2024/04/15

柳緑桃紅

(ラゥ ロック トォ ホン)

【鹹酸菜西芹炒牛肉】

(酸味がある高菜漬けのセロリ牛肉炒め)

本棚を整理していたら、1995年に発刊されたアムウェイクイーンクックウェアの香港料理本が出てきました。この本を見て、小学生のころ、母がわたしをアムウェイクイーンクックウェアの料理教室に連れて行ってくれたことを思い出しました。もしかすると、あれはわたしにとって初めての料理教室だったかもしれません。

わたしは、母と一緒に、緊張しながらも興奮した気持ちで近所のアパートに向かいました。エレベーターの扉が開くと、そこにはたくさんの靴が無造作に置かれていました。当時のわたしたちの家では、土足で家に入ることが許されていたので、靴の散乱さに驚きました。

アパートの中に入ると、笑顔で優雅な貴婦人がわたしたちを出迎えました。彼女は上品な銀髪を持ち、気品漂う姿が印象的でした。彼女の周りには多くの人々が集まっていました。その場の雰囲気に圧倒されながらも、母は真剣に貴婦人の話を聞いていました。

あの日の料理教室を振り返りながら、あの上品な銀髪の奥様の話は、営業の一環であったことに気付きました。その営業に乗っかった母はその後、鍋セットやレシピ本、クレンジング洗剤など、抱えきれないほどの商品を持ち帰ってきました。

この本は30年前に出版されたもので、1970年から1990年の間に人気だった香港の料理テレビ番組、通称「李太」に出ていた李曾鵬展氏が執筆したものです。うちのおばあちゃんも彼女の料理番組をよく見ていました。本をめくってみると、料理の名前の上品さに驚きました。料理名はなんと、宴会料理のようで、四字熟語でした。香港のカラシ菜漬け「鹹酸菜」(ハム ス‐ン チョイ)という塩古漬菜と牛肉セロリ炒めは「柳緑桃紅」と名付けられました。

その4文字は、唐の時代の名詩人「王維」の詩から取られていたようです。春の景色の美しさを讃える四文字で、緑あざやかな柳の葉、美しい桃の紅花、春の色を詩で描写してくれた優雅な詩です。自分にとって「鹹酸菜」という塩古漬菜は全く春のイメージがないので、わたしなら、この料理に「柳緑桃紅」というタイトルは付けません。しかし、作家の「李太」にとっては春のイメージがあった彩りの炒め物に見えて、その名前にしたのではないしょうか?

料理本のページを閉じました。料理本はただ料理を教えてくれることだけでなく、作られた当時の文化や歴史、そして詩情をも教えてくれるものです。今年の東京は桜の開花が遅く、入学式の時期にちょうど満開でした。外は桜の花が舞い、まるで新しい季節の到来を告げているようでした。春の風が心地よく、新たな可能性が広がっているように感じました。そっと深呼吸をして、今年も新しい冒険への扉を開けましょう!

 

Tips: 香港の鹹酸菜のことは第53回コラムで詳しく書いてあります。そちらを参考にしてください。

 

材料2人分)

牛肉………………………….80g

(レシピはモモステーキの千切り)

→下味

卵白………………………….10g

砂糖………………………….3g

紹興酒……………………….1小さじ

醤油………………………….½小さじ

胡椒………………..……..…少々

片栗粉……………..……..…1小さじ

サラダ油…………..……..…1小さじ

セロリ………………………….80g

(4㎝の千切り)

鹹酸菜…………………….…….20g

(4㎝の千切り)

人参……………………….…….40g

(4㎝の千切り)

ニンニク………………….…….40g

(みじん切り)

豆板醬……………………….1小さじ

合わせ調味料:

オイスターソース…………..1小さじ

醬油…………………………..1小さじ

砂糖…………………………..1/4小さじ

ペッパー……………………..少々

水……………………………..1大さじ

ごま油………………………..少々

 

<下処理>

1.千切りした鹹酸菜を薄い塩水で15分塩抜きしてからしっかり水分を切る。

2.牛肉に下味を順番に入れて、よく揉んでから30分程放置する。

3.セロリの繊維をピーラーで取ってから千切りする。

4.調味料を合わせておく。

 

<作り方>

1.フライパンを熱し、鹹酸菜を軽く乾煎りする。分量外のサラダ油2小さじをいれ、セロリ、人参を炒め、しんなりなったら、鍋の端っこに寄せる。

2.フライパンの半分空いているところに油を敷いて、ニンニクと豆板醬を炒めて、香りが出たら、牛肉を入れて色が変わるまで炒める。

3.すべての材料を炒め合わせて、合わせ調味料を入れ、ソースがよく絡んだら、仕上げにゴマ油をかける。


雲姐(ワンジェ)

料理研究家。香港に生まれる。幼少期、平日は祖母、週末は料理が趣味だった父の手料理を食べて過ごす。オーストラリアへ移住を経て、結婚を機に日本へ移り20年以上。中国国際薬膳師、発酵食品ソムリエ、発酵ライフアドバイザーの資格を持ち、中華圏および日本の食文化への造詣も深い。現在は、日本の人々に香港料理を伝えるべく東京で活動中。

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