2023/02/10

こんにちは。大坪沙季です。

フィリピン人ヘルパーさんと４歳児の息子と３人暮らしをしながら、日本食レストランでメニュー開発をしているワーキングマザーです。

旧正月も終わり、少しずつ暖かくなってきましたね。
みなさまお元気でしょうか？

さて、前回はアンティと子育てについてでしたが、今回はわたしたちのお料理特訓大作戦について書きたいと思います。

雇用する際の面接では、「お料理が苦手なんです」（前回コラム）と言っていた彼女でしたが、はたして……。

遡ること１年前。彼女がうちに来て間もない頃、わたしは既に新しい仕事が始まっていていっぱいいっぱい。心の余裕がありませんでした。
「ごめんね。息子の夕飯なんでもいいから作ってくれる？」と言い残しバタバタと出社。

今思うと丸投げすぎて、さぞかし困ったことでしょう。
戸惑いながらも一生懸命作ってくれた彼女と、食べ慣れない料理を前に固まる息子を見て反省しました。

そもそも彼女は今まであまり料理の経験がなく、フィリピン料理もあまり得意ではないようです。

文化も経験も違うのだから、ひとつひとつ見せて教えていかなきゃなと決意し、家庭内料理教室を開くことにしました。

まず彼女に、自分で書き込めるレシピノートをプレゼント。
裏表紙には彼女とわたしの名前を書き込みました。

日本にいる大切な友達にもらい、もったいなくて使えていなかったのですが、今こそ使いどき！と初卸ししました。

ノートを１ページ更新する毎に彼女のレパートリーも増えていきます。
息子にとってはこれが小さい頃の思い出の味になるのでしょう。
（おふくろの味ならぬアンティの味？）

レッスンの大体のルーティンはこんな感じ。

①料理を決める。（なるべく和食）

②新食材を使うときは一緒に買い物に行く。

③作って見せ、彼女は側でメモをする。

④彼女も同じ料理を試食。

⑤日を空けずに、全く同じ料理を彼女１人で作ってもらう。

休日の夕方、息子と３人で散歩しながら買い物に行くのも楽しいのです。

こちらはレッスンをはじめて間もない頃に作ってくれた食事。
充分美味しかったですが、盛り付け方や食器の位置などもアドバイスし……。

今ではこんなに綺麗に作ってくれます。

嬉しかったのは、彼女が「料理は苦手でしたが、あなたと出会い料理の仕方を教えてくれて、今では好きになりました」
と言ってくれた事。

実はその頃、慣れない仕事でうまく立ち回れず、自分が不甲斐なくて落ち込みがちだったので、余計その言葉が心に沁みました。

そして彼女はその言葉通り、わたしが教えたこと以外にも自発的に勉強し、メキメキと上達。
頼まなくても、息子が喜びそうな方法で野菜やフルーツを食べさせようと頑張ってくれています。

こんなの作れるの！？とびっくりしたカットフルーツ達。
息子も大好きでよく「アンティ、ダックのりんご作って〜」とねだります。

笑顔のオムライス。料理からアンティの優しさが滲み出ています。

ちなみに、なるべく和食を教えているのには理由があるのです。
それは、和食は世界中の人に愛されている料理だということ。

彼女とはもう既に家族のような関係なので、ずっとずっとずっとうちにいて欲しい。
でも、もしも違う家庭に行く事になっても、フィリピンに帰る事になっても、和食が作れることは彼女にとって強みになるんじゃないかなと思ったのです。

実は、彼女と過ごす中でひとつ夢ができました。
いつか、香港にいるヘルパーさんたちに和食レッスンをしてみたい。
自主的に学びたいと思う方向けに、できれば無償で。

料理はヘルパーさんにとって大事なスキルのひとつですし、香港の人の和食好きは有名なので、雇用される時に少しでも良い条件だったらいいなと思うのです。

日本人のわたしがフィリピンやインドネシア人ヘルパーさんたちへ和食を伝え、彼女たちが香港人やその他いろんな国の雇用主さんの家庭で作る。
なんだか夢が広がりますね〜。

せっかく元料理教室講師なので、そんなことがいつかできたらいいなぁと夢見ながら、今日もアンティとわたしのお料理レッスンは続くのでした。

それでは今回も読んでいただきありがとうございました。

毎月10日に連載しておりますので、また次回もお待ちしております。

筆者プロフィール

大坪沙季（Saki Otsubo）

東京の大手料理教室で講師を５年程務め、
その後独立。妊娠出産を機に湘南へ移住し、
レシピ開発やフードコーディネーターとして活動。
2022年香港に移住。
某日系F&B Companyにメニュー開発者として所属。
趣味は料理、金継ぎ、ゴロゴロする事。
息子とヘルパーさんと３人で暮らしながら仕事をするワーキングマザー。

instagram　https://www.instagram.com/_sakioo_