵を受け、毎日のように伊勢海老を買ってきて捌いていました。その光景は今でも鮮明に思い出されます。子どもだったわたしは父の姿を見て育ったため、生きた伊勢海老を見ても抵抗がなく、自然と自分で捌き、料理する技術を身につけました。

お正月の食卓に登場する伊勢海老料理は、家族との団らんを豊かにし、新しい一年の幸運と繁栄を願う象徴です。

 

Tips: 今回のレシピは伊麺の代わりに生パスタを使いました。

 

材料(2人分)

生伊勢海老 1匹:約300g

生パスタ:100g

 

伊勢海老の出汁

生姜みじん切り:2枚

にんにくみじん切り:1片分

玉ねぎみじん切り: 80g

水:500ml

 

チーズソース

バター:50g

玉ねぎみじん切り:50g

にんにくみじん切り:15g

薄力粉:2大さじ

上の伊勢海老出汁

生クリーム:100ml

ミックスチーズ:30g

白胡椒: 少々

 

下準備

伊勢海老の捌き方

●生きている伊勢海老は力強く動くため、ビニール袋に入れて冷凍庫で30分冷やし、動きを止める。キッチンバサミを使い、伊勢海老の長いヒゲを切り、尾の先端や不要な足も切り落とす。足は一口サイズに切り分けて取っておく。

●まな板に伊勢海老を仰向けに置き、キッチンバサミで頭と胴体の境目(殻の合わせ目)に切れ込みを入れ、頭と胴体を分離する。頭をまな板に押さえ、胴体をひねりながらゆっくり引っ張ることでスムーズに分ける。胴体の薄膜を切り離し、胴体を一口サイズに切り分けておく。

●頭の裏側の柔らかい部分をキッチンバサミで切り開き、内部を簡単に取り出せるようにする。切れ目に指を入れて殻を左右に開き、ハサミを使って殻を割る。割った頭を取り分け、中央に詰まっている「味噌」を小さいスプーンで丁寧に取り出し、取っておく。

 

伊勢海老の出汁の作り方

●切り分けた伊勢海老の胴体に軽く塩胡椒をふり、分量外の片栗粉をまぶす。鍋を熱して多めのサラダ油を入れ、伊勢海老をサッと炒め、油を切って取り出す。

●綺麗な鍋を用意し、中火で分量外の油大さじ2を熱する。生姜、にんにく、玉ねぎを炒めて香りを出し、伊勢海老の殻や足を加えてこんがりと炒める。水を加え、沸騰したら弱火で15分煮る。煮出したスープを濾し、出汁を作る。

 

チーズソースの作り方

●綺麗な鍋を中火で熱し、バターを溶かす。玉ねぎとにんにくを香ばしく炒めたら火を止め、薄力粉を加えてよく混ぜる。伊勢海老の出汁を少しずつ加えながら混ぜ、強火で沸騰させる。一度火を止め、生クリームを加えてさらに混ぜる。再び中火で加熱しながらチーズを加え、溶かす。最後に伊勢海老の肉と味噌を戻し、ソース全体に絡める。

●茹でて水気を切った生パスタを鍋に加え、ソースを絡めるように全体を混ぜ合わせて、味見して塩胡椒で味を整えたら完成。

 


雲姐(ワンジェ)

料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。

Instagram
@recipesanctuary

note「レシピ保護区」
https://note.com/recipesanctuary

YouTube

Recipe Sanctuary レシピ保護区 食譜保護區

 

人在東京 Prime Kitchen Labo

コメントをありがとうございます。コメントは承認審査後に閲覧可能になります。少々お待ちください

意見を投稿する

Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。

Translate »