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2026/02/26

香港の老舗の歴史にまつわるお話を香港老舖記錄冊 Hong Kong Historical Shopsさんとのコラボでご紹介したいと思います。香港老舖記錄冊さんは、Facebookなどで香港の歴史的なお店を独自で取材して発信しています。香港文化の象徴として老舗の存在は欠かせない、老舗が存続していくことが香港の文化を盛り立てることだと言います。香港を愛するHong Kong LEI編集部のわたしたちもまた、昔から愛され続けている香港で誕生した商品が、どんな会社によって作られ、どんな背景で誕生したのか、また、どんなところで、どんなふうに作られていたのかなどを垣間見たくなりました。題して「香港オタクのための愛すべき香港老舗の歴史をたどる」です。でも長いのではしょりまして(笑)「香港老舗の歴史をたどる」と命名いたしました。どうぞよろしくお願い申し上げます。


今回ご紹介するのは、上環にある雑貨店「朱榮記」です。インパクトある店構えで、日本人にも知名度が高いお店ですが、店内に入るのにはなかなか勇気がいりますよね。記事を読むと、「高品質で安全な物を長く使ってもらいたい」という一貫した理念を知ることができ、お店の中で店主に聞きながら色んな商品を探したくなります。


朱榮記(上環)
創業:1959年
業種:雑貨店
住所:上環・水坑口街26号
文:Duey
写真:Boris

今日、上環の水坑口街の石段を歩いていても、ここがかつて英軍が香港島に上陸し「占領角」と呼ばれた歴史の場所だということや、ここが香港で最も古い通りの一つだと気づかない人も多いでしょう。しかし、地元の人や観光客が時をさかのぼる手がかりは、街角にある老舗「朱榮記」の中に隠されているのかもしれません。

朱榮記は、香港にわずかに残る昔ながらの雑貨店の一つです。現在の店主・朱耀昌氏は二代目です。店では家庭用品やさまざまな山林産品を主に扱っており、商品は天井から店の外まで所狭しと吊るされ、まるで人が探検するのを静かに待つ森のようです。創業から60年以上、水坑口街に店を構え続け、地域の人々に質の良い日用品を提供しながら、懐かしい品を探し求める人々の訪れる場所にもなっています。

1959年、朱耀昌氏の父は水坑口街で露店を出し、家庭用具や調理器具などを売り始めました。ガラス製品や陶器、ホーロー製品、ステンレス器具などを近隣の商店から仕入れ、担いで持ち帰って売り、その差額で生計を立てていました。数年後、商売が軌道に乗ると屋台を借りて正式に営業許可を得て、「朱榮記」の名で商売を始めました。

1975年には水坑口街14号の店舗に移り、店舗兼住居として事業を拡大しました。地元ブランドの商品を小売りするだけでなく、台湾や日本の商品を中心に、トルコ、イタリア、フランスなどヨーロッパの輸入品も扱うようになりました。当時は瓷器(磁器)が流行していたため、磁器販売にも力を入れ、店の通花鐵閘(鉄製シャッター)には「朱榮記瓷器行」という文字が刻まれ、今もそのまま残っています。

1990年代には水坑口街26号に移転し、朱耀昌氏が店を引き継ぎました。商品はさらに増え、本人いわく「小さな百貨店」のようになりました。2000年には店舗をさらに拡張し、世界各地から集めた竹や籐の手工芸品、じゅうたん、家具なども並ぶようになりました。

長年にわたり海外メディアの取材を受けたことで、朱榮記の名は日本、韓国、台湾をはじめ、ヨーロッパや北米の華人社会にも広まりました。客層も近隣の住民だけでなく、国際的になっています。外国人観光客が訪れる理由は、昔の香港の雰囲気を感じられる商品が多いためです。例えば手描きの鶏柄の茶碗、ホーロー製品、石油コンロ、金錢(Gold Coin)や駱駝(Camel)の保温ポット、竹製の調理器具、籐かご、うちわなど、懐かしさと実用性を兼ね備えた品々も、地元の人がわざわざ買いに来る理由となっており、郷愁や生活のこだわりを満たしてくれます。

