2023/03/08


 今回ご紹介するところ

塔門天后古廟
東平洲天后宮


LEI読者の皆様、こんにちは。香港の天后廟を巡る日本人ことやんまです。香港では3月にもなれば気温もグッと上がって夏の気配すら感じるほど。でも天気が良いのでつい足を伸ばして出掛けたくなる時期です。そんな遠出の目的地の候補に離島の天后廟はいかがでしょうか? 前回の長洲島、前々回の南丫島より、さらに遠いけど一度は訪れてほしい天后廟を二つ紹介します。

MTRの水色の路線・東鐡線にある大學(University)駅から歩いて15分、ここは馬料水(Ma Liu Shui)というフェリーターミナルです。この名前でピンと来る人がいたら説明は不要でしょう。ここから出るフェリーはわたしたちを香港の北東にある離島や奥地の村々へと誘ってくれます。朝早くからたくさんの人で賑わっていますね。なお、乗り場の近くには商店がないので、飲み物や食べ物は駅で調達しておきましょう。

運輸署 街渡渡輪服務詳情

https://www.td.gov.hk/tc/transport_in_hong_kong/public_transport/ferries/kaito_services_map/service_details/index.html

 

まず紹介するのは塔門(Tap Mun)という島です。馬料水から一時間半、平日は一日2便、休日は一日3便運行されています。途中いくつかの港に立ち寄るので、間違えて降りないようにご注意を。

塔門の魅力のひとつに挙がるのが小一時間で回れる開放感に溢れたハイキングコース。島の南側をぐるっと一周するようなルートになっているのですが、港から外回りにしばらく進むと現れるのがこちらの塔門天后古廟です。石段とその先の門からすでに格式の高さがうかがえます。 

それもそのはず、塔門の天后廟は300年以上の歴史があり、この一帯の天后信仰の総本山のような位置付けになっています。それを象徴するのが「太平清醮 (Da Jiu Festival)」という行事。簡単に言うと、自分達の住む地域の繁栄を道教の神様にお願いする宗教的行事なのですが、塔門では10年に一度開かれるという希少性が、そして2019年に第二十二回を数えるという歴史性があるのです。その中心にいるのが天后様ですから適当な廟ではいけないでしょう。外装だけでなく、内部にも置かれた壁画や彫刻群はそんな塔門の歴史や価値を後世に伝えているように感じます。何度も建て替えをしながら、より美しく洗練され、何世代にも渡って守り抜いてきたことに敬意を表さずにはいられません。次回の太平清醮は2029年、縁があればまた塔門を訪ねたいと思います。

 

そんな塔門よりもさらに遠い島があります。同じく馬料水からフェリーで行ける東平洲(Tung Ping Chau)です。現在は無人島になっているこの島、わたしが訪問したのは2021年9月なのですが、とにかく行くのが大変です。その理由は時刻表を見ると分かります。

なんと平日は運休、休日でも一日1便しか船が運行されないのです。そして、約2時間の船旅を乗り越えて島に着いても、帰りの船まで6時間待たねばなりません。さらに、香港の中心街から離れすぎて携帯電話の電波が入りません。写真から分かる通り、対岸の深圳市が目の前なので、大陸の電波なら受信可能です。ですので、皆さまが訪問される際は水や食料の他に、大陸のSIMカードやお喋りな友人を誘うことで時間を持て余さないようにすることをお勧めします(品数は限られますが食事処はあり、トイレもあります)

とは言ったものの、東平洲は決してつまらない島ではありません。1時間ほどで島を一周できるようになっており、特に海岸沿いでは独特な地質構造を拝むことができます。この迫り上がった岩層は圧巻ですね。注意して上に登れば、映える写真を撮れること間違いなしです。

香港はもちろん、日本でもこれほどジオグラフィカルな世界にはお目にかかれないのではないかと思います。他にも長年の風化で形成されたと思われる風穴や岩壁があったり、一方で木々の生い茂るエリアがあったりと、普段とは違う景色・時間感覚の中で過ごすことができるでしょう。

そして、驚くことに、この島にも天后廟があるのです。

18世紀前半に建てられたとされる東平洲天后宮。この島もかつては漁村が栄えていて、1900年代には二千人以上が暮らす立派な有人島でした。この天后廟も信仰の場として賑やかだった時期があったのでしょう。2004年に最後の定住者が去ってからは休日にだけ元島民がやってきて、商店を開いたり島をきれいにしたりしています。この天后廟の入り口も元々はスカイブルーだったそうで、近年この朱色に塗り替えられました。無人島になってからも廟の管理が続いているようです。素晴らしいですね。

いかがでしたか? 香港の中心地から遠く離れた場所にも魅力的な島が、そして天后廟があります。とくに東平洲は香港人でも訪れた人が少ない、ある意味で”秘境”ですので、一生の自慢にできるかもしれません。そして、島の天后廟ほど歴史が深く、そして島の生活に欠かせない存在であると知ることができるでしょう。これからも続くであろう歴史の一証人として、次はあなたも訪問してみてくださいね。


やんま
2020年10月から出張で香港入り。仕事の傍らになんとなく始めた天后廟巡りにハマり、その魅力をSNSで発信するようになる。やんまは小学生時代のあだ名から。

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