2023/10/10

こんにちは。沙季です。

5歳の息子と、フィリピン人ヘルパーさんと3人暮らしをしながら、日本食レストランのメニュー開発をしているワーキングマザーです。

 

生きていれば傷はつく

突然ですが皆さん、今までの人生で何度傷ついてきたか覚えていますか?

おそらく、大小含めると数えきれないと思います。

 

人生は突然、傷ついたり、割れたり、壊れたりします。

そんな時、無かったことにしたくてもできませんし、

壊れたからと言って、今の人生を捨てて新しい人生を買うことはできません。

みなさんも今まで、何度も傷つき、その度自分で修復し、逞しくなった経験があるのではないでしょうか?

 

前回のコラム にも書いた通り、わたしは失敗だらけ傷だらけ。

ですが、細かな傷が増える度に少しずつ強くなってきた気がします。

というのも、どんな事もいつか自分の糧になる時が来ると信じているから。

もちろん最中は苦しいのですが……。

 

大切なのは、傷ついたり割れた心をそのままにせず、こまめに丁寧に補修すること。

粉々になるまで放置しないこと。

そして、同じことで同じ場所が傷つかないように、対策と傾向を考えること。

 

日本が誇る、金継ぎ文化

さて、話は突然変わりますが、金継ぎという文化をご存知ですか?

金継ぎは、器の割れや欠け、ひびなどの壊れた部分を漆で接着し、金で装飾して仕上げる修復方法のこと。

古くは縄文時代から始まり、茶の湯の時代には、破損部分を金粉で美しく装飾し始めました。

傷を無かったことにするのではなく、歴史と考え新しい命を吹き込むという、日本らしい素敵な文化ですね。

 

わたしは料理が好きだし、食器も大好きです。

それには母の影響が大きくて、母は日本で金継ぎやポーセラーツ、チャイナペイントなど食器に関する教室を主催しており、わたしも母に習い金継ぎを習得しました。

香港に来てからも、日常生活の中に金継ぎがあります。

庭に釜まで作って日々創作活動に勤しんでいる母。この細かい柄をひとつひとつ丁寧に筆で描いています。

金継ぎには現在、大きく分けて2種類あります。

ひとつは本金継ぎと呼ばれる方法。

天然素材の本漆を使用し、工程を何度も重ね、温度や湿度管理をしながら、完成まで数週間〜数ヶ月の時間を要する、昔ながらの伝統的な方法です。

正に職人技。

母は、この本金継ぎもやっていますが、かなり時間をかけて行っています。

「ちょうど良いサイズの砥石が無いのよ〜」と、砥石まで自分で作っている母。

もうひとつは、モダン金継ぎと呼ばれる方法。

こちらは現代の技術を取り入れた「新うるし」を使います。

本漆と比べ、かぶれにくく、扱いやすいのが特徴です。

 

本金継ぎ、モダン金継ぎ、どちらにもそれぞれ良さがありますが、

わたしは、手軽にできて2時間もあれば完成する、モダン金継ぎのサステナブルな手法が気に入って、

日常に取り入れています。

それに、ワイングラスのステムを補修して装飾するという、時代にあった素敵なアイディアを実現できるところも利点の一つです。

日本から持ってきた大切な食器を割ってしまっても平常心でいられるのは、金継ぎの技術があるからかもしれません。

 

香港で叶えたかった夢

この美しい日本の文化を香港でも伝えることが、実は密かな夢だったのですが、

実は今度、それが実現します。

ビクトリアハーバーが見渡せる、わたしがメニュー開発を務める店で、営業前の時間を使ってワークショップをします。

お皿は、お料理を乗せるとより輝きます。

モダン金継ぎの中には、食品を乗せるのに向いていない材料もあるのですが、

このワークショップでは日本の食品衛生法とそれに準ずる規定をクリアした材料で金継ぎをするので、できたお皿はお食事用にお使いいただけます。

 

ご自宅に欠けてしまったお皿はありませんか?

是非もう一度命を吹き込んでみてください。

手間をかけた分、きっとどのお皿より魅力的な一皿になるでしょう。

 

金継ぎも人生も同じ。

どんなに大切にしていても、割れたり欠けたりすることはあります。

傷ついてしまったのなら仕方ない。

隠さずに、むしろ傷を金で強調して前よりもっと美しくすれば良いのです。

 

それでは今回も読んでいただきありがとうございました。

毎月10日に連載しておりますので、また次回もお待ちしております!

 


筆者プロフィール

大坪沙季(Saki Otsubo)

東京の大手料理教室で講師を5年程務め、
その後独立。妊娠出産を機に湘南へ移住し、
レシピ開発やフードコーディネーターとして活動。
2022年香港に移住。
某日系F&B Companyにメニュー開発者として所属。
趣味は料理、金継ぎ、ゴロゴロする事。
息子とヘルパーさんと3人で暮らしながら仕事をするワーキングマザー。

instagram https://www.instagram.com/_sakioo_

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