2023/09/29

第4回のあらすじ

父親との別れは想像していたより早く訪れ、香港からビデオコールでの見送りとなった。日本に着いてからは病院が葬儀屋を紹介してくれて、各種書類の手続きがスタート。悲しむ暇もないほどに多忙な日々が待っていた。


え、お墓ないの?

ひとつだけ後悔していることがあります。それは元気なうちに、逝った後のことを聞いておかなかったこと。余命宣告を受けてから、何度か聞こうと試みたこともありますが、本人の気持ちを考えるとなかなか聞くタイミングがなく、またどのように聞いたらわからないまま旅立ってしまいました。頭のどこかで、りんご畑の真ん中にある先祖代々のお墓に入るのかなあと思っていました。

いざその時がきて叔父に相談すると、

「あれはもう墓じまいするから入れないんだ。兄貴ともそういう話をしようと思ってたところだった。どこかいいところを自分で探してくれよ」

と、まさか想像もしていなかった返事が。

「墓じまい」と「墓探し」なんて、わたしの頭にはインプットされていなかった言葉で、脳内感電状態でした。

 

オンラインでお墓探し

まずは頼りになるグーグル先生でお墓について検索してみました。最近は霊園や墓地の管理者が遺族に代わって供養や管理してくれる永代供養墓の需要が高いようで、個人墓、樹木葬、納骨堂、永代供養墓などあり、一定の期間がすぎると遺骨は合祀されるそうです。

なんとなくわかったところで、次は場所選び。父は仕事の関係で人生の3分の1以上が海外生活、国内でも転勤族だったのでどの土地が一番落ち着いて眠れるのか考えてみました。家族会議で故郷の土に還るのがいいだろうという結論に達し、エリアに焦点を当てて探したところ、ピンときたのが2か所ありました。早速電話でアポ取りをし、翌日には新幹線で日帰り見学、「ここしかない!」と一目ぼれしたところで即契約を交わしました。父がこの土地出身であること、わたしが海外在住で翌日帰らなければいけないことを話すと、管理人さんは親身に相談にのってくださいました。3週間後に納骨するという日程だけ決めて、後はラインで墓石の種類、文字やメッセージの内容、食事会のアレンジなど全てのやり取りをしました。

 

人生を祝う会

真っ青な空の下で、父の大好きだったカーペンターズの「トップ・オブ・ザ・ワールド」の生演奏の音色とともに、親戚や高校時代の友人に囲まれて、父の人生を祝いました。墓石には母の名前と弟の名前も刻まれ、いずれは二人ともここで永眠します。母もこの地にはゆかりがあり、大自然のなかにあるこの場所を喜んでくれたので、ここでよかったのだと再確認できました。この時叔父もとても気に入り、先祖代々の墓じまい後は同じ敷地内の永代合同供養墓に引っ越ししたので、ゆくゆくはご先祖さまと合流します。

埋葬費は申請書と領収書を喪主が住んでいるところの役場に提出すると、定額5万円が支給されます。

wandermi

遺産相続のあれこれ

遺産相続の手続きに必ず必要になってくるのは、法定相続人全員が署名し実印押印の「遺産分割協議書」です。印鑑証明書も必要ですが、これは日本に住民票がないと発行してもらえません。そのため香港の日本国総領事館で在留証明書と署名証明を受け取る必要があります。

土地や不動産の名義変更などの手続きは法務局で行いますが、日本と香港を月2往復しても時間が足りないため、司法書士にお願いしました。それでも提出書類をそろえるのに、時間がかかりました。

以下が司法書士事務所に提出した書類

・被相続人の出生時から死亡時までの連続した戸籍・除籍・原戸籍謄本

・被相続人の住民票の除票

・固定資産評価証明書

・相続人全員の戸籍謄本

・相続人全員の印鑑証明書

・相続人全員が署名、実印押印した遺産分割協議書

 

遺産分割協議書は決まったフォーマットがないので、司法書士さんが法務局用に作成してくださったものを銀行口座や投資信託でも使用しました。出生時からの戸籍謄本は、わたしが知らなかったところのものもあり、心当たりのある市役所に問い合わせをして突き止めるのが一苦労でした。

日本はいまだに多くの手続きが紙と印鑑で処理されていて、オンライン申請やメールでの問い合わせもできないので本当に不便でした。電話での問い合わせも時間帯が決まっているので、香港から平日の営業時間中に問い合わせをするのもタイミングが難しく、やっとかけられたと思ったら混みあっていて繋がらないこともしばしば。

相続税の申告は10カ月以内に税務署に提出する義務があり、申告書の依頼は税理士にお願いすることもできます。

 

今回の介護のポイント

①お墓のことは元気なうちに聞いておく

②アウトソースできるところは任せる

③フライトは夜中便を利用すると時間を有効に使える

④提出物は原本を数部用意しておくと便利だが、有効期限に注意

 

日常生活が少し落ち着き、4か月後母の誕生日にお墓参りに行ったときのこと。

まさかのハプニングが、、、

 

次回は出先で手術と入院、そして転院についてです。


りんみゆき
カノッサ病院日本人通訳/グリーフケアアドバイザー2級/メディカルアロマインストラクター

香港を含め30年以上の海外生活体験と語学力を生かし、香港では医療通訳としてカノッサ病院で活動する傍ら同病院の日本語ケアラインサービスという無料のお悩み相談窓口もチームの1人として担当している。趣味はマラソン。著書に「海外のいろんなマラソン走ってみた!」(2019年5月、彩図社)がある。

どんな小さなことでも1人で悩まずにご相談ください。
無料日本語ケアラインサービス
電話:2825-5849 (月9:00-13:00、水13:00-16:00、土10:00-12:00)
カノッサ病院への日本語によるお問い合わせ
https://www.canossahospital.org.hk/ja/

IG:canossahospitalhk_jp

 

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