2022/09/08

読者の皆さま、初めまして! わたしは2020年10月に初めて香港に来た日本人のやんまと申します。長期出張という中途半端な身分もあって、日本人コミュニティにはほとんど属さず、休日は香港中を一人ぶらぶらしています。いや、正確に言うと、休日は香港中の天后(ティンハウ)廟を巡っています。

天后廟について、皆さまがどのくらい興味をお持ちか、わたしの記事はどのくらい関心を集められるか……といささか不安ではありますが、せっかくの機会なので、天后廟の面白さをお伝えできればと思います。

第1回となる今回の記事では、まず、わたしがどうして天后廟を巡ることにしたのかを紹介します。その上で、わたしが思う天后廟の面白さを、実際に巡った時の写真も披露しながら話していきたいと思います。もちろんわたしは熱心な宗教家ではありませんし、天后廟について深い研究をしてきたわけでもありません。それでも、皆さまの香港生活にちょっとした変化や楽しみを与えられるような記事が書けたら幸いです。

当初、天后廟を巡ることは手段に過ぎませんでした。ひょんなことで知り合った日本人の先輩がyoutubeに香港生活の動画を出しているのを見て、「動画編集ってどういう世界なのか知っておいたほうが良いかもしれない」と感じたんですね。そこで、そのやる気を継続しようと色々考えてみました。ちゃんと続けられるようにシリーズものにしたいな、一人でできるものがいいな、香港ぽいものがいいな、でも他の人が取り上げてなさそうなトピックがいいな、と、かなりの我が儘っぷりを発揮して見つけたのが、天后廟だったのです。そう、初めは動画編集を目的に、天后廟を手段にしていました。

ところが、天后廟にカメラを向ければ向けるほど、天后廟について調べれば調べるほど、その面白さをどんどん発見してしまい、気がつけば天后廟を巡ることが目的になったのでした。こんなことってあるんですね、わたしだけかもですが。

前置きはこの辺にして、さっそく天后廟についてお話ししましょう。

まずはこちら。この油麻地の天后廟に行かれたことのある方は多いのではないでしょうか? 日本人向けの観光案内資料では黄大仙と並んで紹介されており(わたし調べ)、九龍に滞在していたら「ひとまず行ってみるか」となるような気がします。

ここでお話ししたいのが”地理・歴史の面白さ”です。油麻地の天后廟の前には日本語の解説文があるので読んでみましょう。

「ヤウマティは船上生活者の船が係留する浅い湾の砂地地帯で、1800年頃から海の守護神のティンハウをまつった小さな廟がありました。」

この一文だけでもいろいろな驚きがありませんか? この廟が200年近い歴史を持つこともすごいですし、この一帯が元々は船を係留しているような場所だったことにも驚かされます。ここからビクトリアハーバーまで約2km、香港の発展はスケールの大きい埋立が基礎にあったわけです。百万ドルの夜景を生み出す高層ビルが立ち並ぶ場所も元々は浅瀬だったわけですね。

また、ティンハウが海の守護神を祀っているという記述があるように、天后廟がある場所はその昔、海や川が近かったり、漁業に縁があったりといった地政学的な意味も持っています。主要な有人島にはほぼ天后廟がありますし、多くの廟はその正面を海に向けています。古くは漁業で、明朝・清朝の時代は貿易で栄えた香港にとって、天后信仰は生活に根付いた大切な要素だったのかもしれません。それを象徴するかのように、油麻地の天后廟にはたくさんの奉納品と、願いを込めて掲げる灯籠や渦巻き状の線香であふれています。

そもそも天后信仰は10世紀頃に福建省で始まったとされています。客家と呼ばれる人々の南下とともに広東省から香港、さらに東南アジアへと広がっていきました。海を越えて台湾、琉球、そして日本にも伝わっているようです。

ところが、発祥の地であるはずの中国本土よりも香港や台湾の方が実は圧倒的に残存数が多いんです。そう、中国本土では文化大革命で壊滅してしまったのでした。信仰色が薄れ、観光名所としての需要だけが残っている大陸の媽祖廟(中国ではティンハウはマソと呼ばれます)と違い、香港や台湾の天后廟はその思想をしっかりと今に伝えています。旧暦3月23日の天后寶誕(聖誕祭)は街や村を挙げて盛大に行われていますし、油麻地のような歴史と規模の大きい廟になると、改修に際しての寄付の人と額の数がとても大きくなります。

こうした視点で捉えることが正しいのかどうかはさておき、今の政治事情を鑑みても、天后廟ほど香港を象徴できるものってないんじゃないかと思えてきます。デモを知らない新参者のわたしが見つけた香港らしさ、そしてこれをSNSでもっとたくさんの人に知ってもらいたいと思うようになったわけです。

初回だからか熱が入ってしまいました。まとめると、天后廟を巡ることで、その場所の地理的な特性や歴史を紐解くような、そんな一風変わった香港散歩が楽しめるのではないでしょうか? 是非皆さまも、そうした視点で、まずは近くの天后廟に参拝してみませんか? わたしと同じように、香港という場所に対する愛着がさらに湧いてくること間違いなしです!

 


やんま
2020年10月から出張で香港入り。仕事の傍らになんとなく始めた天后廟巡りにハマり、その魅力をSNSで発信するようになる。やんまは小学生時代のあだ名から。

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