2025/08/13
香港映画ファンの方が絶対に見逃してはならない展示会が現在香港で2つ開催されています。1つは九龍城で行われている映画「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」の映画セット展示。そしてもう1つは、大館で開催中の「Undercover Underworld (裏社会の潜入捜査)」。80年代以降、香港で公開された有名な潜入捜査映画8本の記憶に残るシーンを、それぞれテーマの違う10のセットにして展示しています。いやはやびっくりな展示で、度肝を抜かれたので、香港在住者はもちろん、旅行者にも激しくおすすめするスポットとしてご紹介したいと思います。
展示は、大館で行われています。なぜかというと、ここは元刑務所で警察ともゆかりが深く、実在した潜入捜査官もいた、ということで今回の企画に最も相応しい場所として開催となったそう。
本展は映画監督のサニー・チャン・ウィン・シャン(Sunny Chan Wing San)氏と香港中文大学中国研究センターの助教授クリストフ・ヴァン・デン・トルースト(Kristof Van den Troost)氏が共同キュレーションをしています。
Sunny Chan Wing San, Creative Director and Co-Curator; and Kristof Van den Troost, CoCurator of Undercover Underworld
クラシックともいえる犯罪映画の記憶に残るシーンを再現し、来場者は主人公や登場人物と自分を重ね、カメラのフレームに身を置くことができます。「Undercover Underworld (裏社会の潜入捜査)」は、潜入ミッションのリアルな日常や、二重人格から生じる精神的苦悩、そして常に心が休まる暇のない日常シーンを表現しています。
1980年以降の40年間で上映された映画の中から選ばれた8本は、アレックス・チェン(章國明)監督の『邊緣人(英題:Man on the Brink)』(1981年)、1980年代と1990年代のアクション映画ブームの火付け役となったリンゴ・ラム(林嶺東)監督、チョウ・ユンファ(周潤發)主演の『友は風の彼方に(原題:龍虎風雲)』(1987年)やジョン・ウー(呉宇森)監督の『男たちの挽歌II(原題:英雄本色II)』(1987年)、『新・男たちの挽歌(原題:辣手神探)』(1992年)。さらにアンディ・ラウ(劉徳華)とルイス・クー(古天樂)が出演するクラレンス・フォク(霍耀良)監督の『センチュリー・オブ・ザ・ドラゴン(原題:龍在邊緣)』(1999年)、アンドリュー・ラウ(劉偉強)監督とアラン・マック(麦兆輝)監督の『インファナル・アフェア(原題:無間道)』(2002年)、デレク・イー(爾冬陞)監督の『プロテージ/偽りの絆 門徒(原題:門徒)』(2007年)、ベニー・チェン(陳木勝)監督の『レクイエム 最後の銃弾(原題:掃毒)』(2013年)です。往年の香港映画が好きな方も、最近香港映画が好きになった方も、ぜひこの展示に行かれる前に1本でもいいので映画を観てから来場すると、より深く、感慨深く、身近に感じることができるでしょう。
展示には、受賞歴のある映画製作者や俳優の独占的な裏話のほか、実際の潜入捜査官、心理学者、その他の専門家へのインタビューも含まれており、フィクション化された内容と現実を比べることができます。
さて、いよいよ展示に足を踏み入れてみましょう。
Scene 1 of Undercover Underworld – “Identity”
潜入捜査官になるには、嘘のアイデンティティーを作り上げ、そのアイデンティティーで生きていかなければなりません。そこで最初の展示「アイデンティティー」は、苦悩する捜査官の複雑な表情を見てとることができるシーンです。今は亡き俳優レスリー・チャン(張國榮)や、トニー・レオン(梁朝偉)、アンディ・ラウなど、映画の一コマを見ることができます。大きなスクリーンに映し出された顔のショットが圧巻です。
Scene 2 of Undercover Underworld – “Mindmap”
「マインドマップ」というタイトルのついたシーン2では、潜入捜査官たちの事務所を見ることができます。壁に8本の潜入映画のプロットが捜査官が犯罪を紐解くように紹介され、潜入の世界観を体験できます。お世辞にも綺麗とは言い難いこの一部屋で、壁いっぱいの人物像や関係性を理解しようとした捜査官たちの懸命な捜査とストレスを見てとることができるでしょう。映画『邊緣人』からアイデアを得ています。
来場者は展示されている全てのものに触ることができます。
そしてシーン3「ミッション」とシーン4「バトルフィールド」の展示室では、潜入捜査官が任務を遂行する際に直面する問題やプレッシャーが描かれています。
Scene 3 of Undercover Underworld – “Mission”
このシーンでは闇取引で得た大金を捜査官が、窓越しに証拠を掴もうと絶えず監視している様子を表現しています。
窓の外から監視されているとも知らずに・・・
実はこの空間は『インファナル・アフェア』に出てくるカットを表現しています。石膏ギプスをはめたトニー・レオンがドラッグ取引の詳細を石膏を隠れ蓑にして、モールス信号で仲間に伝えている緊迫したシーンです。
来場者は腕に石膏をはめたトニー・レオンのシーンを、そこにある石膏ギプスに腕を通して体現できます。すると、あのヒヤヒヤしたシーンを今でも鮮明に思い出しませんか? 2025年8月現在、香港ではNetflixで『インファナル・アフェア』を視聴できます。
Scene 3 of Undercover Underworld – “Mission”
窓越しに秘密裏に撮影して犯人の動向を監視しています。映画のシーンとは全く同じではないものの、信号を受け取ったアンディ・ラウ演じる捜査官がコンピュータとGPSを駆使して居場所を突き止めるシーンにも似ています。
ここでも来場者はまるで捜査官気分でスクリーンの前に立ちモニターを見つめたり、椅子に座って仕事をしているような状況を写真に納めたりできます。
Scene 4 of Undercover Underworld – “Battlefield”
シーン4「バトルフィールド」は、チョウ・ユンファ主演の『友は風の彼方に』に発想を得ています。ここは捜査官たちが唯一の憩いの場として寝泊まりしていたワンルームです。
展示室では常時スモークが出ていて、混沌とした雰囲気を醸し出しています。机の上には乱雑に置かれたゲームピースとタバコの吸い殻や落花生の食べかけが。全て計算し尽くされた配置です。
細部の表現にこだわった部屋の造形にはすごいの一言しかありません。本当に今ここに不健康そうな捜査官が住んでいて、生活臭まで漂ってきそうです。もちろん来場者は椅子に座ることも、机の上のものを触ることだってできるのです。
と、突然、警官がやってきました。味方同士のはずなのに押し寄せてきた警官に襲撃されてしまいます。潜入捜査は、まずは味方を欺くこと。味方からも命の危険に晒される恐怖を体験できます。(動画後半部分をご覧ください)
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続いて本記事後編をご覧くださいね!
Summer Exhibition
「Undercover Underworld(裏社会の潜入捜査)」
会期:2025年8月1日~10月5日
開館時間:11:00am – 19:00pm
Duplex Studio, LG1/F & LG2/F, Block 01, Police Headquarters Block, Tai Kwun
チケット:現在Klookで購入可能です。
HK$25(通常チケット)・HK$15(全日制学生、60歳以上の高齢者、障害者向けの割引チケット)・4歳以下の子どもは無料入場。
限定チケットは、大館の警察本部棟ブロック01のG/Fでも購入可能です。当日チケットもありますが、売り切れる可能性もあります。
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