2023/05/08


今回ご紹介するところ

銅鑼灣天后古廟

鳳池村天后宮

馬灣石仔灣天后古廟

馬灣北灣天后古廟


LEI読者の皆様、こんにちは。香港の天后廟を巡る日本人ことやんまです。渡航制限が撤廃され、観光客が香港に戻ってきました。油麻地の天后廟でもカメラを向ける人が増えたように思います。佐敦へ向かおうと廟街(Temple Street)を南に進めば、所狭しと屋台が並び、飲食店はとても賑わっています。実はコロナ禍の前の香港を知らないわたし、「これが香港の賑わいなのか」と驚くばかりです。この記事を読んでいる人の中にも、久しぶりの香港を楽しんでいる方がいらっしゃることでしょう。

さて、そんな活気を取り戻した廟街ですが、どうして “廟街” という名前なのでしょうか? かつてイギリスの統治下に置かれた香港では、どんなに長かろうが短かろうが道路には必ず固有の名称が付いています。英語だと「○○Street」といった具合ですね。中文表記では「○○道」や「○○路」「○○街」といった形で表されます。その道が通る場所の古い呼び名だったり、統治時代のイギリスのお偉いさんの名前だったり、名称の由来は様々あって、廟街はまさに油麻地の天后廟があるからこの名前がつきました。

このように、天后廟にゆかりがある道路名や地名が香港にはいくつもあるんです。今回は某テレビ番組のような心持ちで、”天后廟+α”な天后廟巡りを楽しんでみましょう。

 

まず最初にやってきたのは香港島の天后(Tin Hau)という場所です。こんなに分かりやすいネタバレがあるのかというほどにそのまま地名になってしまっている天后ですが、日系の飲食店も多く、通勤もしやすいということで居を構える日本人がけっこういます。そして、駅から歩いて5分のところに地名の由来になった天后廟があります。銅鑼灣天后古廟です。

諸説あるそうですが250年前から存在していたとも言われるこちらの天后廟。かつてはこの一帯も広く銅鑼灣(Causeway Bay)と呼ばれていたようですが、MTRがこの海岸に沿っていくつか駅を作った際、「ここは天后廟があるから天后駅にしよう」(こんなに軽いノリではなかったと思いますが)ということになり、そこから地名としての「天后」が生まれました。MTRには他にも黃大仙駅や車公廟駅があるので、天后廟を駅名にすることにさほど驚きはしないものの、それだけこの地に長く広く知られた存在だったことが窺い知れますね。

次に訪れたのは元朗(Yuen Long)というエリアです。香港の北部は新界(New Territory)とも呼ばれていて、かつて大陸から流入した客家によって立てられた村が点在し、広い土地を活かして宅地開発が進んできました。そのひとつ、鳳池村(Fung Chi Tsuen)にあるのがこちらの鳳池村天后宮です。創建は1684年ととても古く、日本の重要文化財に相当する香港一級歴史建築に認められている由緒ある廟です。少しくすんだ黒系の壁と立体的な彫刻画が良い味を出していますね。

その廟のすぐ目の前を横切る道路の名前を見てみましょう。「媽横路」となっています。この「媽」というのは媽祖のことで、中国本土における天后の呼び名です。そう、この天后廟にちなんで「媽横路」と名付けられました。

これだけでは終わりません。廟の前を横切る道路が「媽横路」ならばと、廟に向かって伸びる道路は「媽廟路」と名付けられました。この二つの道路が交わる場所に天后廟がある、そういう構図になっているのです。村の名前を取って「鳳池路」としても良いのに、天后廟の影響力たるや驚きです。「あれが道路の由来になっている天后廟か」とよそ見してしまわないように注意が必要ですね。

しかし、これくらいで驚いてはいけません。天后廟の影響力はいよいよ地名や道路名を超えていきます。最後に向かうのはランタオ島と青衣島の間にある島、その名も「馬灣(Ma Wan)」です。そう、この「馬」の字は媽祖の「媽」から来ていると言われているのです。事実、この小さい島には2つの天后廟があり、古くから島民の信仰を集めてきました。

一つは南西側の旧村の中にあるのですが、現在は再開発のために入ることができなくなっています。その代わりに建てられたのがこちらの天后廟で、2022年9月にお披露目されました。間違いなく香港で一番新しい廟でしょう。風水的に良い場所を探して建てられたそうです。

もう一つは馬灣の北側にあります。住宅街のある高台から海岸に降りていくのですが、目立った看板もなく、周りが木々に覆われているので、緑色の屋根をつい見落としてしまうかもしれません。また、人の往来が少ないこともあって、ここだけのんびりとした時間軸が存在するかのような心持ちになれるのも魅力です。天后廟に手を合わせ、目の前に広がる砂浜に腰を下ろして海峡をゆく船をのんびりと眺める、わたしのお気に入りの時間です。

わたしが天后廟を巡るのは熱心な宗教心があるからではなく、こういった驚きや発見を通してその場所を、そして香港を深く知りたいからに他なりません。なので、皆様も好きなテーマで香港の街に繰り出して、ガイドブックには載っていない自分だけの探検記を作ってみませんか? もし、その中に一件でも天后廟があれば嬉しい限りです。


やんま
2020年10月から出張で香港入り。仕事の傍らになんとなく始めた天后廟巡りにハマり、その魅力をSNSで発信するようになる。やんまは小学生時代のあだ名から。

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