数ある商品の中でも特に有名なのが「紅膠豬(プラスチック製の赤い豚の貯金箱)」です。1970年代に誕生し、黄氏兄弟の工場で製造されました。当時はプラスチック製品が普及し始め、割れにくいことから保護者が安心して子どもに遊ばせたり、小銭を貯めさせたりするために購入していました。目を引くオレンジがかった赤色の子豚は、体に銅銭のレリーフが施され、金色の模様と黒い目が彩られた愛らしいデザインです。中の小銭を取り出す時も割る必要はなく、お腹を切れば取り出せる仕組みで、70~80年代の子どもたちの思い出の品となりました。朱耀昌氏は、元の工場が閉鎖されることを見越し、紅膠豬を「生きた看板商品」に育てたいと考え、金型と版権を買い取りました。そのため、需要に応じて再び量産することが可能となりました。

朱榮記は、店内の一寸の空間も無駄にせず使い尽くし、商品を高低差をつけながら整然と陳列しています。お客が商品を尋ねると、店主は必ずと言ってよいほど、正確に目当ての品を取り出してくれます。商品を床から天井まで幾重にも積み重ねている理由について、店主は「一目でわかるようにするため」だと説明します。同じ種類の商品をまとめて見渡せるようにし、違いを比較しやすくするためです。(中略)

その並べ方は日常生活の流れと深く結びついています。新居に入ればまず掃除をしますし、掃除は最も基本的な家事でもあります。そのため、ほうきやちりとりなどの清掃用品は入口付近に置かれています。家の中に入れば水やお茶を飲みますから、コップや魔法瓶、急須などはその先に並びます。また、割れやすいガラス製品や陶器は、奥の場所に置かれています。(中略)朱夫妻は長年にわたり店を切り盛りしてきたため、店内の商品を熟知していますが、すべての商品を整理し記憶するための独自の思考体系を持っているのです。(中略)

朱榮記は信用を何よりも大切にしており、安全で耐久性のある商品だけを仕入れて販売しています。「百貨養百客(多様な商品が多様な客を呼ぶ)」が店主の信条で、品質を求める常連客が必ずいると信じています。価格が少し高くても、父の教えである「長く使えて、安全で信頼できる品だけを売る」という理念を守り続けています。店主は、先代がいつも丁寧に商品の用途や手入れ方法をお客に説明していたことを懐かしく語ります。たとえば「生鉄鍋の慣らし(開鍋)の方法」などについても、どんな質問にも必ず答えていました。

そうした姿を間近で見て育ったことで、自身の経営理念や接客の姿勢も大きな影響を受けています。また、先代は「たとえ店を移転するとしても、水坑口街の中でなければならない」と語っていたといいます。長年にわたり地域社会の中で築いてきた顧客や親しい近隣とのつながりを何よりも大切にしていたからです。そのため、創業から66年にわたり、朱榮記は一度も水坑口街を離れたことがありません。

(中略)

時代の変化に合わせて、店も少しずつ変わってきました。60~70年代は治安があまり良くなく、初代店主は宣伝を控え、商売は家族を養うことを第一に考えていました。しかし90年代以降、朱耀昌は市場の変化を的確に捉え、文化保護の気運が高まる中、自店の商品がまさに懐旧志向・高品質・手工芸品という路線に合致していることを理解しました。そして、雑誌やテレビ局などのメディア取材を受け、店の特色ある商品や老舗として歩んできた軌跡を積極的に紹介するようになりました。

ここ十年ほどは文化保存団体と協力し、地域の文化イベントやガイドツアーも行っています。参加者との交流は店の活性化につながり、地域文化を知ってもらう良い機会にもなっています。2025年の旧正月には、店内で書道家による「揮春(春節の飾り書き)」の屋台を開き、大いに賑わいました。SNSのインフルエンサーも訪れ、新年の華やかな雰囲気を皆で楽しみました。こうした協力関係を大切にしながら、景気が厳しい今の時代には文化的価値や地域との連携が店の活力を保つ鍵になると考え、老舗の商売を守り続けています。

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