2023/09/27

9月です。大型台風やブラックレイン警報で、各地に倒木、浸水、地滑りなどの被害が出ましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

子ども達は新学期を迎え、わたしは久々に『喫茶店で子どもたちに邪魔されることなくゆっくりコーヒーを飲む』という贅沢な時間を友人たちと過ごしました。おしゃべりをする中で宝石店の話になったのですが、友人の一人が「あの、大福みたいな宝石屋あるじゃない?」との発言をしました。

 

『大福みたいな宝石屋』!! 宝石屋が大福みたいって、普通に考えたら全く理解できないところですが、集まっていたのは香港在住歴2年以上のお友達。みんなすぐにどこの宝石屋さんのことかピンときました。

『周大福』のことですね。『大福』の文字の横に映るのが、あんこのたっぷり入った和菓子でなくダイアモンドということに違和感を抱いていたのはわたしだけではないとわかり、ちょっと嬉しくなりました。

 

『周大福』は1929年、周至元氏が広州に創業した老舗の宝石店です。創業者の苗字が『周』でなく『豆』とか『苺』だったら……という妄想はさておき、なぜ『大福』かと言えば、伝統的な中国の賀詞『五福臨門、大富大貴』から文字をとったのだとか。『周大福』は現在、香港、マカオや中国を中心に世界の宝石店の中でもトップクラスの業績を誇ります。そして経営者一族は、実はローズウッドやハイアットホテルなどで有名な「新世界発展」もグループの一部として所有しており、2023年「Forbes」誌によれば香港第3位の富豪一族です*。

 

宝石店に『大福』と、日本人には衝撃的な命名もさることながら、この店舗のショーウィンドーを飾るものにも、わたしは当初、大変驚かされました。それはこちら。

金の豚、六連ちゃん!

 

「なぜなぜどうしてせっかくの純金をこんな形にしてしまうの!?」と初めてみた時はびっくりしたものです。そしてこの豚のネックレスが、あっちの宝石店でも、こっちの宝石店でも、そして夏も冬も一年を通して、ショーウィンドーの一番いい場所で光り輝いているという事実にも。

 

実はこれ、結婚式の時に花嫁さんがつけるネックレス。実際、広東地方伝統の『裙褂』(クングワ)もしくは『龍鳳褂』(ロンフォングワ)と呼ばれる金の刺繍が入った煌びやかな婚礼衣装にこのネックレスをしている花嫁さんの写真を見たことがあるのですが、素敵でした。金の豚ネックレスを上手に身に纏うなんて、香港花嫁はなかなかのオシャレ達人です!

なぜ豚かといえば、中華圏では、子沢山の豚が子孫繁栄を意味する縁起物だからだそうです。

 

結婚するカップルにとって、末長く仲良く暮らすことを願うのは当然のこと。その願いを込めて、新婚さんたちは初夜の前には『安床儀式』なるものを執り行ったりもするそうです**。ベッドを風水の良い位置に置き、『好命婆』なる縁起のいいお婆さん(旦那さんが健在で孫沢山のお婆さんなど)が縁起のいい色(もちろん紅!)のシーツをしき、結婚生活が『甘く』なるようにと干し柿や干し棗を飾り、締めくくりに子どもがベッドを飛び跳ねる……などなどここには書ききれないほどの決まりがあるのだとか。

 

こんなふうに、嬉し恥ずかし新婚生活を送っていると、赤ちゃんがやってきたりするわけですが、その赤ちゃんは『小寶寶』(シウボウボウ、寶=宝)。なんて可愛らしい表現!! やってくるのは、純金より、翡翠より、ダイヤモンドよりももっと尊い、小さな宝、そう宝! というわけです。ただ『小寶寶』と表記はしますが、実際の会話では『BB』(ビービー)と呼んでいますね。……肌荒れの時に飲む「チョコラBB」みたい、などと思うのは日本人だけ。

この『小宝宝』が成長して子どもになると、今度は彼らを小さい朋友、『小朋友』(シウパンヤオ)と呼びます。これ、わたしが一番好きな広東語表現です。

わたしの個人的な感想にすぎませんが、子ども達を『小さな朋友や』と呼びかける香港社会は、東京に比べ、子ども達に対する大人の視線が温かいように感じます。外を歩いていると、子ども達はよく「小朋友」と呼びかけられ、話しかけられ、そして時に頭を撫でくりまわされ、飴をもらったりしています。

東京でも欧州でも、騒ぐ子どもに迷惑そうな視線を投げかける大人に何度か遭遇しましたが、香港では、経験なし。そもそもどこでも大声で話す香港人の皆さんのことですから、子どもが騒ぐのなんて全く気にならない、というだけのことかもしれませんが。

ただ子育てするものとしては「わ〜子ども〜、かわいい〜、頭撫でちゃおう〜」と言って寄って来ちゃう人が周囲にいっぱいいる方が、ハッピーに過ごせるということは間違いありません。

 

さて、日本のお盆にあたる8月の鬼節も終わり、台風の9月も終盤を迎え、10月からは結婚式が増えてきます。西洋式のウェディングドレスもいいけれど、わたしはやっぱり、赤や黄色の豪華な『裙褂』を着た美しい花嫁さんを拝みたいなー!

 

それでは皆様、また次回!

 

*Forbes 2023 Hong Kong
https://www.forbes.com/lists/hong-kong-billionaires/?sh=73f5ec646495

**matrimonial bed ceremony
https://brideandbreakfast.hk/chinese-wedding-traditions-all-about-matrimonial-bed-ceremony-and-why-its-important/

 


小林杏 (Anne Kobayashi)


東京都出身、青山学院大学仏文科卒。ニュージーランド、日本、フランス、英国での就業経験あり。ロンドンでの出産子育てを経て、2020年に来港。今まで住んできた土地のように、香港も愛おしい場所となりつつある今日この頃。趣味は読書、舞台芸術鑑賞とカンフー映画鑑賞。


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