2023/04/08


今回ご紹介するところ

大鴉洲天后宮

小鴉洲天后廟


LEI読者の皆様、こんにちは。香港の天后廟を巡る日本人ことやんまです。前回紹介した天后廟はフェリーの便数が限られた離島にありました。今回紹介するのは、定期船はもちろん人も家も存在しない無人島の天后廟です! ……いやいや、何を言っているんだという話ですよね。しかし、たしかに無人島にも天后廟があるのです。今回はちょっとした冒険気分で楽しんでいただければと思います。

なお、これから紹介する無人島への訪問は、私の風変わりな活動に関心を持ってくださる方々の協力無くして実現しませんでした。この場をお借りし、改めて御礼申し上げます。

地図で香港を眺めると、小さな島がたくさんあることが分かるでしょう。その中でも比較的大きいながら無人島になっているのが、ランタオ島の南に浮かぶ大鴉洲(Tai A Chau)です。すぐそばにある小鴉洲や他の島々と合わせ、索罟群島(Soko Islands)とも呼ばれています。1970年代まで数百人が住んでいました。今回はここに向かいます。

ちなみに、無人島に行く方法は、①ツアーに参加する、②船をチャーターする、の大きく二つに分けられます。単に島に行くことが目的であれば①が良いと言えるでしょう。コロナ禍も落ち着いたので旅行会社が積極的にツアーを企画し始めているようです。一方、島での目的がはっきりしていて、まとまった人数を集められるなら②が良いでしょう。人数が多ければツアーよりも安く済み、かつ自由度が高くなります。どうしても船会社や船頭さんとの交渉が広東語になる点でハードルは高いですが、有名な無人島であれば英語でやりとりができるかもしれません。この索罟群島はそういった島の一つで、例えばこちらのウェブサイトから申し込むことが可能です。

https://booking.splitdyboat.com/en-us/product/tai-a-chau-soko-islands/

さて、出発地に指定されたのはランタオ島の西にある大澳(Tai O)という漁村。ここは海上生活者の住居である棚屋や塩田が残っていて、村全体が観光地として賑わいを見せる場所です。無人島までの航海安全を願い、大澳に250年前からある天后廟に手を合わせて港に向かいます。やってきたのは12人乗りの小型船。船首から乗り込む時の緊張感と高揚感はなかなか味わえないだけに、無人島訪問の醍醐味かもしれません。

ランタオ島の西側に沿って進んでいく途中では、ピンクイルカとして知られるシナウスイロイルカ(中華白海豚)の群れに遭遇しました。大澳周辺はピンクイルカの生息地としても知られ、ドルフィンウォッチツアーもあるのですが、近年は周辺の開発などで個体数が減っているとも言われています。そんなピンクイルカとの思いがけない出会いに、同乗者もこぞってカメラを向けていました。ただ、これは裏を返すと、それだけ人里離れた場所に追いやられてしまったということですし、そんな場所を通らないと索罟群島に行き着けないんですね。

ピンクイルカに見送られて船はさらに進みます。香港最西端の島・雞翼角を過ぎ、ランタオ島南西の絶壁に立つ分流灯台を過ぎると船は東に進路を変えます。大澳から約30分、ようやく索罟群島が見えてきました。

大鴉洲は埠頭や道がしっかり整備されていて、とても無人島とは思えない作りになっています。かつて人が住んでいたというのもありますが、1990年代にベトナムの難民キャンプが置かれたり、撤収後は天然ガスの貯蔵施設を作る計画が持ち上がったりと、何らかの形で島を利用する動きが続いていたからかもしれません。それを象徴するかのように島の整備に派遣された一団にも会いました。お互いにとても驚いたのは言うまでもありません。

そして、埠頭から10分ほど歩くと大鴉洲の天后廟がありました。後ろの大木に負けない存在感のある深紅色の壁が特徴的な廟です。

中にある碑文によると、少なくとも2000年と2018年の2回建て直されたそうです。創建年を知る手がかりは残念ながら見つけられませんでしたが、一説によると1800年代前半から存在しているとも。祭壇は立派に飾り付けられ、お供物も多くあるところを見ると、それこそ先ほどの一団のように定期的に島を訪れ、天后廟に詣でる人がいることは間違いないでしょう。無人島だからといって決して忘れ去られてはいないようです。

小高い丘を登ると島の南側、すなわち南シナ海を一望することができます。写真のちょうど真ん中に浮かぶ島は頭顱洲(Tau Lo Chau)で、ここが香港最南端の島となっています。索罟群島を目指す旅は、そのまま香港の西端と南端を見つける旅にもなりますね。

ちなみに、近くの小鴉洲という島にも、簡素な作りながら天后廟がありました。上段に天后、下段に土地神を祀っているのが特徴で、特に土地神の祭壇があるということは、周囲の村落でとりわけ厚い信仰があったということ。今となっては香港の数ある無人島の一つかもしれませんが、かつてはこの島を愛し、この島と共に生きた人々がいたのだと知ることができます。

天后廟巡りは思いがけない出会いや学びにあふれていて、索罟群島でもそれを実感することができました。LEI読者の皆様はもちろん、わたしの天后廟巡りを応援してくださる方がいることに感謝しながら、さらに天后廟を巡っていきたいと思います。

 


やんま
2020年10月から出張で香港入り。仕事の傍らになんとなく始めた天后廟巡りにハマり、その魅力をSNSで発信するようになる。やんまは小学生時代のあだ名から。

コメントをありがとうございます。コメントは承認審査後に閲覧可能になります。少々お待ちください

意見を投稿する

Hong Kong LEI (ホンコン・レイ) は、香港の生活をもっと楽しくする女性や家族向けライフスタイルマガジンです。

Translate »