2021/05/15

ゲームのライブ実況が大当たり

香港で「大J」の愛称で親しまれているジェイソンさん。人口約750万人の香港でチャンネル登録者数98万人、つまり7人に1人がチャンネル登録している人気ユーチューバーだ。ゲームのライブ実況や、日常・旅の様子、商品紹介など、多様な動画を広東語で配信している。

インタビュー当日、自宅を訪れると2匹の猫と共にふたりで出迎えてくれた。「今日も朝3時までゲーム実況をしていました」と流ちょうな日本語で話す彼の隣で「ほぼ24時間一緒にいるんです。もうイヤになっちゃう」と笑いながら、奥さまで日本人のマイさんがお茶を入れてくれる。

2012年に付き合い始めてから、マイさんが香港と日本を行き来し続け、昨年の5月に入籍。マイさんは広東語が得意でないため、動画内での口数は少ないが、ジェイソンさんのパートナーとして長年動画に出演している。

「僕がユーチューブを始めた2012年はショートコントのような動画が主流で、これならできるなと思ったんです。街頭インタビューやスイカを手で割る動画を作ったりしていました。当時、香港にユーチューバーは7、8人しかいなかったので、名前を売るのも楽でした。始めて8カ月くらいで生活に困らない収入になりましたね」とジェイソンさんは坊主頭をなでながら語る。しかし、その後ずっと第一線で活躍し続け、「生き残っている」ユーチューバーはジェイソンさんだけ。自分のプレイするゲーム画面を見せながらトークをする「ゲームのライブ実況」は、ほぼ毎日配信している。

「新しいゲームを手に入れたとき『これをやり始めたら動画が撮れなくなる。だったらゲームをしているところを動画にしてしまおう』と思って始めたら、これが大当たり。今やゲーム実況はユーチューブのテーマとしてメジャーですが、当時はこんなに人気になるなんて思いませんでした。視聴者の求めるものはわかりませんね」

自宅の仕事場。ここで、ジェイソンさんがゲームライブ実況や編集を行っている。
唯一続けられた仕事がユーチューバーだった

カメラの前でよどみなく話す姿からは想像できないが、こう見えても人見知りで人と話すのが苦手だというジェイソンさん。「ユーチューブって独り言みたいなものじゃないですか。人と会話しなくても収入になる仕事があって、本当に良かったですよ」とマイさん。

実は、ユーチューバーになる前のジェイソンさんは、仕事が続かず職を転々としていた。マイさんに勧められて病院へ行ったところ、ADHD(注意欠如・多動症)だと診断され、納得したという。「会社に入っても、3カ月ほどですぐに飽きてしまうんです。僕は同じ仕事を続けることができない。変化が必要。住まいも数年ごとに引っ越しています」

「やっぱりちょっと変わっていますね。驚くほど協調性に欠けているし、忘れ物も多い」とマイさん。

ユーチューブは題材が毎回変わるので飽きない。気づいたら8年も続けていた。動画をハイペースでアップし続けるのは並大抵のことではないが、それも好きだからこそできること。旅も休日も動画のネタになるため、動画漬けの毎日だ。

ふたりが手掛けるアパレルブランド「boyhood」。コンセプトは「失敗を恐れず、前に進む」。

タフでないとやっていけない

「ユーチューバーって結局は人気商売でしょう。再生回数は下がり始めると止まりません。動画を継続して出さないと忘れられるし、暴言を吐いて炎上したら1日でダメになる。明日どうなるかもわかりませんから、胃がキューッとなることもしょっちゅう」と言うマイさんの横で、自称「スーパーポジティブで危機感ゼロ」というジェイソンさんは「僕はいつも、何とかなると思ってるんですけどね」と笑う。

将来への不安やストレスを物ともせず「何とかなる」と言える強さ、それが彼を長年ユーチューバーたらしめた大きな要因ではないだろうか。言いたいことは言う、やりたくないことはやらない、思いついたらすぐに行動してしまうジェイソンさんを、時にはなだめ、時には叱っているというマイさんは「大きな子どもみたいですよ」と苦笑い。

私生活を見せ、自宅で撮影することが多いユーチューバーは、人気が出ても「近所のお兄さん」のような親近感がある。それゆえに、一部のファンによる行き過ぎたプライバシー侵害が発生し、日本でも問題となっている。それは、このふたりにとっても対岸の火事ではない。ネットでは自宅を特定され、ベランダで洗濯物を干していても声をかけられる。外出先では写真を撮られるし、あることないことを書かれ、身の危険を感じたこともある。最近はあまり気にしないようになったが、とはいえ決して気持ちの良いものではない。だからこそ、自分たちを知らない人が多い日本に行くとほっとするという。

日本と香港の架け橋になれるのがうれしい

マイさんが「これまで会った香港人の中でも、彼ほど日本語を話せる人はいない」と言うほど日本語が上手なジェイソンさん。勉強嫌いで、競争の激しい香港で進学する気がなかったという彼が、高校卒業後の留学先に選んだのが日本だった。日本のアニメやゲームが好きという理由で、単身日本へ向かった17歳の青年は、親から渡された留学費用200万円を両ポケットに半分ずつ入れて成田空港へ降り立った。だが、学生寮への行き方がわからない。人見知りな上に、日本語も話せなかったため、公園のベンチで一晩を明かした。語学学校、専門学校に通った4年間、ホームシックで枕を涙でぬらしたこともあった。

そんなジェイソンさんが、今ではインフルエンサーとして日本の地方に呼ばれ、香港人を誘致する動画を作り、地域活性化の促進に一役も二役も買っている。この「日本の地方創生」の仕事は、農業や田舎が好きだというマイさんも最もやりがいを感じているそうで「わたしたちが日本の地方と香港の架け橋になれるのが、とてもうれしい」と顔をほころばせる。最近は、日本への移住話もふたりの間で出るそう。

「香港でローカルのものを紹介するより、日本にいて香港向けに発信する方が、国際カップルの僕たちの強みを生かせると思うんです」

「そのために、今はできるだけ貯蓄です!」

しっかり者の奥さまが、ビシッと最後をまとめてくれた。

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*Hong Kong LEI vol.43 掲載

WRITER書いた人

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