2021/10/14
煎薄缶牚*
(ジン ボク チャン)
【香港もち米粉入りおかずクレープ】
*「缶牚」は、一字の漢字
日本の粉物といえば、お好み焼きとか、たこ焼きなどは海外でも人気があるようです。私は、香港、オーストラリア、アメリカでお好み焼きとたこ焼きを食べたことがあります。香港の粉物はあまり知られてないようです。
昔ながらのワゴン式飲茶には、とても特別なワゴンがあり、それは「パンフライ専用のワゴン」です。形は一般の蒸し点心のワゴンと違って、出前用の屋根付きバイクのような透明なフロントシールドが付いているワゴンがあります。実は、シールド兼「棚(?)」でもあり、この透明シールドの裏に棚があり、「蘿蔔糕(ロー パッ ゴー、大根餅)」、「馬蹄糕 (マー タイ ゴー、くわい餅)」、「芋頭糕(ウー タウ ゴー、タロイモ餅)」、「煎腸粉 (ジン チョン ファン、炒め用米粉巻きクレープ)」等の「油物」は、パンフライしてからお客様に提供する「点心」が棚に並んでいます。注文が入ってから「油物点心」を焼き、アツアツ焼き立てのものをお客様に提供するのが一般的でした。今はワゴン式の飲茶は僅かしか残ってないので、目の前で焼いて貰う点心はそろそろ歴史から消えるのではないでしょうか?
パンフライ・ワゴンに「煎薄缶牚」(ジン ボク チャン)という伝統的な広東オヤツが時々あります。点心というより「オヤツ」の意識のほうが強いかもしれません。おばあちゃんかお母さんが学校から帰った時に作ってくれるオヤツのイメージが大きいです。「煎薄缶牚」と聞いたら、なんとなく懐かしい香りが漂ってくる小学校か中学校時代の思い出が出てきそうです。
私はうちのおばあちゃんが作ってくれた「煎薄缶牚」しか食べたことがありません。なぜならおばあちゃんは外食が嫌いだったので、なかなか外食する機会がありませんでした。下校後のオヤツか、昼ご飯の時によく作ってくれました。おばあちゃんは必ずもち米粉を入れました。おばあちゃんが子どもの頃、「卜卜齋」(ボ ボ ジャイ、学校が無かった時代の私塾のこと)に行く前に、親たちが必ずもち米粉で作った「煎薄缶牚」を子どもたちに食べさせたそうです。理由はもち米はとてもくっつくので、子どもたちが椅子にくっついてたくさん勉強して欲しいと願いが込められていたから。そういう縁起物としての「煎薄缶牚」 でもあった様です。
「煎」とは鍋に油をしいて薄いものをフライパンや「鑊」(ウォク、中華鍋)で加熱する調理法の意味です。 「薄」とは薄いものを指します。
「缶牚」とはフライパンや鍋などを示す、昔の広東語の言い方です。
3文字を合わせると、フライパンで作った薄焼きクレープのようなものです。材料はうるち米粉、もち米粉、干しエビ、韮、時々粗みじん切りした「菜脯」(チョイ ポ、中華たくあん)も入れます。外側がカリッとして、中はもっちり食感で、ソースやたれを一切付けずにそのまま食べる習慣は広東人スタイルです。現代のレシピはうるち米粉を小麦粉に代用するものが多く、今回のレシピも小麦粉を使ってみました。
Tips: 綺麗に焼くコツはフライパンをよく熱してから油を多めに入れることです。健康的なイメージではないかもしれませんが、天ぷらを揚げる感覚で焼くと間違いなく美味しく仕上がります! |
材料 (12cmのものを4枚)
【A 生地材料】
薄力粉…..……. 75g
もち米粉…..…….. 25g
水……..…. 150g
ナンプラー………. 1小さじ
塩………… 少々
きび砂糖………… 少々
胡椒………… 少々
サラダ油………… 15g
韮………………. 20g
乾燥小エビ……………. 10g
糸唐辛子(飾り用あれば)……………… 少々
<作り方>
1. Aの薄力粉ともち米粉をよく合わせてから水で溶きます。溶いたら、他の材料をリストの順番通りに加え、 30分寝かせます。
2. 韮を細かく切っておき、韮と乾燥小エビは1の生地が 出来上がった後、焼く直前に加えてよくかき混ぜます。
3. フライパンに油をしき、生地を12cmの円形にし、中火で焼く。焼き色がついたらひっくり返して反対側も色が付くまで焼く。糸唐辛子を飾りとして載せて出来上がり。
雲姐(ワンジェ)
料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。
Instagram
@hongkongrecipe
人在東京 Prime Kitchen Labo
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