2023/06/08


今回ご紹介するところ

油麻地天后古廟
屯門口角天后古廟
青衣天后宮
鳳池村天后宮


LEI読者の皆様、こんにちは。香港の天后廟を巡る日本人ことやんまです。突然ですが問題です。

「取っても取っても増えてしまうものってな~んだ?」

そう、答えは年齢です。大人になると少し恥ずかしいけど、やっぱり嬉しいのが誕生日のお祝い。ここ香港では誕生日は特に大事にされているので、家族や友人と集まってお祝いをすることが多いです。

このことは天后様も同じです。各地に様々な伝説が伝えられていても、共通しているのは「旧暦3月23日に生まれた人物」だということ。なので旧暦3月23日に当たる日は毎年、聖誕祭が行われてきました。香港では「天后寶誕」や「天后誕」と呼ばれています。ここ数年はコロナ禍で中断を余儀なくされましたが、いよいよ今年、5月12日を中心に各地で天后誕が復活しました。今回はその様子を皆さまに紹介したいと思います。

まずは、第一回で紹介した油麻地(Yau Ma Tei)の天后廟です。天后誕に向けてまず準備されるのが花牌(Fa Pai)と呼ばれる竹で組まれた巨大な縁起物です。東華三院はこの廟を管理している慈善団体で、いわばスポンサーとしてこの天后誕を祝っているような格好です。日本でも店舗の新規開店の際に支援者が花環を送って入口に置くような慣習がありますが、それに近いものを感じますね。ただ、目の前にある電灯の明るさも分からないくらいド派手な電飾は、日本で見ることはできないでしょう。

こちらは屯門(Tuen Mun)という地域にある天后廟の花牌です。基本的な構造は先ほどと同じですが、天后寶誕の文字列の下には周辺の村や集落の名前が並んでいますね。それぞれがお金を出し合って天后誕を祝っており、土着信仰が盛んな香港らしさを感じます。天后誕に限らず、慶事の際にはこういった花牌を掲げるのが慣わしだそうです。

いよいよ、天后誕の期間に入りました。地域によっては昼から夜まで、数日間にわたって盛大に祝います。会場として球技場を貸し切り、普段は廟の中にいる天后様を特設の壇上に祀っているのは青衣(Tsing Yi)の天后誕。奉納品や線香が絶えないので、回収係や火の番を用意していました。その周りでは野菜や魚介類を販売する店、そして軽食やデザートを売る屋台が何十軒も並んでいます。5月の蒸し暑さもあって日本の夏祭りのような雰囲気を感じずにはいられません。ついつい食べ過ぎてしまいそうです。

もうひとつ、天后誕に欠かせないのが粵劇(Cantonese Opera)です。派手な衣装に身を包み、独特な化粧をした役者が、軽快な太鼓と笛の音に合わせ、特徴的な甲高い声を発して演目を披露します。日本の歌舞伎に近い要素を持っていますが、歌舞伎よりも古くから存在する興行です。天后誕はもちろん、あらゆる聖誕祭の場で粵劇を披露するのも慣わしで、毎日違う演目を見ることができます。もちろんすべて広東語なので理解するのは難しいですが、けっこう出入りは自由なようで、観覧場所によってはお金を取らないこともあってか、かなり気軽に触れられる娯楽という印象でした。

そして、粵劇と同じくらい見ておきたいのが竹で組まれた劇場です。その大きさ、複雑さ、なにもかもが圧巻で、建築現場で見かける竹の足場とは比べ物になりません。竹組みが職人技の一つとして認められている香港において、その技を披露する場としての機能を粵劇が担っているとも言えるでしょう。コロナ禍で途切れかけたあらゆる伝統が今ここに戻ってきたわけです。実に素晴らしいですね。

さあ、天后誕当日になりました。朝から熱気がほとばしるのは元朗の屏山郷(Ping Shan)です。コロナ禍で中止されてきた天后巡遊、街中を練り歩くパレードがついに復活したのです。学校や仕事を休み、天后誕を迎えられた喜びにあふれる人たちの様子が印象的でした。わたしのyoutubeチャンネルでも紹介しているので是非ご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=CRplNXTf9O8&t=4s

まずは数十メートルの長さがある黄金の龍が勢いよく飛び出してパレードが始まります。鐘や太鼓をガンガン鳴らし、続いて登場したのは花炮(Fa Pau)と呼ばれる巨大な縁起物。天后様を中に収めたものもありました。それぞれの村や団体の名前を大きく記した旗とともに、獅子が華麗な舞を披露します。二人の息がぴったり合った舞いに、沿道の見物客も拍手を送ります。街全体が天后誕を祝していました。

終点はもちろん天后廟。前回紹介した鳳池村天后宮の前にはたくさんの参拝客、そしてパレードを終えた喜びを噛み締める村人たちで埋め尽くされていました。廟に恭しく入った獅子が天后様の前でも舞いを披露し、こうしてすべての行程が終わります。

コロナ禍ではパレードができず、演舞も少数の関係者のみで行われた天后誕も、今年は見物客も従えて盛大に執り行うことができました。わたしも初めて天后誕の様子を見ることができ、香港の人々の強い連帯感、そして伝統ある行事ひとつひとつを楽しみ、そして末長く残していこうとする心を知ることができました。読者の皆様も来年はぜひその目で天后誕を楽しみましょう!


やんま
2020年10月から出張で香港入り。仕事の傍らになんとなく始めた天后廟巡りにハマり、その魅力をSNSで発信するようになる。やんまは小学生時代のあだ名から。


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